七十八話 何? その謎ワードは……。
これ以降、会話の表記にかぎ括弧が二種類出てきます。
「」…… ラライエ第一共通語で話しています。
言葉を理解するほぼ全ての登場人物が理解しています。
『』…… 日本語で会話しています。原則、異世界ではハルトとピリカしか理解できません。
よろしくお願いいたします。
ひとまず、集落を迂回してから、俺が来た道を脳内PCのマップデータを元に引き返すことにした。
移動しながら、この二人と可能な範囲で話をしてみることにする。
「ハルト君、君はなぜ一人で緑の泥にいたんだい?」
「ハルト……でいいよ。あと、一人じゃなくてピリカと二人で…… と、訂正してもらってもいいかな?」
俺がアルドに被せた言葉にピリカは機嫌が良くなって、俺にくっついてくる。
「ああ、すまなかった。ハルトはなぜ、ピリカと二人で緑の泥にいたんだい? あと、俺達の事も呼び捨てで構わないからな」
どうやら、子供にしか見えない俺と話を合わせるために、自分の方から譲歩して見せるだけの度量はあるみたいだ。
こんな時のために、いくつか作り話のパターンは考えてある。
この手のでっち上げは、ラノベやアニメで鍛えられている。
「さっきも言ったけど、俺は生まれてこの方この森から出たことがないんだ」
「本当か? ここは世界屈指の魔境の一つだぞ。とても人間が暮らしていけるようなところじゃない」
「俺にはピリカがいるからな」
ピリカがどや顔で二人に胸を張って見せる。
張るほどの立派な胸はないけどな。
「確かに…… ハルトの【契約精霊】はかなり強力そうだけどさ……」
リコはピリカが二人に対して、塩対応なのが気に入らないと見た。
「あのさ、ピリカはそもそも契約精……」
「ハルトハルト!」
ピリカが俺の話を遮って、横から割り込んでくる。
「ん? どした?」
『あのね、面倒くさいから獣人の言ってることはそうだって答えておけばいいよ。その方が話、簡単に済むから』
日本語? ピリカが日本語で俺にそう言ってくる。
確かに…… 他人に知られたくない内容を人前で話すには日本語は無敵のツールだ。
考えたな…… ピリカさん。
『わかった。ラライエの人間には、ピリカが俺の【契約精霊】だって言っておけってことだな?』
ピリカはいつものスマイルで頷く。
「何? 突然精霊と意味不明な事言っちゃって…… あんた大丈夫?」
「ん? ああ、すまない。ピリカと俺だけの、独自のコミュニケーションなんだ」
「えっと、なんだっけ? ピリカが俺の契約精霊だって話だったか……。そう、ピリカは俺の契約精霊だ。ピリカがいるから、別にこの森でも生きてはいけるさ」
ピリカの言う通りにして、よくわからないがリコの認識に話を合わせておいた。
「それで、アルドの質問は……。俺が何でこんなところにいるか…… だったな」
俺は改めて、こんな時にのために用意していた作り話を披露する。
「元々はさ、森のもっと深い所で俺達の一族はずっと暮らしてきたんだけど……。世代を重ねるうちに一族も減ってきてさ。とうとう五年前に両親が死んで、俺が最後の一人になったんだ。これ以上、ピリカと二人で森にいても先がないからな。町に出ようと思って出てきたところなんだ」
どやぁ! これなら一定の説得力あるだろ?
「ハルトって秘境集落出身なんだ。なんか納得」
何? その謎ワードは……。
そして狙い通り納得はしてくれたようだ。
「あのさ? その秘境集落って何?」
「未開の地域にある地図に載っていない村なんかの事さ。特に緑の泥は世界最大級の魔境だからな。ハルトのところみたいな集落があっても不思議じゃないさ」
なんか、うまい具合に話が着地したぞ。
「しかし、緑の泥に精霊術師の一族がいたなんてね……」
「ああ、おかげで俺たちは命拾いしたな」
「それで、二人にお願いがあるんだけどさ。俺達を町まで一緒に連れて行ってくれないかな?」
話を切り出した途端、二人の表情が沈む。
「えっと…… それは……」
リコが何やら言いよどむ。
えっ? 何?
これって駄目な流れ?
戸籍のないやつ、住民登録のないやつとかは町に入れません! って流れ?
この手のファンタジーだと結構、お気軽に入れるんじゃないの?
構成上、短くなってしまいました。すいません。
本日の投稿は以上です。次回、七十九話の投下は明日、4月27日の21:30頃を見込んでいます。
気付いたら投稿時数が20万字を超えていました。
10万字ブーストは都市伝説のようでしたが、少ないながらもこの駄文に興味を
もって下さる方もいるようで、ありがたい限りです。
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