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異世界かくれんぼ  作者: みてぃあ
閻魔の森編
4/15

独創スキル

油断していたわけではなかった。むしろじいちゃんを悲しませたくないから、見つからないようにわざわざこんな遅い時間にこっそり家の外に出たのだ。しかしスキルを解除したその瞬間、俺は自分でも驚くほど警戒心が薄れていた。スキルを使っている間は完全に消えていたから、見つかるかもしれないという考えが抜けていたのだ。もしくは、スキルを使った興奮で我を忘れていたとも言えるかもしれない。


「ディア……今、何をしていたんじゃ!!」


(怒られる……!あんなに強くスキルを使うなと言われていたのに使っているところを見られてしまった……。もしかしたら怒られるだけでは済まないかもしれない────最悪の場合、見捨てられるのではないだろうか。じいちゃんはそれだけ三つの約束に関しては口がうるさかった。もしかしたらやりかねない……謝ったら許してもらえるだろうか。いや、許してもらえなくても謝ろう……じいちゃんを悲しませたくない────)


そして、どう謝ろうかと考えてきた時思いもよらない行動が返ってきた。


「ディア…!!無事でよかった……本当に…本当によかった────わしはまた、失うところだった……。わしの前にいてくれてありがとう……。もうこんなことはしないでおくれ。もう、何も失いたくはないんじゃ────」


そう言いながらじいちゃんは俺の背中に細くてしわしわな腕をまわし、ぎゅっと抱き寄せて泣いている。俺はその時、初めてじいちゃんの涙を見た。そして、じいちゃんがどれだけ俺を大切にしてくれているかを改めて知った。


「ごめんじいちゃん……!本当にごめん……………」


俺はどう謝ろうかなんて忘れていた。俺は、気づいたらただひたすらに「ごめん」とだけ、泣きながら言い続けていた。そうしてひとしきり泣いた後に、じいちゃんは言った。


「ディア……ずっと言っていなかった大切な話がある。まずは家に入ろう。」



じいちゃんはリビングの真ん中にある木の椅子に腰を下ろすと、小さくため息をついた後に俯いていた。その目は、何か思い詰めているように見える。そしてその後にもう一度、今度は大きなため息をついて、ついに話し始めた。じいちゃんが俺に隠していたこと。そしてこの世界のことを────


「まずは……異世界人のことから話そうか。わしはお前が異世界人であることを知っておる。どうやらわしに悟られないようにしておったようじゃが、こちらの世界のものは異世界人をみると直感的にわかるのだよ───その人間が異世界からやってきたのだとな。何故わかるのかはわしにもわからん。それこそ神のみぞ知ることなのじゃろうな。そして異世界人というのは、必ず強力なスキル────『独創(オリジナル)スキル』と呼ばれるものを持っておる。これはこの世界にひとつしかない最強のスキルと言っていい。お主の『時空隠蔽(カクレンボ)独創(オリジナル)スキルじゃよ。これはこの世界の者でもごく稀に持っているもやつはおるが、ほとんどは異世界人がもっとる。」


「じいちゃんはなんで俺のスキルを知ってるの?言ったことないはずなのに……」


独創(オリジナル)スキルというのは世界にとって重要な存在じゃから、所有者がこの世界に現れると世界の全ての生物にその存在を神の声によって伝えられるのだ。お前もスキルを得た時に聞いたのではないか?」


思い返してみると、確かにスキルを得たときに天の声のような不思議な声が聞こえた気がする。なるほど。あれが神の声なのか。


「そもそもスキルというのは魔法と違って、1個体につき1つしか持っていない。言い換えればどんな生物でも必ず一つはスキルを持っているんじゃ。森にいる狼や猪、はたまた空を飛んでいる鳥や木の葉にくっついている虫。全部の生物が持っておる。そしてこのスキルというのは必ず、能力が遊びになぞらえてあるんじゃ。お前の時空隠蔽(カクレンボ)もそうじゃろう。さらにスキルというのはその希少性によって下から順に凡庸(コモン)スキル、非凡庸(アンコモン)スキル、希少(レア)スキル、異常(エクストラ)スキル、独創(オリジナル)スキルに分類される。そして生物の95%は凡庸(コモン)スキル、5%は非凡用(アンコモン)スキルを持っておる。そして例外的に10万分の1の生物が希少レアスキル、 100億分の1の生物が異常(エクストラ)スキル、1000億分の1の生物が独創(オリジナル)スキルを持っておるのじゃよ。ちなみにこの世界には生物が10兆匹いると言われておるから、独創(オリジナル)スキルを持っている生物は100匹ほどおる。」


「じゃあ俺は1000億分の1の最強の能力を持ってるってことでしょ?なんでそんなにすごいスキルを使っちゃいけないの?」


「それはな…独創(オリジナル)スキルは強すぎるんじゃ……。もはや災害と言っていい。一歩使い方を間違えると仲間すら巻き込む最悪のスキルなんじゃよ……。」


「最悪のスキル?どういうこと?」


「少し昔の話をしようか。わしには昔、娘がおってな、それはそれは可愛い子じゃった。いつも笑顔が絶えん子で、今でもあの無邪気な笑顔は簡単に思い出せる……。そんな娘にある日、スキルが発現したんじゃ。それがあろうことか独創(オリジナル)スキルじゃった。わしはその時、大喜びしたものよ。自分の娘が選ばれし勇者にでもなったような気がしとった。じゃが、それは束の間の喜びじゃった。娘がそのスキルを使った途端、地面に大穴が空いて娘は地中深くまで落ちたのじゃ……。そして娘は硬い岩盤に勢いよく叩きつけられて死んでしまった………。今でもあの時の絶望は忘れられん。あれこそが独創(オリジナル)スキルの暴走だったのだよ────」


「そんなことが………。だから俺にあれほど使うなって言ってたのか………」


「そういうことじゃ。じゃからこれからはスキルは使わずに魔法だけで生きていってほしい………いいな?」


俺はその言葉に大きく頷いた。俺だって死にたくはないし、何よりこれ以上じいちゃんに辛い思いをさせたくなかった。俺はじいちゃんの孫みたいなものだ。そんな俺が死んでしまったら、じいちゃんはもう立ち直れないかもしれない。だから、俺はその時に固く誓った。二度とスキルは使わないようにしよう────

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