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プロローグ

最初の殺人は、親だった。

なぜ殺したかは、覚えていない。


考えもつかない。

当時と今では考え方が違いすぎるから。


ただ分かっていることがある。


「あは……!」


血を見た。

流れ出る血を。


死へと直行するその様を感じた。

死そのものを感じた。


「あははははははは!」


それはどこまでも倒錯的で。

芸術的で。


そして、どこまでも可笑しかった。


もっと、その様を見たかった。

死に近づく人を見たかった。


だから、人を殺した。

大人、子供、赤子……種類問わず。


そうして殺していくうちに、気付いたのだ。


自分に死の輝きが見えることに。

黒く、光り輝く星。


それが自分にみえた死の輝き。

それを自覚して、自分はそれに恋い焦がれていたことを知った。


なぜ人を殺したいのかをしった。

その輝きが見たかったのだ。


死に近づかないと、その輝きは見えなかった。

だから、人を殺したのだ。


もっと、人を殺した。

そして気付く。


人によって、死の輝きと言うものは千差万別。

輝きの強さも、星の大きさも様々であることに。


「もっと」


人を殺した。

より死に触れている人間ほど、強く大きく輝くことを知った。


「もっと」


死に触れている人間を探した。

騎士のようなただ強いだけの人間ではなく、死と密接にある人間。


「もっと……!」


そして見つけた。

冒険者。


迷宮に入り、その内部にいる魔物を殺していく存在。

自分自身が死に陥り、魔物を殺す。


これ以上ないほどに、死に近づいていると言っていいだろう。

これだ、そう思った。


「もっと!」


冒険者を殺した。

迷宮の内部では、人死にが当たり前。


捕まる心配なんてなかった。

殺人の証拠も残らず、迷宮内で死んでも他殺とは考えられない。

これまで通りに騎士を避けることなどしなくともよかった。


「もっともっともっともっと!」


巷では自分は大量殺人犯として、指名手配されている。

顔も割れている。


手配書の張り紙を見て、思う。

冒険者に、迷宮に出会っていればこんなことにはならなかったのに、と。


しかし過ぎたことは仕方ない。

バレなければいいのだ。


顔を隠してさえいれば、基本的に捕まることはない。

仮に捕まってもいい。


確実に死刑となるだろう。

しかし、思うのだ。


『自分の輝きは、どんなものだろうか』


死に近づいたものほど、強く大きく輝く。

それならば、自分はどうなのだろうか。


自分よりも大量の人を殺した人間はさほどいないだろう。

死に近づいた人間ともいえる。


最期に、その輝きを見れるのならば悔いはないだろう。


だが、まだその時ではない。

人を殺し足りない。


もっと、輝きが欲しい。


また、冒険者を殺す。

いつも通り迷宮に入って、冒険者を待っていた時だった。


「——……!」


それは、運命だった。

一目見てわかった。


死。

死がそこにあったのだ。


平常時でもなお目を焦がすほど強く大きな輝きがあった。

いうなれば、アレは、そう。


「死神……!」


死そのもの。

死が人の形をしている。

故に殺さなくとも、その輝きが見える。


運命でなければ、何というのだろうか。

自分の存在とは、アレに出会うためにあったのだ。


「ああ……!」


思い出すだけで、涙が出る。

至高の死の輝き。


光に誘われる蛾のように、気付けばずっと眺めていた。

好きな殺しも止めて、どんな時だって、その人を眺めていた。


どんな殺しをするのだろうか。

どんなに人を殺したのだろうか。


しかし、どれだけ見てもその人が殺しをする場面に出会うことはなかった。

だが日に日にます死の輝き。


確実に殺しをしている。


誰にも見られたくないのだろうか。


「……愛おしい」


恋をしていた。

その人のためならば、殺しを止められるくらいに。


情熱的な。


「……ダーリン」


その言葉が、気付けば漏れ出す。

焦りを覚えながら、周囲を見渡す。


誰にも聞こえていないことに安堵する。

しかし。


「ダーリン……!」


言葉を反芻する。

一回言う度に、顔が赤くなっていくのを感じる。


「好き」


その声は、その人に伝わることなく空気に溶けていく。


「好き」


その声は、自分にだけ染み入る。


「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」


貴方しか見えないの。

貴方だけしか見たくないの。


だから。


「——私を愛して」


今は、その人には伝わらない。

今はそんな勇気無い。


だけれど、私たちはすぐに会うことになるでしょう。

少しだけ、待っていて?


私の運命の人(ダーリン)


「殺したいほどに、愛してるの」


貴方を殺したのなら、どれだけの輝きが見えるのだろう。

考えただけで、達してしまいそう。


「愛してるほどに、殺したいの」


私は、恋に堕ちたのだ。


「殺されたいほどに、愛してほしいの」


倒錯的で、破滅的な、恋に。



———————

カクヨムにて、先行投稿(4月23日現在38話)をしております。先が気になりましたらぜひ


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― 新着の感想 ―
歪んだ殺人衝動の根源が死の輝きへの渇望として描かれる冒頭から心掴まれました。大量殺戮者の異常な心理と死神のような存在への狂おしい恋慕が交錯する物語……果たしてこの先の展開はどうなるのでしょうか
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