黒いてるてる坊主
日照りというのは恐ろしい。
井戸を掘るには専門技術と大金がいる。どちらもこの村ではすぐには用意出来ない。
雨を呼ばねばならないが黒いてるてる坊主は法律により禁止された。
しかし黒いてるてる坊主を作らねば我々は乾きか後におとずれる飢えで死んでしまう。
「隣の村の奴らきっと黒いてるてる坊主を作りやがったんだ。そうしてうちの村の雨も奪っちまった」
仲間の1人が誰もが口に出さないように秘めた考えを、くちにした。
黒いてるてる坊主とは生贄の暗喩である。
・7つの子を首をおり棒に括り付け天に掲げる。あるいは首が折れるように足を引っ張る
・7つの子の足をおり、片目をつぶし逆さ吊りにし泉に沈める
本当に子供を使う事等稀であり、私がちょうど7つの時以来行われてはいない。その時も本当に儀式で生贄にされたのかは7つの子には真実は教えられない。
例年なら人形や鐘、魚、ウリ、等でも代用出来るのだが人間の子は効果は段違いである。
うちの村では例年は沈みやすく細工したウリを頭にした人形の足をおり泉に沈める。毎年行われる祭りという面が強い。
しかし人々は例え人形であってもわずかな罪悪感を抱く。元は人間の子であったと知っているからだ。
毎年行われる事であってもこれならば神には届かない、届いても神は無力な人間の努力を慈しんでくださる。
ただ、今は届かなければ雨は降らない。
本当に子を使えば更に罪悪感や怒りの感情、そして親の怒り苦しみ高まる。そうでもなければ神は見向きもしない。
小さな村が全滅する事等些事に過ぎないのだ。
そして残虐を働いた人々に神はここぞとばかりに、大雨という罰を与える。
泉の底で待つものが本当に神なのかは誰も知りはしないというのに祭りは続く。
このまま雨が降らなければ村が滅びる。
今が決断の時なのだ。
7つの子は村に1人、村一番の器量の娘が12の時に産んだ子だ。みなしごではない。
7つの子は何も知らずに集会所に呼ばれる。
今の村で出せる精一杯のご馳走を食べさせる。
愛らしい子だ、この子が大人になればきっと街から長者が嫁に欲しいとやってきただろう。その姿が見られない事は非常に残念だ。
子が怖がらないようにご馳走には眠り薬がもられている。
「そんな、迷信の為に小さい子を犠牲にしようなんて恥ずかしくないのか。」
黄金色に輝く剣はそのものの聖なる気により自ら輝くようになった。蒼き鎧兜はそのものの慈愛の心により癒しの力を宿した。
勇者が我々を止めにやってきた。子の親が助けを求めたのだろう。
50年来の友である3人の長老皆で決めた計画。
私は「お前のような若造に何がわかる。雨が降らねば村は滅ぶのだ」とさけぶ。
私は杖を振り上げる。勇者にはかなうわけもない。私は子の方に向かう。これは2人の友には黙っていた。
私は勇者の剣により胸を貫かれた。
「生贄で雨が降るなんて迷信だ・・・。」勇者は何か言いたげに先程の言葉を繰り返す。誰か家族が同じように生贄にされたのかもしれない。
私はこれから地獄に向かう。私が地獄に行かねば誰が地獄に向かうのだ。
勇者の剣は天候を操る。勇者の怒りや悲しみは雨をもたらす。勇者が剣を天に掲げれば雷鳴が鳴り響く。私は7つの子を犠牲にする事は出来なかった。
だから子の母に計画を伝えた。殺すと騙したのか、勇者を呼び寄せる方便だったことまで伝えたのかはほんの数時間前の事なのに記憶が混濁し思い出せない。
雷鳴が聞こえる。途切れかけた意識でも雷鳴がかすかに聞こえる。雨はやってきた。
友の2人は勇者に殴りかかり返り討ちにあった。私を1人で地獄に向かわせない為だ。
2人にそれをさせない為に私は1人子に殴りかかる振りをしたのだが、私は涙が出るほどの幸福を感じた。




