勇者の血
勇者により魔王が討伐され150年
世界に再び強力な魔王が現れる。
私は勇者の子孫を夫としていたがそれは珍しい事ではない。
勇者は魔王を討伐した後、歳の近い王国の姫と結婚し公爵となったが80年前にはその公爵家は没落後崩壊した。勇者は特に貴族ではなく、姫と勇者の威光のみでかろうじて存続していたが2人の死後限界を迎えた。
勇者の血は各地で欲されたが基本的に治世には向かない血筋であり、期待された武の面も平凡であった。
「もしも今後、新たな魔王が現れた時の為、勇者の血筋を我が国に取り込みたい。姫とも仲も良いと聞く。我が国の繁栄の為2人の結婚を認めたい」
王はそう言った。勇者の功績はそれだけ大きかった。
勇者は自分にそのような才能はなく、ただ人々の平和を守りたく剣を取ったのだと謙遜する。
そしてそれが謙遜ではなかった。
貴族はやはり人類の歴史のどこかで優秀な活躍をした家系であり、そんな貴族達の中で研鑽されている。
平民からすると文武両道であり才色兼備であり、呉越同舟であり、知勇兼備である。
勇者の血を取り入れた貴族家は多少勢力を落とすことが多く、平民となったものも多い。
自分の家はともかく、他人となればもう勇者の血筋かどうか等わからない。
私の夫も魔王が出ても「国は何をしているんだ」というばかりだ。
私はそれが寂しくもあり嬉しくもある。うちは貴族ではないがそこそこ成功した商店であり、生活には困ってはいない。
戦わないでいてくれた方が心配しなくて済む。
けれど最近気になることがあるのだ。
あれだけ怠け者だった息子が毎日木刀を振っている。
手が血だらけになっており、身体には稽古でついた痣が出来ている。
聞けば急に剣道場に入門する若者が増えたという。
勇者はこんな事も言っていた。いざというときに行動する。自分の力なんてそれしかなかった。と
どうやら魔王と人類の戦いは人類が勝つようである。




