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大陸鉄道の死神〜【二重人格】で【一時間しか動けない】異世界諜報員は復讐のために暗躍する〜  作者: 佐渡の鹿
第一章 【ウォーレン連合王国動乱 ー大陸暗躍編ー】
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18.【蘇る悪夢】

「クシュン」


 春ニは日が登り始めたばかりの仄暗い街で盛大にくしゃみをする。その手には茶色のトランクが握られていた。

会社の目の前へ差し掛かると玄関前に一つの影があった。


「にゃぁ~、お早い到着だにゃぁ~」

「なんで貴方もいるんですか?コルカさん。」


「いや、親友二人が揃って旅行に行くと聞いたからにゃ。もしかしたら・・・と思って。

お祝いの品を持ってきたのにゃ。」

「僕たちは仕事で行くんですよ!!」


「いやいや、用意に越した事はないのにゃ。これで麗奈っちの心を鷲掴みにゃ。」


 もらったのはいつもトランクに入れているマタタビの瓶だった。


「なんで?」

「にゃ~たちの中では惚れ薬の一つにゃ。・・・人に効くのかわからないけど・・・。」


 その時後ろから聞き慣れた声が聞こえる。


「あっ。春二くんとコルカさん!!」


 咄嗟に小瓶をポケットに隠す。


「ミャ~も撮影旅に連れて行ってとお願いしてたにやぁ!!でも無理みたいだにゃ~。

にゃあ、三船。」

「そう・・そうなんですよ~。」


 コルカが肩に手を置いてそっと耳元で囁く。


「おミャ~のことを応援してるにゃ。頑張れ少年。」


 コルカがトランクを背中に回して笑いながら去っていく。一体何のつもりなんだろう。


「やぁやぁ!!君たち~。今列車の準備ができるから。」


 遠くから明朗快活な声が聞こえる、町田さんだ。

麗奈さんも明るく対応する。


「いえいえ、仕事ですから~。町田さんもご苦労様です。」

「本当あなたたちと会社には迷惑をかけます~。撮影のために()()を使わせてもらえるなんて~。」


「あの・・・列車って『つばめ』ですか?あれを貸し出すとは思えないんですけど。」

「あっ!!もしかして列車を持っているとかですか?」


「いや~、これがね~。

そちらの上層部に『つばめ』を借りたいと猛烈に頼み込んだんだけど・・・却下されてね。

撮影中止にしよう思った時に突然、『()使()()()()()()()()』って連絡が来てね~!!」


 嫌な予感がした。


「倉庫に眠っていた『むこう』を使わせてもらうことにしたんだ。

あっ!!僕はこれから打ち合わせだから~。」


 町田さんが走り去ると。麗奈さんの方を見た。

麗奈さんの顔は真っ青になっている。


「麗奈さん・・・『()()()』ってたしか解体されたはずじゃ・・・」

「・・・行こう。」

 

 麗奈さんは明らかに動揺している。それもそうだろう。

僕たちはこの列車がすでに解体されたと聞かされていた。

解体されたと聞いたから悪夢を忘れていたというのに。

 

 ()()()、『()()()()()()()()()()()()()()()()()

僕は体の各所に消えない傷を負った。

僕は事件を詳細には覚えていないが、当時添乗員をしていた僕たち二人の心に深い傷が刻まれた事件だ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 僕たちは駅のホームへと向かっていく。

麗奈さんが行くと言ったのだから僕もついて行く。


 目の前で黒い煙を吐いている列車『むこう』は僕と麗奈さんが初めて出会った場所だ。

けれどもその思い出よりも赤く黒い記憶が塗りつぶしていく。


甲高い汽笛を鳴らして『むこう』は走り出した。



 日が登り始めた頃、

薄い霧に包まれた森の中で手綱を木に繋がれた二頭の馬とその横の茂みから双眼鏡を覗き込む二人の男がいた。

男たちの目線の先にはボンヤリと見える建物が数軒、その周囲には男が数名巡回している。


「いつもと同じだ。動く気配はないな。」


もう一人の男が馬の方に歩いて行き、馬の脇につけられていた鳥籠から鳩を取り出す。


「まったく、大将自ら偵察に来なくてもいいんだぜ。こういうのは俺らにでもよ~。」


「いいか、父様のような本当に優れた指揮官になるにはこうやって現場に出て実際に目で見て判断するんだよ。

それに人手もないしな。」


「にしてもう二年くらいこの調子、本当にここが当たりなんですかい。」


 鳩を取り出した男が鳩を撫でて遊んでいると、双眼鏡を覗いていた男がその手を握り直して目を見張る。


「おい!!見ろ。」


 片手で双眼鏡を覗く。


「おいおい、ありゃたくさんいるじゃないですか。」


 門の前に武装した男達が馬に跨り集まっている。


「ありゃ猟銃じゃないな、大きい。

弓に剣までそろえてる、まるで一昔前の山賊だな。食糧の量から・・・どう見積もる。」


「二、三日とかですか。歩いてるやつがいない。」


 集団は何処かへと向かっていく、二人は慌てて馬の手綱をとる。


「地図出せ!!目的地を絞れ!!」

「やってますよ!!北東、二、三日。ここら辺か。赤河平原、街なら『黄平』。」


男は地図の端をちぎり何かを書き込んだと思えば赤い布切れ端と一緒に鳩の足元の筒にいれる。

鳩が止まっている腕を宙へふって鳩を飛び立たせる。


「とにかく奴らの狙いを探るぞ。何かするようなら介入する。」

「了解!!大将~!!」


 男は馬に乗ると口元に赤い布を巻く。馬の腹を足で叩いて二人の男は森を駆け出す。

あの集団の向かった方角へと馬を走らせる。


◆列車詳細◆

 

『むこう』は『つばめ』と車両編成自体は同じく七両編成、先頭車・手荷物車両・個室の客室車両・食堂車両・二等車両が2車両・展望車両。 大陸最大の機関車とされていたが『つばめ』に抜かれた。


 魔素変換器と蒸気機関を一体化させた機関を搭載している、そのため余剰のエネルギーを使って暖房や、ボイラーとしても使うことができる。

 客室と添乗員室は全室にシャワーとトイレがついている。

尚添乗員室は手荷物車両のと先頭車両の間にあり、個室が六部屋ある。

※機関室→石炭庫→個室六部屋→手荷物車両。


 事件によって損傷が激しく解体が予定されていたが修理され、倉庫の奥へ格納されていた。

修理資金は『株式会社 三船』が全額寄付している。

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