表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/255

七十九話 これはやってくれたな…… あの大トカゲ……

 長く苦しい戦いの末、ついに人類と魔族・精霊の戦いの盤面は決して覆り得ない局面に至る。


 3体の精霊王は世界各地に分断され、孤立状態。

魔族も首都サップマとその周辺地域のみ、かろうじて戦線を維持しているような状況となる。


 連盟の勇者たちは幾多の戦士とともに、魔界の奥深くまで攻め寄せている。

もはや、誰もが信じて疑わなかった。


 次の(いくさ)で魔族との戦いは終わる……。


        ラライエ創成記より一部抜粋




「すまない、ハルト。もちろん【お安い御用だ】って言ってやりたいんだが……」


「そっか。 ……町に入るのになんか許可とか手続きが必要なのか」


 一応、空気を読んでそう言っておく。


「そうじゃなくって! あんたわかってて言ってるでしょ? 別にいいよ ……そんなに気を使わなくてもさ」


 え? 何か違うのか?


「そうだな、そういう話は俺たちが生き延びられてからにしよう」


 何? 何でそんな重い話になってるわけ?

その【俺達】って俺とピリカも含まれてるのか?

何で死ぬ前提になってるんだ?


「あたしたち全員、追躡竜(ついじょうりゅう)に【マーキング】されちゃってるからね」


「覚悟だけは決めておかないとな」


 え? あのT-REXもどきが何なわけ?

【マーキング】ってどゆこと?


「あのさ、さっきから全然話が見えないんだけどさ。追躡竜(ついじょうりゅう)がどうかしたの?」


「ハルト…… あんたホントに知らないの? 緑の泥で暮らしているのに?」


「ああ、俺は自分のテリトリーから出たのも今回が初めてだからな」


「これは…… こんな魔境でとんだ箱入り坊ちゃまに出会ったものね」


リコが【なんてこった】って感じで額を押さえて呆れた感を見せている。


「ピリカは何か分かるのか?」


 困ったときはまずピリカさんに訊いてみる。


「まあね…… テゴ族の集落(コロニー)で【マズいことになったかも】って言ったでしょ?」


「それが二人の言ってる【マーキング】ってやつなのか?」


「そうだね…… ハルトにも、そこの二人にもばっちり【リンク】が繋がってるよ」


「何の事か分らんけど、俺たち三人だけなのか? ピリカは?」


「ピリカは存在が特殊だから…… ピリカ自身が物質界に存在しているのは、半分だけだからね。あの程度で【リンク】が繋がったりはしないよ」


 言葉の感じだと、二人の言う【マーキング】、ピリカの言う【リンク】は近い意味で使われているっぽいな。


「ハルトは気づかないのか? 自分の心臓に魔力(マナ)の棘が刺さっているような感じ……」


 すまんな、二人とも……。

俺はそもそもラライエの人間じゃないからな。

魔力(マナ)の感知とかは、種族的にできないっぽいんだよな。


「ああ、ごめん…… 俺、そういうのは生まれつき鈍いらしいんだ」


「本気で言ってるの? 確かに個人差はあるだろうけどさ。あたしなんて体に釣り針差し込まれて、常にジリジリと引っ張られているみたいな……。 むしろ、痛みに近いレベルの不快感だよ?」


 なんだよ、その例え……。

俺は金もらっても体験したくないな。


「で、その【リンク】・【マーキング】ってのがどうマズいわけ?」


「それは俺が話そう」


 どうやら、アルドが教えてくれるらしい。


追躡竜(ついじょうりゅう)ってのは、魔物より強力な魔獣の分類だ」


 なんかピリカも言ってたな。

後で詳しく聞いてみよう。


「強さ、凶暴さはもちろん別格だが、一番タチが悪いのは奴の能力【マーキング】だ。耳にある放射体を広げた状態から出す奴の【叫び声】をまともに聞いてしまうと、奴との間に魔力(マナ)的な繋がりが形成されてしまうんだ」


「それが【マーキング】というやつ?」


「そうだ。追躡竜(ついじょうりゅう)は【マーキング】した相手がどこにいようとも、その位置を知ることができる」


 つまり、俺達三人はあのT-REXもどきにロックオンされたって事か。

ファンタジーものではお約束、【死の秒読み】的なやつじゃなくてよかったんじゃないのか?


「なら、あいつの【マーキング】の有効範囲外まで出ればいいんじゃないの?」


 ピリカの【MPタンク】の有効範囲が確か3㎞ぐらいだったよな?


「ハルト、それはちょっと無理かな」


 ピリカが俺の言葉を否定する。


「ハルトの精霊はわかってるみたいだな。それは無理だ。奴の【マーキング】に有効範囲はない」


「マジかぁ……」


「この世界のどこに隠れようとも、ヤツが【マーキング】した相手を見失うことはない。そして…… この世界のどこまで逃げようとも、奴が【マーキング】した獲物をあきらめることもない」


「……マジかぁ」


「あいつの強さと凶暴性はとびっきりだからね。【連盟】でも追躡竜(ついじょうりゅう)は【特級指定】されてる」


 リコがアルドの言葉を補足する。

またニューワードが出てきたな。【連盟】?【特級指定】?

後から聞くか……。


「だから追躡竜(ついじょうりゅう)に【マーキング】された者が、町や村に近づくのはどの国でも法律で禁止されている。奴はどこまでも追ってくるからな……。町だろうが、砦だろうがお構いなしだ」


 トレイン厳禁の凶悪モンスターって事か……。

これはタチが悪いな。


「もし、町中で奴が更に【マーキング】すれば……。数えきれない人たちが奴の餌食になってしまうからね。歴史の中でも追躡竜(ついじょうりゅう)のせいで滅んだ町はかなりの数になるよ」


 リコは自分たちが町に近づけないことを受け入れている。

確かに…… 人里にそんな能力を持ったあれを引き入れたら大ひんしゅくだわな。


「この【ケルトナ王国】じゃ追躡竜(ついじょうりゅう)に【マーキング】された状態で人里に近づいたら、重罪人として問答無用で処刑されることになっている」


「マジかぁ」


 わお…… これはやってくれたな…… あの大トカゲ……

そしておめでとう【3マジかぁ】GETだ!

何も商品は出ないけどな。

 社畜モードのリアルが結構押したので、実はギリギリのタイミングでの投稿でした。

次回、七十九話の投下は1時間後、4月27日の22:30頃を見込んでいます。


 昨夜から今日にかけてブックマーク付けてくださった方、ありがとうございます。

とてもうれしいです。


 ブックマークと下の★マークで評価ポイント、引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