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End magic and war.  作者: 椎茸トマト
A組始動
21/37

ウイルス

目的地付近に到着したので、私達は車を降りて長田さんにお礼をした。

寮の運営で多忙なところ私達を運んで頂き感謝しかない。

目的地に歩を進める。


「赤阪くん、少しフラフラしているけど大丈夫ですか?」

「え?あ、うん。少し酔っちゃったみたいで…すぐに回復すると思うよ」


赤阪くんの顔が赤いけど、車に酔うと赤くなるのかな?


「くくく!赤阪くんやるやん〜」

「な、ななな何のことかな〜僕は静かにしてただけだよ!」

「そうやな。めっちゃ静かやったわ。くくく、先行くわ〜」

「池田さん待ってよ〜」


2人は先に行っちゃった。飛鳥ちゃんが楽しそう。車酔いの赤阪くんのことを何か知っているのかな。

私が寝ている間に何が起こっていたのかな?


飛鳥ちゃんはニヤニヤして赤阪くんを見つめていた。

もしかして、2人は何やら怪しい関係になったとか!?

いやいや席の場所を考えたらかなり不都合だし、長田さんが運転している時にそんなことはできないような――


「渚さん」

「はうっ!」

「焦った顔をしていましたが、体調はどうですか?」

「だだだ、大丈夫だよ!?あの2人を見てたら私も楽しくなっちゃって」

「あぁ~なるほど。うふふ」


日和ちゃんは驚いて慌てる私を見て冷静に分析し微笑んだ。


「渚さん可愛いです〜」

「え、ええぇぇぇえええ!!」


意味はわからないけど、日和ちゃんの世界で私は可愛いくてたまらないみたい。日和ちゃんの羨ましい体が私を包んだ。


「おーい!何イチャイチャしてんねん?赤阪くん。ウチラも真似する?」

「え、ええぇぇぇえええ!!」

「渚みたいなリアクションすんなや。後部座席でヒヨリンと渚が寝てて、2人とも赤阪くんにもたれかかったもんな。可愛い寝顔と吐息でめちゃくちゃ動揺してたやん?」

「もぅ〜!僕は必死だったんだから…そ、そろそろ行きますよ!」

「はいはい〜。お二人さん、来ないとおいてくで〜!」


少し離れたところで飛鳥ちゃんが手を振って呼んでいる。


「渚さん。行きましょう」

「うん」






姫松さんのお家は林道の先にある。長田さんの車に降りた時はギリギリのぞみエリアだけど、今歩いている時は魔素エリアに突入していた。理事長室で聞いた通りグリーンだった。魔獣がいつ襲ってくるか分からないので、緩い雰囲気はもう終わっている。

かつてこのあたりは桜の名所があったみたいだけど、今の木々は枯れ果てていて寂しい。

お家まで歩いて10分くらいの距離だけど、魔獣と遭遇して戦いながら進むしかないかな。

と、思っていたけど、1度も魔獣に遭遇することはなかった。


姫松さんのお家に到着した。

地図を確認すると間違いなくここだ。

念の為写真も見てみると、

水平な(ろく)屋根と全身が真っ白なシンプルなキューブ型。2階と3階にバルコニーがあり日当たりも良い。

間違いなくここだね。


「立派な家やな。ヒヨリン、ここらへんはいつ魔素エリアになったんや?」

「少し待ってくださいね」


日和ちゃんは空中に浮いている魔導書を、私達に見やすい高さまで降りてきた。魔導書はページを開く。スマホより大きくクリアで見やすい。日和ちゃんの魔導書が欲しくなる。


「この辺りが魔素エリア化したのは約半年前ですね。地図を確認したところ、人口はそこまで多くないですね。何故かは分かりませんが半年前まで魔素エリア化しなかったのは奇跡です」

「うん、そうだね。この辺りは森ノ宮より遠く離れているし、何か理由があったからなのかな」

「さあ、理由は分かりませんが、それは後で考えることにしましょう。赤いアルバムを探しましょう」


日和ちゃんの言う通り、この辺りは既に魔素エリア化してもおかしくない地域だけど、今は気にしている時間はない。和歌子さんは余命が僅かなので早めに終わらせないと。


玄関扉を開けると、右側に寝室と奥に行くと2階へと続く階段がある。


「埃がひどいので気をつけてください」

「ケホケホッ!もろ吸うてもうた…ゴホゴホ」

「飛鳥ちゃん、大丈夫…」

「ケホケホっ!渚、背中を擦ってほしいわ…」

「う、うん」


飛鳥ちゃんは激しく咳き込んだ。背中を擦ってるけど、しばらく時間がかかりそう。埃がひどいため1度外に出た。飛鳥ちゃんが落ち着いたところで、日和ちゃんはウエストポーチの中から不織布マスクを取り出した。


