死霊術師と勇者①
この王国の王子にして勇者であった青年は魔王と相打ちになり死んだ。
王子が無事生きて帰っていたなら王子の次期国王の座は決定的なものとなっていたであろう。
民からの人気は勇者となる前から高く、王としての実務能力も既に片鱗を見せていた。
王子には王子の役目がある。勇者と王子の役目矛盾する。
魔王との戦いは軍の戦いではない。むしろ開拓者、探検家、冒険家達にこそふさわしかった。
それでも王とはかつてそのようなにして人々を安住の地を見つけて来た者たちの子孫なのだ。
人によってはそれを運命の、いや神の導きだというだろう。
しかし、神の導きとは人々を導く事への比喩ではない。比喩ではなく、それこそが神の導きと信じ結果まで残した者が勇者である。
天才とは天から才能を賜ったものではない。それは文字の意味に過ぎない。それは殻を破りった秀才の事である。
その結果が魔王討伐であり、それは勇者の名にふさわしいものではあったが、生きて帰る事はかなわなかった。
そして次期国王の座を争う権力闘争が始まる。
「この国を最も発展させられる子を次期国王とする」王はそう言った。年齢を考えれば他の子らも優秀であったかもしれないが勇者との差はいかんともし難く、その事が王の判断を誤らせた。
失態を犯し次期王の座が絶望的となった子らが反乱を起こしたのだ。
王とはいってもつまるところ最大の領主というだけであり他の貴族や領主は完全に従えているわけではない。強くかつ敵対しないことに利があるからまとまっているのだ。
圧倒的な力でねじ伏せねば子らに独立を許すことになり、他の領主も王を見限る者が現れ、群雄割拠する時代が再び訪れるだろう。
王は1人の死霊術師を呼び寄せた。神秘的な美しさを放つ黒のローブをまといあらわれる。その手には杖が握られていた。
「私をお呼びになったのはどのような要件でしょう」
私は穢れた存在とみなされる事も多い死霊術師。
私の光を失った瞳はこの世ならざる者の世界を覗かせる。かつて勇者に救われ、勇者を1度救った存在。
王は応える。
「お前はかつて秘術により勇者を生き返らせたと聞く。再び、その力を示してくださらぬか?」秘術を使うものは神の使い、王といえども無碍に扱う事は出来ない。歴史ある国ではそのように考えられる。
この願いを聞く事はできる。
王は民の事を考えた。昔のように食料や住処を奪い合わねば共倒れた時代ではない、技術の進歩により、争いは少ないほうが進歩する時代になったのだ。
私は勇者により師から引き離された。
一生をかけて返さねばならない恩のある師匠。
私を救った事で家族と恋人と故郷を喪い、自らも勇者の道を絶たれた。
私はどれのかわりにもなれず、どれを喪った寂しさも癒すことはできないまま、また、阿漕な商売で人を騙す詐欺師のレッテルを晴らしもしないまま騙された被害者として引き離された。
「それはできるけれど出来ない事です。王には説明を聞いたのちどうするのかを再度選んでいただきます。」
私はそうして説明をはじめた。




