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九話 見えている世界が俺とは別物だ。

 発光少女、壁抜け可能だった。

ゴースト系の魔物なら出来るかもと、思っていたら案の定だ。

テキストに発光少女の情報を追記する。


 ・壁抜け可能


 どの程度まで壁を通り抜けられるのか不明だが、壁抜け可能という情報は貴重だ。

トイレ籠城は安全地帯たりえないであろうことがわかったからな。


 次に知りたいのは、彼女の知覚能力と範囲。


 最悪なのがすでに俺の居場所がバレていることだが、これは無いと思っている。

もしバレているなら、室内を徘徊せずに壁抜けでまっすぐここに向かってきているからな。


 まずは視覚・聴覚・嗅覚。


 どの程度見えている?

出来れば暗視の可否は何とかして知りたい。


 どこまで聞こえている?

わずかな物音でも聞き取れたりするのだろうか。


 犬並みに鼻が利くとかは勘弁してほしい。


 発光少女が裏庭に出てきたので、距離が少し縮まってきた。


 距離を取るため敷地のブロック塀を乗り越えて道に飛び降りる。


 その際に、植木の枝に触れてしまい、がさっと少し音がしてしまう。

日常だと風で揺れた程度の音量で気にならないものだが、静寂と闇に覆われたシャボン空間内でのそれは、普通の人間でも聞き逃すことのない音量となる。


 別方向を向いていた発光少女が音に反応してこちらに向かってくる。


「uyq@,cyusb\ieqyq@,.0qd,gnseZd〕ieqeyq@.uyq@tsZwmgiu.k」


 意味不明の声を発しつ、音もさせずにてくてくと歩いてくる。


 俺が隠れていたところは植木に囲まれていたので、発光少女がいた場所からまっすぐ歩いてくると植栽をかき分けなければならない。

木の枝や葉っぱの擦れる音がして当然なのだが、無音で向かってくる。


 やはり植木などは障害物にならない。

普通にすり抜けてきている。


 俺は出来るだけ物音をたてないように家の玄関側に回り込んで、玄関扉を全開にして家の中に向けて退路を確保する。

靴箱に隠してある車のイモビライザー(リモコンキー)を取り出し、我が家のガレージに止めてある俺の車の陰に身をひそめる。


 普通車の5ナンバーではあるが、3列シートの6人乗り可能な車である。

10年近く乗っているのでもうすっかり旧型だが、天井にも液晶テレビを追加して後列に座る人はアニメ鑑賞しながらドライブ可能なアニオタ仕様車である。


 車の裏側は子供一人が身を潜めるには十分な隙間がある。

少しの間ならここに隠れていられそうだ。


 新たに判明したことを整理しよう。


 発光少女の聴覚は最低でも人間と同程度は持ち合わせていると判断できる。

さっき俺の隠れていた場所が見つかったのは、木の枝をひっかけた時の音のせいだからだ。


 あとは、多少の障害物では発光少女の足止めは出来ないということも判明した。

これは壁抜け能力に起因する。

木の枝やバリケードなどは役に立たないとみていいだろう。


 車の陰に身を潜めて5分以上は経過したが未だに発光少女が接近してくる気配はない。

可能な限り静かにここまで回り込んできたが、ブロック塀を乗り越えて以降、発光少女は俺を見失っているとみてよさそうだ。


 やがてブロック塀の向こう側からうっすらと光が漏れてきた。

どうやら、こちらに近づいてきた。

追いつめられて逃げ場を失う前に玄関から屋内に退避する。

もちろん靴は履いたままだ。


 さっき、発光少女がすり抜けた裏庭に出るガラス窓を開け放つ。

まずは裏庭に抜ける退路を確保する。

ちょうど、時計回りに家の敷地を一周した感じだ。


 続いて、ダイニングの机の陰に隠れて、いつでも裏庭に飛び出せる位置取りで発光少女の動向を伺う。

少し玄関先をうろついていた発光少女が、玄関から屋内に一歩踏み入れた。

この機を見計らってイモビライザーのロックボタンを押す。

信号を受信した車のウインカーが二回点滅する。


 発光少女は即座にウインカーの点滅に気付いて、玄関内から引き返して車の確認に向かう。

光にはかなり敏感に反応したように見えた。


 要注意だ。


 不用意にライトをつけるのはやはり危険とみた。

更なる検証が必要かもしれない。


 発光少女が車に気を取られている間に、裏庭の倉庫から20㎝程度のハンディサイズの機器を持ち出してくる。

光パワーメーターという測定器だ。

個人レベルでこんなの持ってる人はあんまりいないんじゃないかな。

普通は使い道ないし……。

これは、光ファイバーケーブルの損失を測定するために、光を送り込んだり、ケーブルからきている出力を測定する物だ。

見た目は30年以上前に流行った携帯型ゲーム機の【ゲーム少年】に似ている。

引きこもり前の仕事柄、個人で持っていたわけだが、これを使って確かめたいことがあった。


 車への興味を失った発光少女が家に入ってきたようだ。

あまり時間はない。

俺は機材の光源をONにして光の発射口のキャップを外してダイニングの机に無造作に置く。


 見た目この機材に何の変化もない。

しかし今、この機械の光ケーブルコネクタからは間違いなく光が垂れ流されているのだ。


 一般的に光といえば、電灯や炎などの光…… 人間の目で認識できる光を指す。

すなわち可視光線である。

だが、この機械から出ている光はその範囲外の光。

人間には視認できない一種のレーザー光だ。


 パワーメーターを机に残して裏庭に出た俺は、最初に隠れていた植栽の陰に再び身を潜める。

そこからオペラグラスで発光少女の様子を伺う。

ダイニングに入ってきた発光少女はまっすぐパワーメーターの置いてある机に直行した。そしてパワーメーターを手に取り、光の出ているコネクタをのぞき込んだりしている。


「uyq@\4,b;.uytvtZw..3yjlatoftyd@ue:s@2dg@utyd@.ooe5ifutZqvtlq@」


 なにか口走りながら、パワーメーターを見つめている。

すごい食いつきである。


 これではっきりした。

発光少女は人間の可視領域以上の光を認識している。

つまり、見えている世界が俺とは別物だ。

暗視も可能であると思った方が良いだろう。


 ただし、先ほどブロック塀を乗り越えて回り込んだ時は、俺を見失っている。

遮蔽物を超えてまで物を見ることはなさそうだ。

つまり、壁越しに目標を視認する透視能力的なスキルは持っていないと判断できる。


 約五分経過してパワーメーターの節電機能が作動して光源の光は消える。

(もちろん俺の目には見えないが……。)


 光が消えたパワーメーターに興味がなくなったのか、発光少女はテーブルの上にパワーメーターを戻して俺の捜索を再開する。


 俺も観察から逃走モードに移行だ。

とにかく、発光少女の視界に入らないことが大事だ。

俺にとっては1m先も見えない闇の世界でも、あちらは昼間のように物を見ている可能性が高い。


 細心の注意が必要だ。


 とにかく慎重に…… 音を立てず、常に身を隠しながら……。

発光少女とは一定以上の距離を保ち続ける。

只々、神経を擦り減らせる持久戦が続く。

発光少女に絶対捕まらないように、ひたすら逃げる。

 本日の投稿はここまでです。十話の投下は明日の4月4日の21:30ぐらいの見込みです。

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