「皆さんもマスクをしましょう。()()()()()()()()()埃には勝てません」


ここはマスクが正解だね。私も日和ちゃんのご好意を受け取った。


「落ち着いたわ。ヒヨリンおおきに」

「いえいえ」

「都島さんありがとう。明日以降、空気が悪い所に行くこともあるだろうし、マスクは常備した方がいいかもね」


今日のことをアリーナで訓練をしている3人に共有することになった。

装備を完璧にして再度扉を開けた。玄関から見たお家の中は静かだ。


「魔獣の気配はあれへんけど、赤阪くん頼むわ」

「了解だよ」


赤阪くんは補助魔法“ディテクター”を唱えた。

この魔法は近くに魔獣がいることが可視化される。先ほど林道を歩いていて、視界が悪くなった時に使ってもらっていた。魔獣が木や岩などに隠れていても魔獣は確認できる便利な魔法。赤阪くんしか習得してないから頼りになる。

半径は最大100メートルまで可能で、任意で範囲を変えれる。


お家の中は半透明になっていて、上下左右を見回す。魔獣の姿はなく、この家の中は安全が確保された。 


「便利な魔法ですね」

「補助魔法を習得したら覚えれるよ。けれど、維持すると魔力がすぐに減るから長時間は厳しいかな」

「ウチも補助魔法覚えたほうがええよな。攻撃に振りまくったもん」

「飛鳥ちゃんは回復魔法を上昇させてほしいかな」

「えぇ~回復系は苦手やねん…ヒヨリンはバランスええよな。どうやって覚えてんねん?」

「私は器用貧乏ですよ。私は飛鳥さんや松原くんみたいに一芸に秀でた才能はないんです」

「隣の芝生は青いということだね。僕も都島さんみたいに幅広く活躍したいし、回復魔法を上達したいよ」

「また教えるよ」

「本当に!?時間があったらぜひ!」

「ふふ。その時は宜しくね赤阪くん」


昨日、赤阪くんと食堂で回復魔法を知っている限り教えたことがあったので距離が縮まったかな。赤阪くんの笑顔は可愛い。何か癒やされる!身長が近いので私と目線がよく合う。これはまさに――


「渚」

「はうぅぅ!」

「そんな驚くことあらへんやん。昨日の疲れがあるんちゃうか?上の空やで」

「そ、そうだよね…気をつけるね」


だ、駄目だ。変なことを想像しちゃ駄目だよね。ユウちゃんに怒られちゃう。


「さ、上に行くで。3階の東側の部屋やったな?」

「そうですね。赤阪くんのディテクターで確認したところ、この家は安全みたいです。油断は禁物ですが気楽に行きましょう」


階段を上り2階のリビングまでたどり着いた。しばらく経ってので埃が目立っていたけど、部屋は荒らされていることはなかった。通路や部屋が広く立派なお家だ。出来るなら魔素エリアから解放させてあげたいかな。

そのまま3階まで上がり、3つの部屋の前にたどり着いた。階段を上がって奥の部屋だと聞いていたのでそのまま突き進む。


「あ、開けるで…」


先陣の飛鳥ちゃんは恐る恐る扉を開けた。部屋の中は、勉強机のみあった。この部屋も埃がひどかった。


「あったで。この赤いアルバムかな?」


探す場所が1箇所だったので発見は早かった。飛鳥ちゃんはアルバムに付着した埃をはらいのけ写真を撮った。写真は出発前に作成しておいたグループメッセージに送信した。


『姫松さん。赤いアルバム見つたんで合ってはりますか?中身は見てないから安心してな!』

『そのアルバムで間違いないです!中身は大丈夫でしょうか。中身を確認して欲しいです。』

『了解』


飛鳥ちゃんはアルバムの中身をパラパラと確認した。中身を確認してほしいとはいえ、じっくり見ることは出来ない。私達は横から覗く感じで確認した。特に写真に異常はなかった。和歌子さんと2人のツーショットが多く、幸せを感じさせた。


『写真は無事やったので、これから帰路につきますわ。』

『ありがとうございます。お気をつけてください。』


アルバムを手に入れたので、後は帰路につくだけ。


「昨日と違い、エライ簡単やったな」

「そうですね。油断は禁物ですが早めに届けましょう」


3階は勉強机が置いてあった。将来生まれてくる子どものために買ったのかなと思う。部屋は荒らされてなかったので、のぞみエリアに戻ったらまた住むことが出来る。


部屋を出て1階の玄関まで降りた時に気づいた。


「あらあら。靴を脱いでなかったですね」

「本当だ。何も考えずに土足で上がってたね」

「急に敵が襲ってくる可能性があるからやろうな。カッシーがそう言うてたな」

「靴を脱いじゃったら靴下が汚れちゃうし、あ、私のタイツが汚れちゃった」


少し壁に触れたときに付いちゃった。せっかく皆とお揃いなのに。


「私も足首のところが汚れちゃいました。お揃い初日からついてないです」

「ウチも結構汚れてもうたな。見てみ、太ももあたりがこう、くっきり―」

「い、池田さん!僕もいるんだから遠慮してください!」

「あ、ほんまや。ごめんやで」


飛鳥ちゃんはスカートの裾を上げて、もう少しで下着が見えそうなタイミングで赤阪くんが声をあげた。

赤阪くんがいるのは分かっていたけど、女子3人は“赤阪くんは可愛い”という共通認識だったので、男子ということを忘れて―じゃなくて警戒心が薄れていたから。

赤阪くんも男の子なので、これからは注意をしよう。


玄関扉を開けて外に出た。

その光景は入る前と違っていた。





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