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八十二話 ピリカスマイルの破壊力は、弾道ミサイル以上である。

 茂みの上に上半身がはみ出している。

脳内PCの測量アプリは身長3.2mと計算している。

全身が赤黒く、発達した筋肉に覆われた角の生えた大男だ。

大男とはいってもこんな外見の人間はいない。

その手に持っている棍棒は、人間を一撃で血肉の塊にできる威力を発揮するのは、容易に理解できる。

 既になんかの血肉がこびり付いて、焦げ茶色に変色しているしな。

オタクの常識範疇ではこいつは【オーガ】と呼ばれている。

確か、地球でもたまに出現例が報告されていたな。


 この魔境に5年いるが、実物は俺も初見だ。

これも今後、【オーガ】と脳内変換すると決めた。

初見の敵は絶対に油断できない。


『ピリカ、いままでに奴を見たり戦ったりしたことは?』


『何度かあるね』


『どうだ? 勝てるか?』


『あいつらに手の内を見せていいなら、3秒以内でいけるよ』


 どうやら最低でも俺とピリカの安全は確保できそうだ。

あの二人がいる手前、どう立ち回るのが最善なのか……。

それだけが問題っぽいな。


「すまない、ハルト」


 なんかアルドが謝ってきた。


「パーティーメンバーが揃っていたら、ハルトを護りながらでもこんな奴ら楽勝なんだが……。俺とリコだけじゃ、オーガを倒すので精一杯だ」


 どうやら、二人だけでは俺とピリカの護衛とゴブリンの対処は無理だって事だろう。

なら、俺の行動は決まったかな。


「わかった。じゃぁ、オーガは二人に任せた。俺とピリカでゴブリンを押さえるよ」


 ちょっと数が多いけど、相手がゴブリンなら今の俺一人でもやれそうだ。

でも、ここはピリカに活躍してもらって俺は援護に徹したほうが良い。

ラライエの常識がわかるまでは、二人の前で飛ばさないようにするのが得策だな。


『ピリカ、ゴブリンを片付けてくれ。そうだな…… 四分の三くらい。残りは俺が倒すよ』


『はーい!』


 俺は格ゲードライバを起動してゴブリンの群れに向けて歩を進める。


「ちょっと! ハルト! あんたみたいな子供に無茶は……」


「ハルトには精霊がついてる。あっさりやられたりはしないだろう」


「でも!」


「わかってる! いくら精霊が強力でもハルト自身はまだ子供だ。ハルトがやられる前に速攻で決めるぞ」


 二人は何やら言ってオーガーの方へ向かっていった。

さて、俺達も始めようか。

ポケットから【フルメタルジャケット】の術式を五枚取り出して発動する。

ロックオン済みの弾丸五発は、正確にゴブリンの眉間に風穴を開ける。

風切り音さえ置き去りにして飛んでくるギルティングメタルの弾丸を防ぐ手立ては奴らに無い。

先着五匹のゴブリンが、自分の死を認識する間もなくパタパタと倒れていく。


 しまった……。


 速攻でノルマ達成してしまった。

ピリカは俺がゴブリンの四分の一を倒したのを確認して、残りは全て自分の獲物だと言わんばかりに、滑空してゴブリンの群れに突撃していく。

近接戦闘で蹴散らすつもりみたいだ。


 アルドとリコの方に視線を向けると、オーガ相手に大立回りが始まっていた。

リコが苦無を放っているが、オーガの頑強な筋肉に阻まれてはじかれている。

それでもお構いなしに苦無を投げつけながら、オーガの攻撃が届かないギリギリの位置取りを保っている。


 本命はアルドの剣による近接戦闘だろう。

今回は少しでもオーガの注意力を散漫にするためのかく乱がリコの役目と見た。


 二人の戦いぶりを見ている俺の隣にピリカが戻ってきた。

時間にして十数秒…… テレビのCM一本分程度しか経過していない。

俺も最初の五匹を秒殺だったし、ピリカもこの瞬殺っぷりだ。


「ピリッカーさんかい? 早い…… 早いよ!」


「!!」


 ピリカが俺の言葉にぴくっと反応する。


「悲しいけど、これって戦闘なんだよね」


 うぉっ! ピリカがこのネタに返してきただと!?

