八十七話 これはあかんパターンか……。
リコの誘導でジャングルをひた走ること一時間半ぐらいかな?
途中二度、デカネズミと熊の魔物に遭遇したがアルドとリコが瞬殺した。
この二人がトップランカーの冒険者ゆえの手並みなのか、ラライエの冒険者ならこのくらいはやってのけるものなのかその辺は情報がないのでわからない。
俺達は追躡竜に追いつかれる前に目的地に到着することができた。
視界の左側300m先で川が滝になっている。滝つぼの水しぶきで正確な水面はよくわからないが、脳内PCの測量アプリは落差60m強と計測している。
このクラスの落差は地球でもあまりめずらしくないけど、川幅が凄まじいからな。
充分絶景になっている。
俺達の目的はこの滝……ではなくて、滝を形成しているこの崖だ。
全長8m以上にもなると、その重量が5t以下なんてことは絶対に無いだろう。
そんな生物が60m以上の落差から落ちて無事に済む道理はない。
何とかしてあのT-Rexもどきをここから落とそうという作戦だ。
この崖の存在が二人の記憶にあって助かった。
なにせ、まともな地図さえない魔境だからな。
「すぐに準備にかかろう。もうどれだけ時間が残っているかわからない」
「わかった」
俺は昨夜のうちにこっそり召喚しておいたビール瓶をリコに手渡す。
勿論、最初からリュックに入っていた物のふりをしてだ。
「頼むぞ。マジで貴重品なんだ。一回で決めてくれよ」
「誰に言ってるの? あんなデカい的であたしがしくじるわけないでしょ? ハルトの方こそ大丈夫なの? 3人の命が掛かってるんだから、しっかりやんなさいよ」
「最大限、頑張らせてもらう……としか言えないな」
ピリカが人数に数えられていないのが地味に気に障るが、ここは我慢だ。
俺の方が実は大人だし、小娘の寝言だと思って流すか。
「じゃ、ピリカ頼むよ」
「はーい!」
ピリカは俺とリコがそれぞれ潜んでいる場所に直径1mほどの結界を展開する。
お互い30m程離れたところで身を潜めている。
追躡竜がどこから現れるか俺達にわからない以上、一か所に固まっていたら対処が遅れるかもしれない。
奇襲攻撃された場合、一網打尽になるのも避けたい。
そのため、お互い離れた場所に身を潜めている。
ここからでは見えないが、ピリカは俺が身を潜めている茂みのすぐ後ろの木の枝に腰かけている。ピリカは【マーキング】の影響を受けていないので追躡竜の視界にさえ入らなければ見つかることは無い。
アルドは結界なしで一人崖っぷちに立っている。
奴を引き付けるエサ役だ。
結界内にいる俺とリコは【マーキング】の影響を受けていない。
つまり、追躡竜がその存在を認識しているのはアルド一人だけ。
作戦が失敗した場合、真っ先に命の危険にさらされるのに何も言わずにこの役を引き受けるあたり、さすがパーティーのタンク職を兼任しているだけはある。
度胸の据わり方が半端ないな。
何とか追躡竜が来るまでに最低限のフォーメーションが完成した。
あとはいつ、どこから奴がやってくるのかだな。
そんなことを思っていたら次の瞬間、リコのすぐ後ろの木々がなぎ倒されて奴が姿を現した。
歩きやすさを考えれば、余計な木が生えてない川の方からじゃないのか?
「おいおい! 何でそんなところから来るかな?」
追躡竜のすぐ足元にリコが身を潜めているはずだけど、その存在に全く気付いている気配はない。
結界はしっかりと機能しているようだ。
追躡竜の両目はしっかりと【マーキング】でつながっているアルドだけを見据えている。
いくら何でも出現位置が悪すぎる。
この大トカゲ、こっちの手の内読んでるのか?って疑いたくなりそうだ。
これじゃ、リコが作戦通りに行動開始した途端に気付かれて、奴に踏み潰されてもおかしくない。
初手でリコが動いてくれないことには作戦はかなり厳しいことになる。
どうする?
二人を見捨てて【ポータル】で脱出するか?
こっちの手の内、晒してでもピリカに奴を始末してもらうか?
俺が次の行動に迷っている間に、追躡竜が動いた。
【マーキング】が繋がっているアルドに向けて突進を開始する。
これはあかんパターンか……。
アルドの背後は崖。
一応、アルドの腰に命綱はついているが追躡竜をどうにかできなければ、生存の目はない。
アルドは覚悟を決めたのか剣を抜いて追躡竜を迎え撃つ姿勢を見せる。
その時、猛然とアルドに向けて走り始めた追躡竜の背後を追う影が見えた。
リコだった。
本日の投稿は以上です。次回、八十八話の投下は
こちらの都合で申し訳ございませんが、4月30日の20:30頃を見込んでいます。
すいませんが、1時間繰り上げます。
……とはいうものの、原稿が最後の最後でやばいです。
(別に全然最終回とかじゃないですが……。)
落としたくない落としたくない落としたくない!
4月は絶対三話投稿死守するって決めていたのに……。
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