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八話 全く…… なんつーホラーゲームだよ。

 今日からは、本格的にお隣やお向かいさんの家探しだ。

使えそうな道具・水・食料を持ち出して自宅の倉庫に移す。


 合間に、無理のない範囲で脳内PCの検証をしたり……。

あとは、庭の芝生で腕立て伏せやストレッチ、演武などで体を動かす。

そんなルーティーンで数日の時間を過ごした。

 

 脱出の手立ては全く見当たらない。

何の進展も無いまま、漫然と一週間が過ぎてしまった。


 脳内PCの時計は12月7日の夕方である。

常闇の環境下でこれだけの期間を過ごせば、時間や曜日感覚はすでにない。


 自室で気分転換を兼ねて、脳内PCでアニメを再生してくつろいでいた時だ。



 状況は突然に動いた。




 二階自室のベランダに出る窓から光が差し込んできている。

しかし、その光が太陽によるものではないのは確実だ。


 なぜなら…… その光は青紫色だから……。


 光源は裏庭の芝生からだ。

恐る恐る、光源の正体を確認しようとベランダに近づく。

ベランダの窓を少し開けた時、光源が接近してきていることに気付いた。


 裏の芝生からゆっくりと浮きあがってきたその光は、人間の形をしている。

シルエットは若返っている俺と同年代の少女のように見える。


 なんだこれ?

じっくり様子見していていいのか?


 絶対に否だ!



 宙に浮いている時点で普通ではない。


 すぐに部屋のドアを開け放ち、退路を確保する。


 光る少女は音もなく浮遊してきて、ベランダに着地する。


 しまった!

ベランダの窓は閉めて鍵をかけるべきだった。


 これは失策だ。


 青紫の光る少女型のシルエットはゆっくり歩いて室内に入ってきた。


「3Z! gt@zeqyq@,.9tZq.4jhxeb4pew@gw.nqew@3ydydq9」


 なんか、理解できない言葉を口走っている。

意思の疎通は不可能そうだ。

その声はシルエット通り少女の物のようだが、俺の知っているいかなる言語にも当てはまらない。


 そもそも、知的生命体であるかどうかも怪しい。

普通に考えるなら魔物と遭遇してしまったとみるべきだ。


 しかもこれは…… 倒すのは不可能なゴースト系の魔物だろう。


 最悪だ……


 わずか直径50mしかない、この閉ざされたシャボン空間で魔物に遭遇するなんて……。


 懐中電灯だけを手に部屋から飛び出し、階段を駆け下りる。

明かりは点けない。

何十年も暮らしてきた我が家だからな。

階段の幅も、段数も、体が覚えている。

目隠ししていたってある程度、動き回ることはできる。


 一階の廊下から少し顔をのぞかせて、二階の様子を伺う。

突然現れたこの少女のようなもの(以降は便宜上、発光少女と呼ぼう)は全身が発光している。

それゆえに、闇の世界で位置を確認するのは容易だ。


 二階の自室から青い光が漏れ出してくる。

どうやら部屋から出てきたな。


「3;? s@beZa’Zqk? 0qds6fudd949」


 なにか意味不明の言葉? を発しながら二階の廊下を歩いている。


 これは、そのまま階段を降りてくるな。

追いつかれるわけにはいかない。

玄関で靴を履き、発光少女と少しでも距離を取るために外に出る。


 家の外周沿いを回り込んで、裏庭の倉庫に向った。

そして、中にしまってあるオペラグラスを取り出す。

オペラグラスを手に、大急ぎで庭園の植栽の陰に隠れる。


 シャボン空間内の限られた範囲内で魔物と鬼ごっこ。

こちらは逃げ回る事しかできなさそうだ。

パニックホラーゲームをリアル体験しているような状況に陥ってしまった。


 さぁ、どうする?