やるな…… ピリッカーさん。

何に対してやるのかは知らないが……。


 俺はピリカに向かってニヤリと笑い、親指をぐっと立てピリカの反応を称えておいた。

ピリカは自分の切り返しに、俺が喜んでいることを察してニカっと満面の笑みを浮かべる。

こういう時のピリカスマイルの破壊力は、弾道ミサイル以上である。


 おふざけはここまでにしておこう。

アルドとリコは今、まさに命がけで戦闘中だ。


「ピリカ、二人が劣勢と判断したら割って入るからな」


「ピリカとしては放っとけばいいと思うけど、ハルトがそうしたいならそれでいいよ」


 オーガのパワーは侮れない。

二人まとめて一撃死だってありうるかもしれない。

ダメそうなら、割って入るタイミングを見誤らないように戦況を注視する。

右手にいつでも発動できるよう【フルメタルジャケット】の術式を準備してある。


 激しく振り回される棍棒をアルドはうまくかわしている。

避けきれないときには腕のラウンドシールドで捌くあたり、相当に戦い慣れしているのだろうな。

例え盾があったとしても、これほどの攻撃は絶対に正面から受けるような真似をしてはいけない。

魔法がらみのトンデモ理論で物理法則を無視していない限り、こんな力が加われば普通にぴゅーんっと飛んで行ってしまうからな。

アニメのように、イケメン主人公が大男の強力なパンチを正面から受けてビクともしないなんて物理的にはあり得んから……。

ドライバーのフルスイングがジャストミートしたゴルフボールが、ピンの上でビクともしないなんてことがあり得ないのと理屈は同じだ。


 盾でいなしているとはいえ、オーガの振るう棍棒と物理的に接触してもアルドの腕は折れたりしていない。

これは、アルドがさっきの魔法で自分を強化しているためだと当たりを付けた。

おそらく俺の【ブレイクスルー】と同じか、それに非常に近い性質のものだろうな。


 リコが死角から放った苦無が、超曲射の軌道でオーガのこめかみに命中する。

オーガの体表は強靭で、命中部にはキズ一つついていない。

それでもオーガの注意を引くには十分だったようで、アルドはその隙を見逃さない。


 「たらぁ!」


 気合一閃!


 アルドが渾身の横薙ぎを振るう。

絶対的な体格差があるため、剣がオーガの体に届くことは無い。

アルドの剣はオーガの左足膝関節あたりに命中する。

少し鈍い音はしたけれど、オーガの足は切り落とされるどころか、薄皮一枚傷ついていない。


「マジかぁ…… あの大きさの剣で切りつけられて無傷って」


 こりゃ、あれだな。

【フルメタルジャケット】が命中しても無傷かもな。

二人がやられる前に、ピリカにお願いして瞬殺してもらったほうが良いかもしれない。

そう考えてピリカに声をかけようとした時だ。


「ぎゃわっ!」


 オーガは苦痛の声を上げて膝をついた。

さすがに切れなくても、剣のフルスイングが膝関節に当たればそれなりに痛かった。

……と、いう解釈でOKなのかな?


「やっと一撃入ったか! 木偶の坊が! 手間かけさせんな!」


 命がけの戦闘中で気が高ぶっているのか?

俺が持っていたアルド印象のとは違ったワイルドな言動が垣間見えた。

アルドは片膝ついたおかげで届くようになったオーガの体に、容赦なく連撃を見舞う。


斬る!

  斬る!

     斬って斬って斬りまくる!


 オーガに反撃も防御も行う暇を与えないように、アルドは休みなく剣を振り続ける。

……とはいっても、オーガの肉体が強靭すぎてオーガの体表には全く傷ついていないわけだけど……。

 実際はオーガをタコ殴りの方が、表現としては正しい気もする。

やがて、オーガは大量の血を吐き出して倒れる。

勝負ありのようだ。


次回、83話の投下は今から1時間後の22:30頃を見込んでいます。


 このスケジュールの遅れを取り戻してゼ〇レのシナリオ通りに戻すことができるのか……。

とにかく頑張ります。

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