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七十話 異世界生活のスタート地点にしては優しくなさすぎるだろ。

 テゴ族はおもむろに、デカネズミの死骸にかぶりつく。

どうやらお食事タイムのようだ。


「……まじかぁ」


 バーバリアン、ついに【5マジかぁ】獲得だ!

すごいぞ! ラライエのバーバリアン!

ピリカが珍しくドヤ顔というか、ニヤニヤと嬉しそうに俺の方に視線を向けている。


「ほら、ハルト! デカネズミのお肉食べてるよ? 好き嫌いはダメだよ!」


「いやいやいやいや! ピリカさんあれは魔物でしょ! 無理だから! あれ人間が食べたら絶対死ぬから! 生なんて論外だよ!」


 あれが俺と同じ人間という種だなんて、断じて認められない。

あの肉を口にして平気だなんてあり得ない!

俺が以前、デカネズミの肉を口にした時は全身があれを拒絶したぞ。

何の冗談だ?


 ひとしきり悪夢のような食事を終えたテゴ族は、デカネズミの足を一本引きちぎって歩き始める。

ん? 丸ごと一匹は持ち歩けないから、足一本お弁当としてお持ち帰りか?


 すごいなバーバリアン……。

絶対にお友達になれそうにない。


 俺とピリカはバーバリアン(以降、葉っぱまみれの奴はラライエの呼び名に従ってテゴ族と呼ぼう)の後を追って追跡を再開する。


 追跡を続けること約一時間、ふと横を見た時に気になる物が視界に入った。

草や枝がやたらと踏み荒らされている。

最近、何か大型の生物がここを通ったのではないのか?

虎や熊の魔物か?

まぁ、その手の魔物ならピリカ先生にお願いすれば瞬殺だし、奇襲だけ注意しておけばいいか……。


 そんな風に考えてテゴ族の追跡を再開した。

これが大きなミスだったのだが、この時は知る由も無かった。


「ところでさ、俺たちのいる緑の泥ってこのジャングル、どんなところなんだ?」


「ハルトの予想通り、ラライエの赤道直下だね。ちょうど魔界の真裏ぐらいで、ラライエ屈指の魔境としても有名かな」


 やはり赤道直下だったか。

でも、ここがラライエ屈指の魔境だということに少し安心もした。

これで、この地獄みたいなジャングルを抜けた先にあるかもしれない人類の都市に【はじまりの町】的な二つ名がついていたりしたら、心が折れるって話だ。


 あともう一つ、パワーワードがピリカの口から飛び出していたな。


「ピリカ、なんか【魔界】ってなかなか物騒な言葉が出てきていたけどさ。その魔界というのは何かな?」


「魔界はラライエで一番危険な魔境だよ。魔族という種族が暮らしていて、場所はこの星の丁度、裏側ぐらいだね」


「なるほど、魔界なんて言い方をしているけど、別世界じゃなくてラライエという惑星の中の一地域ということか。地球で言えばここが赤道直下のブラジルあたりだとすると…… 大体、インドネシアとかフィリピンのあたりかな」


「そんな感じかな。魔界は今いる緑の泥と違って、地脈の流れが悪いから魔力(マナ)(けが)れが障気化して滞留しやすくてね。そのせいで、どうしても危険な領域になっちゃうんだよ」


「それで、なんでまたこの森は【緑の泥】なんて個性的な名前がついてるわけ?」


「ここが人類にとって、全く調査すらできていない未開の秘境だからだよ」


「全く?」


「うん、全く」


「それで、なんで全くの未開だと、緑の泥なんて名前になるわけ?」


「えっとね、ピリカも昔に人間から聞いただけだけど……。この森は誰も全容がわからないから、人間たちがこの森を地図にすると、泥を塗りたくったみたいにグチャグチャーって緑の顔料を塗りつぶしておしまいになっちゃうんだって」


「あ~、なんとなくわかってきた。森周辺の地図なんかだと、紙の大部分を緑で塗りたくったやつで、はいこの辺りの地図です! って言われたりするのか」


「そう! 人間の町で【緑の泥の地図をください】って頼むとね。緑の顔料で塗りつぶしただけの紙を渡されたりするらしいよ。昔の話だけどね」


 まじかぁ。

ここってそんなレベルの魔境だったか。

異世界生活のスタート地点にしては優しくなさすぎるだろ。


「ん? そういえばピリカさんや」


「なぁに?」


「子ワニがいた洞窟に人間の白骨めっちゃあったよな?」


「うん、あったね」


「あれって、二千年前の時点で、人間があそこまで来たってことだよな?」


「そうだね」


「あの場所ってこの森の中でも結構深いよな? あの場所が人類の基地だったというのならさ。あそこまでは人類も調査が出来たってことじゃないのか?」


「どうだろう? 【ミエント大陸】の八割以上は緑の泥だからね。今、ピリカ達が緑の泥のどの辺にいるかにもよると思うけど」


「さいですか……」


 いっそのこと、俺の家の場所が森の最深部とかであって欲しかった。


「でも、二千年前の緑の泥の戦場で、精霊達と戦って生きて森を出た人間って、数人の勇者とその仲間だけのはず。全部で20人もいなかったはずだよ。多分、みんなボロボロで、地図なんて描いてる余裕なんてなかったんじゃないかな」


「なるほどな…… この森は今でも、未開の緑の泥のままという訳か」


「多分だけどね。ピリカ、ここ何百年、人間と関わってないからそこまでは分からないよ」


「この森についてどこまで判明しているのかは、人類の都市に着いてからじゃないと分からないか」


 分からないものは仕方がない。

先を歩くテゴ族に気付かれないよう、気を付けてそんな話をしながら追跡を続けていた。


 次回の投稿は1時間後、4月24日の22:30頃を見込んでいます。


 新たにブックマークと評価くださった方、どうもありがとうございます。

とても感謝しております。

 来月以降はストックが溶けるのでさすがに投稿頻度下がりますが、

頑張って投稿続けますので引き続き見てくださいませ。


 ブックマークと評価よろしくお願いします。

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