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九十六話 鳥よりもカエルの方が良いの?

 計り知れないほどの勇者の命と時間を代償に人類はついに探し当てた。


 神の御座……神域に至る道を……。


 その道は細く長い。

故に戦力を結集させて戦いを挑むことはできない。

人類は慎重に慎重を重ねて神に挑む勇者を選定する。



 決戦の時は目前に迫っていた。



        ラライエ創成記より一部抜粋




 ピリカの先導でスライムの群生地を進むこと数十分……。


「抜けたよ! もう平気。スライムの足じゃ追いつけないから」


「そもそもスライムに足無いけどな……」


 アルドが、ピリカにベタな突っ込みを入れる。


「ピリカすごぉい! えらぁい! かわいいぃ!」


 リコがピリカを褒めちぎって駆け寄る。


「シャシャァ!」


……もういいって。

リコも大概めげない小娘だな。


「リコって、あんな感じのやつなのか?」


「まぁ、外でアレは俺も初めて見るけどな……。自分よりも年下のハルトとピリカがいるからだろうな。孤児院のチビ達を構うときは大体あんな感じのやつだ」


 ピリカはもちろん、俺も本当はリコよりずっと年上だけどな。

敢えて突っ込むまい。


 目前の障害を切り抜けて、俺達はモンテスに向けて移動を再開する。



 9月27日


 スライムの群生地を抜けてさらに5日進んだ。

俺の状態も、ようやく元通りと言っても差し支えない所まで回復した。

散発的に魔物に遭遇はするものの、俺がこの五年で頻繁に見かけるようなものばかりなのでアルドとリコに丸投げで全く問題なかった。


 特にピリカの結界のおかげで、昼間に行動できるメリットはとても大きいようで、二人の話では緑の泥からの脱出はもうすぐらしい。


 脳内PCのMAPを確認した感じだと、俺の家の場所はこのジャングルでも結構、外寄りでまだ浅い場所になりそうだ。

この密林のデカさはアマゾンの倍、下手したら3倍の面積を想定したほうが良い気がしてきた。


 こんな異世界でも大自然の前には人類の力なんて無力なのは同じぽい。

絶対にこっちの自然環境の方が過酷な気はするけどな。


 ……。


    ……。



 日没になり、結界の中で火を囲んでいる。

リコの採取能力が突き抜けているので、ピリカと二人でジャングルを進んでいた時に比べて食糧事情は格段に改善している。

しかし、今夜の食事は俺にとってはハードルが高いな。

アルドとリコは超うれしそうだけど……。


「……これ、大丈夫なのか? ちょっと外見的に抵抗があるっていうか……」


「何言ってんのさ! モンテスじゃ、それなりの金払って買う食材だよ? 残したら怒るよ?」


「全くだ。孤児院のチビ達なんて年に一回食えればいい方だぞ?」


 そう言って、アルドはその肉を歯でかみちぎってうまそうに食べている。


……今、俺の手に握られているそれは…… 蛙の丸焼きだ。


 当然、ラライエサイズのな!


 リコがこれを三匹、鼻歌歌いながら持って帰ってきたときはマジで引いた。


 地球の蛙ならまだ食用のやつもあるらしいから、意を決して食いもするけど……。

デカいって! このサイズの姿焼きは勘弁してほしい。

鶏一羽分ぐらいある。

ここまであからさまだと、心理的に受け付けない……。


「あのさ、そこまで言うなら覚悟決めて食うけどさ……。 お残し禁止だ? ふざけんな! 見ろよこれ! 俺の胃の容量を逆算しても物理的に無理だろ!」


 俺は手に持っている蛙をへその位置に持ってくる。

蛙の鼻先が俺の胸の上あたりにある。

俺の胃袋はこんな所にまで達してはいない。

目で見てわかるように、これが明らかに俺の胃袋よりでかいことをアピールしておく。

自分達で狩ったワニは食えても、急に現れた蛙はやはり抵抗がある。

わがままなのはわかっているけどな。


「む…… 確かにハルトにはちょっと大きすぎるな。じゃぁ、俺のを切り分けてやろう」


アルドはそう言って、蛙の腕と足を一本ずつ切り落として俺に渡してきた。


「ま、まぁ、このくらいなら食べられそうかな」


「ハルトが持ってるやつは明日の分に回すか」


 そう言って、アルドは討伐証明部位の追躡竜(ついじょうりゅう)のエリマキと一緒に俺から受け取った蛙を括り付けた。


 丸々一匹の姿焼きじゃなくなっただけで、結構ハードルは下がるもので、これなら何とか食べられそうな気がする。

心に躊躇いが生まれないうちに、思い切って蛙の足にかぶりついてみた。


 グルメ漫画で表現されるような、突き抜けた旨さは無いかな。

普通にあっさり風味の食用肉……と言ってしまっていい感じだ。

何というか…… なんの肉か知らされずに出されれば普通に食えるな。


「どう? なかなかおいしいでしょ?」


 リコが、勝ち誇ったような笑顔を浮かべて聞いてくる。

俺も大人だからな。

折角調達してくれた食糧にケチつけるようなマネはしない。


「ああ、悪くはないな」


「でしょう? 鳥ばっかりじゃ飽きるでしょ? また見つけたら、獲ってきてあげる」


「!! ハルト、鳥よりもカエルの方が良いの? いぬっころに頼まなくてもピリカが獲ってくるよ!」


 ピリカさん、いちいちリコと張り合わなくていいから……。

俺はいつもの鳥で全然問題ないからな。


「ピリカは蛙の見分け付くのか? 種類次第では食った瞬間に死ぬような毒持ってるやつがいるぞ?」


 アルドが横からそんなことを言ってくる。


「え? そうなのか?」


「ああ、ごくまれに素人がやらかして死ぬことがある」


「あたしはプロの斥候職だからね。そういう知識ならあるし、何よりあたしの鼻が間違うわけないから安心していいよ」


「蛙の見分けがつくようになるまでは、ピリカは鳥に専念しような」


 むやみに蛙は取らないよう、ピリカにはそう言っておいた。

やはり、口に入れるものは気をつけないとな。

街に着いたら、その辺の知識を身に付けることも視野に入れたいところだ。


 こんな話をしながら、和気あいあいと夕食を取っているけど、実は数日前からピリカにある変化が起きている。

多分、ピリカ本人は気づいていない。



 何が変わったのか……。


 それは、この野営における位置取りを見れば明らかだ。

なんと、リコがピリカの隣に普通に座っている。

出会ったばかりの頃はリコもピリカもお互い塩対応だった。


 追躡竜(ついじょうりゅう)討伐を機にリコが俺だけでなく、ピリカにも急接近してきたわけだが、ピリカは相変わらず近づいただけで【シャシャァ!】をお見舞いしていた。

そんなピリカの態度お構いなしにグイグイ行き続けていたせいか、数日前からリコが隣に来たぐらいでは【シャシャァ!】が出なくなってきた。

(さすがに、わしゃわしゃをやろうとすると【シャシャァ!】が出るけどな……)


 ここに来て【-99】スタートだったピリカのリコに対する好感度が【±0】ぐらいになってきたって感じがする。

これがピリカにとって良いことなのかはわからないけどな。

敢えてそのことを口にする必要性もなさそうだし、しばらくはこのまま様子見といこう。


 ちょっと前に思い出したけど、今日バイオの新作発売日でしたよね……。

デスゲームに手を出したばっかりに、いまだにPS5が未開封のまま眠っています。

(ほかにもたくさん眠っていますが……。)

もうしばらく、PS5の箱を開けることは出来なさそうです。

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