狂戦士と勇者
私は勇者の弱点を知っている。
勇者はその優しさと強すぎる力として強い心が弱点なのだ。
彼の素性は彼の家族や故郷を魔王から隠すために一般には秘匿されている。
勇者もその心の強さから誰にも言わない。
勇者は兵士ではない。知らない人の為に戦っているのではない。
だから彼の生まれ育った故郷を大切にする。
魔王に故郷を襲わせないための配慮、人質にしろ交渉にしろ簡単には見捨てられないのが勇者なのだ。
王国からほとんど見向きもされない小さな村に3人の戦士がいた。剣と魔法で戦う勇者と魔法で戦う魔法使い、そして剣で戦う剣士。
勇者は旅立ったが残りの2人は力が足りず故郷を守る戦士として村に残った。
そして今2人は魔王の軍ではなく人の軍と戦っている。
故郷を守る勇者を、国、そして世界を守る勇者とするため、また故郷という弱点をあらかじめ消そうという魂胆なのだろう。
山奥の村であり、秘密裏の作戦であるため、数十人程度の事。2人の戦士が中心となり1度は皆で退けた。30人たらずの村、奇跡的に1人の犠牲者ですんだ。それが剣士だった。
魔法使いの兄であり勇者の親友。その剣士が死に、
妹の魔法使いのみが生き残った。
魔法使いは多少の人数差を覆す魔法を放てるが魔法使いは1人では戦えない。
次攻められれば先頭にたち戦えるものはなく村は滅びる。
勇者の故郷である村を滅ぼしてはならない。
勇者の、いや勇者は、そして私達は国により捨てられた一族の村の末裔。こんな小さな村に3人もの戦士が生まれたのは魔王と戦う宿命を課せられたためだ。
はるか昔、里と山が別れた時、里は生きやすいが、皆が里に生きれば、人は魔と戦う術を忘れてしまう。
だから生きるに苦しい山に残された者の末裔。
当時の人の指導者は山に残る者を守り神ともてはやし山に押しとどめ、里に降りた者をたたり神として追い返した。
自然に挑み、精霊に挑み、獣に挑み、木に挑む。魔と戦う運命を課せられ続けた一族。
兵は人と戦う者、兵では魔王を討てない。兵は我々を里に越させない為にいる。
兵を我々を討つために使った王を我が一族は許さない。勇者にはもう魔王と戦う理由はなくなった。
勇者は里に帰る事は出来ない。
里と山はもはや別世界に等しい。
我々が滅べば勇者は帰る場所を失い、かわりに帰る場所さえ失うのだ。
王は魔王の配下にそそのかされただけ。
王は我々の使命、そして王の使命を忘れた。
我々が滅べば勇者は魔王以上の力を持って国を滅ぼすのだ。そしてそれが勇者の弱点の本当の意味である。
けれど時代はながれ、我々は神等と呼ばれる事はなくなり、里にも我が一族は入り込んでいる。
我々は滅ぶわけにはいかない。
また勇者が国を滅ぼすこともさせられない。
魔法使いには最後の手段がある。
不死の肉体と強大な力を得るが永遠に理性を失う狂戦士の法。
私は山に攻め込む者を喰らう不死のケダモノとなる。
勇者以外に殺される事はない。
私は私達にとっては魔王以上に憎き敵を守るため永遠の秘密とともに勇者に殺される。
その結末は里の者たちの我々と戦う為の技だったのかもしれない。




