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九十四話 ほら、消えたでしょ?

 さて、結界で安全が確保されたところでやることがある。

俺の体操ジャージはざっくり切り裂かれて、血がしみ込んでカピカピになってしまった。

もう使い物にならない。


 長い間お世話になったジャージだがここに捨てていこう。

代わりの服をリュックから出すふりをして、召喚する。

戦隊ヒーローのプリントが施されたTシャツとベージュ単色のパーカーだ。

Tシャツをインナー代わりにしてパーカーを着込む。


「また、珍しくて上等そうな服が出てきたな?」


「……あのさ、そのリュック…… 狙ったように都合のいいアイテムがホイホイ出てきてる気がするんだけど ……突っ込んじゃダメなやつ?」


「ああ。ダメなやつだ」


「……ハルトのケチ!」


 そう言ってリコはふてくされて見せるが、これ以上追及して来ない所を見るに一応、空気は読んでくれていると見た。


 俺は構わず、そのまま横になって休むことにした。

とにかく、少しでもこの貧血状態から抜け出さないと……。

休めるときはしっかり休む。

こんなジャングルじゃ、これしかやれることがないからな。



 日が昇るとともに、俺達はモンテスに向かって移動を開始する。

俺の予想通りこのデカい川(グリナ大河というらしい)の下流に目的の町、モンテスはあるそうだ。


 左手に川を見ながら森の中をのんびりと進むこと5日。



 9月22日



 初日に比べれば幾分、動けているような気もするがやはりすぐに息が上がる。

この分じゃ、完全回復するまでは一日に進める距離はたかが知れているだろう。


「今更だけどさ、こうやって川岸から少し距離を取るのって、やっぱ川は凶悪な魔物が出たりするからなのか?」


「ああ、それも勿論そうなんだけどな。水辺で生きる魔物と水辺で戦うのは圧倒的に不利だからだ」


 成程、そっちがメインの理由か……。


「それに水中に潜んでる魔物は、あたしも匂いで察知するのが難しいんだよ。どうしても奇襲されやすくなるんだ」


「ピリカはどうだ? 水中の魔物はやっぱり見つけにくいのか?」


「ピリカはいぬっころとは使ってる感覚が違うからね! 水の中の魔物探すのに匂いなんて使わないから! いぬっころよりは先に見つけられると思うよ?」


 ピリカはフフン! って擬音が背景に出ていそうな顔で、そう宣言する。

別にリコに対抗しなくてもいいからな。


「ピリカはすごいな! 本職のあたしよりうまく水の魔物探せるのか! ちょっとあたしにもコツを教えてよ」


 リコはにこやかに、さわれもしないピリカをわしゃわしゃしようと接近する。

ピリカは俺に索敵能力がリコより優れていて有能だとアピールしつつ、リコを煽っているつもりだろうけど、リコは全く意に介していない。


 あ~、なんかこのリコのピリカに対する態度、わかってきた気がする。

もうこれはアレだ。

幼い妹の面倒を見たいお姉ちゃんモード的なやつだな。


「こっち来んな! シャシャァ!」


 ピリカさんや……。

もはや、リコの目にはその【シャシャァ!】は妹分のかわいい仕草にしか写っていないと思うぞ。

それは俺も同じだが……。


 突然、リコが鼻をひくつかせて川面から突き出ている大きな岩の方に視線を向ける。


「!! アルド! 多分大丈夫と思うけど気を付けて! あの岩の裏に【カルキノス】が2匹いる。川から出てここまでは来ないと思うけど……」


「わかった。気にしておく」


 カルキノス? 何だ、初耳だな? どんな魔物だ?

俺はオペラグラス取り出して、岩の方に向ける。

ちょっと岩の裏は見にくいな。

しばらく岩の方を見ていると、岩の裏で何か動いているのが見えた。

こいつは…… 子供の頃、縁日なんかでよく見かけたな。


 デカさが別次元だけどな!


 サワガニだよ…… 全長2m以上ある…… マジでこっち来ないでくれよ?

絶対あの甲殻は【フルメタルジャケット】通らないだろ!

もし襲われたらアルドとピリカ先生に頼ろう。


「いぬっころの探知だと、その辺が限界だよね。あの魔物はもうすぐ消えるから、絶対にこっちに来ないよ」


 ピリカはドヤ後でそう断言するが、なんか心配になってきた。

なぜなら、あんなデカいカニが消える理由が全く思いつかないからだ。

ピリカが消えるから絶対にこっちに来ないと断言する以上、そうなんだろうが……。


「ピリカさん…… カニが消えることで俺達の身の安全は保障されるのか?」


「ハルトは絶対ピリカが守るから安心していいよ!」


 あ…… やっぱり安全は保障されないのな。


「おい、ピリカが守る安全に俺達が含まれていない気がするぞ! ハルト、大丈夫なのか?」


 そんなことを言っていると二匹のカニに動きがあった。


「ギシャァァ!」


 カニが数秒もがいたと思ったら、たちどころに二匹ともドロドロに溶けて水の中に消えていった。


「ほら、消えたでしょ?」


「…………」


 アルドとリコは引きつった表情で絶句している。


「ハルト ……これはヤバいかもしれん」


 アルドは端的に最優先の事実を俺に告げる。


「俺達は【バンタノマレ】の群生地に踏み込んでいるかもしれない」


 それ、【スライム】だよな?

とりあえず【バンタノマレ】はスライムに脳内変換……っと。

地球でもたまに出現していたからな。

これに襲われる人の動画はトラウマものだった。

あの溶け方はネットの動画で見たことがある。

あんな不定形のドロドロが川の中に潜んでいるとしたら…… 見つけようがないぞ。


 そりゃ、誰も川の近く歩かないよな。

ラライエのスライムは地球のよくあるRPGみたいにレベル1の冒険者に狩られる最弱の存在なんかではない。

捕まったら、秒で死が確定する恐るべき存在だ。

これはカニと戦う方がマシだったんじゃないのか?


 気が付いたらPV数が1万を超えていました!

うれしいのはうれしいのですが、それよりもうれしいのは

ブックマークが増えている事です!


 今月に入ってブックマーク付けてくださった方!ありがとうございます!

とっても嬉しいです!さすがにデスゲーム中と同じペースで投稿は無理ですが

投稿は続けていきますのでこれからもよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初代がマトモでも名乗る以上自己中なモノを勇者とは言わないからな(笑)しかも手を出さなきゃ無干渉ってんのに手を出す馬鹿なら尚更な
2022/02/26 09:03 退会済み
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