死霊術師と勇者②
私はこの国の勇者にして次期国王となるべき男の蘇生について王に説明を始める。
勇者を復活させれば世界を群雄割拠する時代へと戻さずに済むかもしれない。
王とはいえ周辺では最も力を持つ領主に過ぎない。
後継者問題がこじれれば王は力をおとす。そうなれば世は再び乱れる。だから後継者の勇者を復活させるのだ。
「王様、私は確かにかつて勇者を蘇生させた事がございます。ですがその時はまだ勇者の魂がそこに存在しておりました。魂が死者の国に向かう前に再定着させる。それがその時に行った事です。しかし今回は勇者の死から時間が経ちすぎている。もう魂は死者の世界に旅立った事でしょう。」
勇者の死体は防腐処理をされ保管されている。
魂を再定着させたのち、蘇生の魔法を使えば数日のうちに健康な身体には戻る。
「そうか・・・、だがそちはできるとも言った。それはどのような方法なのだ。」
王は尋ねる、命をもて遊ぶ術、死者の魂の冥福を祈る。それ以上の事は禁忌とされ、それができる死霊術師は忌み嫌われる。
ましてや勇者は私の師匠の死のきっかけになった人物。私の師匠は死霊術師ではないが悪霊退治を生業としていたが、勇者に断罪されたのち逆恨みした、過去助けた者に殺されたのだ。
優しい師匠だった。師匠としては失格かもしれないが甘い人だった。だから殺されても悪霊にならなかった。
私は答える。
「勇者の魂はもう死者の世界に旅立ちました。ですが世界には生命誕生の力があふれております。蘇生術を行えば命の精霊が新たな魂を授けてくれるでしょう。そうすれば身体は数日で元にもどります。ですがそれは勇者の力と記憶を引き継いだ、別の魂をもったものになります。」
記憶だって能力だって同じ、同じ性格、それらは脳や身体のもの。では魂は何を持っていくのだろうか。
魂が持っていくものを精霊だけがしっている。
悪霊とはきっと激しい後悔と恐れが記憶を持っていく事を拒んだもの。
私は師匠から引き離された後、死霊術師の才能が見つかり魔術師達の通う学園に通う。けれど私は出来損ないだった。魔法使いは弓も剣も効かないのが普通になりつつあるけれど私は死者の冥福を祈る事しか出来ない。そして蘇生術。目が見えず、魔法使いとしても二流にさえ届かない。忌み嫌われる死霊術師の私は学園では虐められていた。私をいじめていたアリサちゃんは私が本当に辛いことはしなかったし、本当はもっと容赦のない子達から守ってくれていた。シオン君は少しでも私がいじめれないようにわざと私よりも下の成績を取っていた。2人は私がそれに気づいていたことをしらない。
アリサちゃんの生まれた国の王の頼み。
アリサちゃんの生まれた国の勇者を蘇えらせる。
勇者は王になる。私は王をじっくりと見つめる。
王であるならば答えは決まっている。
役割に徹する。
別の魂を持つ何かを子にし王に指名する事になろうとも。
きっと死霊術師は歴史から消え去るだろう。
今回の蘇生をきっかけに存在しなかった事にされる。
王は「頼む」と言って頭を下げた。
勇者とはなんなのだろう。
私は死霊術師になり蘇生術を習得しようとも師匠を蘇えらせようなど思いもしない。
私は一通り王に説明した後、勇者を蘇えらせる。
最初の術により勇者は目を開き、血が再度通い始める、1分と経たず血液が全身を巡る。それが30度繰り返す、その間は魔法により命をつなぎ止める。
そうして命は再度定着するのだ。
勇者は蘇える。まだ意識は朦朧としているだろうがもう魔法の力は必要ない。後は自ら命を自らで育む。
一呼吸ついた時、私の胸には背後から剣を突き立てられている。
子が私の師匠を、親が私を殺した。
勇者が完全に覚醒する前に邪魔になった私を始末したのだろう。
私は「アリサちゃん・・・」と呟いた。師匠は優しすぎる。私は違う。アリサちゃんは私をいじめているように見せてずっと私に立ち向かう力が出るように促していた。私は悪霊になる道を選ぶ。
この国に災いを。魔法使いは100の国の兵を殺す。それでも出来損ないの私の力などしれている。
せめて勇者不在による戦乱の時代に戻る以上の死者を。私達師弟の命をささげます。
勇者の身体が光をおびている。私の体は闇に飲み込まれていく。
私は闇の底から天をみあげる。
悪霊には過去も未来もない。
師匠が闇の底に落ちていく。私の見えなくなったはずの目が師匠をとらえた。
師匠の仲間や友人達は喜びまた仲間になろうと手を伸ばす。
私は師匠と引き離された時のようにフッと目をそらした。
アリサが別作品の”あ”の魔女で勇者が王様です。とってつけました。
魔術師協会が辺境の国でもようやく恐怖組織として機能しはじめた頃で魔法使いと王の関係がかわり始めた時期です。