 コンティニューも死に戻りも無いぞ。

相手はきっと無敵だ。


 発光少女の目的は不明。

ネットで見ていたゴースト系の魔物の情報を思い出す。


 攻撃手段は一方的に爪で引き裂いたり噛みついたりするもの。

攻撃対象を取り込んで爆散するものなど様々だ。

総じてあまりきれいな死に方は出来そうにない。


 最悪を想定して、触れられただけで死の危険が伴うと思った方が良いだろう。

窓から青紫の光が漏れている。

どうやら家の中を徘徊しているようだ。

オペラグラスのピントを合わせる。

そして、裏庭の植栽の隙間から、ガラス窓の向こう側にいる発光少女の様子を伺う。


 一階ダイニングをふらふらと歩きまわっているのが見えた。

髪は長く腰上あたりまである。

ここからでは、顔はよくわからない。

顔を判別するために正面に回り込むのは危険だろう。


 何だか怖いし……。


 テレビの画面から這い出てくる有名な怨霊みたいに、至近距離でクワッって見開いた眼で見降ろされたら、それだけで心臓止まる自信あるよ。


 あとは、こうして観察してすぐわかる大きな特徴が二つある。


 絶えず発光少女の体中から、ピンポン玉大の光の玉が漏れ出ている。

数は常時十数個といったところか……。

光の玉は発光少女の体から離れて、10秒程度浮遊して消失してしまう。

もちろん、発光少女自身の体も光っているが、光の強さは玉の方が強い。


 特徴二つ目、この発光少女…… 明らかにすっぽんぽんである。

しかし、髪の毛や光の玉が絶妙の場所に存在していて、大事なところは見事に見えない。


 髪と光の玉、仕事しすぎである。


 やはり、外見的には今の俺と大差ない年齢のようだ。

体型も俺とあまり大差ない。

ほぼ洗濯板といってよい。

非常事態につき、そんなことはどうでもいいが……。


 今は家の中を徘徊しているが、このままずっと徘徊し続けるのだろうか?

出現時は俺を追っているように見えたけどな……。


 明らかに人間ではない以上、発光少女の目的が俺の捕食または殺害であるという、最悪の事態を想定せざるを得ない。

 

 脳内PCのテキストにさっくりと状況をまとめる。


・ミッション:発光少女に捕まるな


成功条件:生き延びろ

敗北条件:発光少女に触れられる(殺害される)


 発光少女の情報

・無敵(推定)

・触れただけで相手の殺害が可能(推定)

・浮遊可能

・意思疎通は不可能


 あれ?

これって詰んでない?


 今わかっている発光少女の能力に対して、こちらの状況があまりにも悪すぎる。

とにかく相手の情報収集だ。

状況打開のきっかけが無いとどうにもならないな。


 絶対的な追跡者から逃げ回りながら、限られた空間で情報を収集して状況を打開する。

いよいよ、スーパーハードなパニックホラーゲームを実体験しているみたいだ。


 初見クリアできないと多分死ぬ。


 全く…… なんつーホラーゲームだよ。

この手のマンガやアニメに出てくる登場人物、心臓強すぎだろ。


 俺なんて、開始数分で心折れそうだ。


 俺は更に情報を脳内PCのテキストに追記する。


・発光少女の移動速度は人間と同程度、少なくとも俺よりは遅いと推測

・地の利は俺にあると思われる。

・常時発光しているため、発光少女の位置特定は容易。


 ネガティブなことばかり考えていられないので、俺の方が有利と思われる点を挙げてみた。


 まずはスピードだ。

遭遇してから、あまり時間が経っていないので絶対ではないが、移動速度はあまり早くなさそうだ。

すっぽんぽんで青く光っていても、ほぼ二頭身の鬼のような、逃走自体が絶望的な機動力は発光少女には無いと思いたい。

最悪でも覆面かぶった身の丈ほどのハサミを持った怪人くらいであって欲しい。


 フィールドは自分の家と周辺の土地なので、地の利は絶対に俺にある。

建物の構造から物の配置まで、全て頭に入っている。

お隣もお向かいも家の中は全て調査済みだ。

複数の退路が常時確保できる環境づくりが最優先課題だな。


 最後に、この闇の世界において発光少女の存在を視認するのは非常に容易である。

何せ、全身光っている上に光の玉をまき散らしているのだから……。


 しばらくは一定の距離を保ちつつ、相手の観察を続けるしか無いかな。


 とにかく、発光少女の能力でどうしても確認しておきたいことがある。

この手のパニックホラーゲームの場合、トイレの鍵かけてじっとしていると安全地帯になったりするものだ。


 しかし、リアルだとハイリスクすぎて実行するのは勇気が要る。

ドア破られたらそれだけで逃げ場が無い。


 発光少女の動向を観察すること数分。

裏庭につながるガラスの引き戸から、フワフワと浮遊しながら発光少女が外に出てきた。


 ガラス窓をすり抜けて……。


 はい、発光少女の能力一つ確認出来ました。


悪い方の推測は大体当たるのである。

 九話の投下は1時間後の23:30頃を見込んでいます。

何とかストックが溶かしきるまではこのペースで投下するつもりでいます。

平日は社畜なのでお仕事の状況次第で投稿落とす可能性もありますが……。

その時はごめんなさいです。

 ★マーク押して欲しいです!ブックマーク付けてほしいです……。

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