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六十九話 しかし緑の泥って、何それ?

「確かにピリカの言う通り、とても危なそうに見えるな。初見で仲良くしたいとは思えない風貌だ。……やっぱ第一印象って大事だよな」


「でもあれ、魔物だから絶対仲良くできないよ」


「ふぁっ!? ピリカさん、さっき人間だって……」


「人間の魔物だよ。生まれた時から魔力(マナ)(けが)れ切った魂を持った人間は、生物としては人間でも、存在としては魔物だよ」


「マジかぁ」


 あの葉っぱまみれの人間、遭遇して二分で【2マジかぁ】だ。


 確かに、ラライエワニもピリカから見たら魔物だって言ってたもんな。

見た目おんなじでも、普通に野生動物としてのラライエワニと、魔物としてのラライエワニがいるってことか。

人間も同様に【人間としての人間】と【魔物としての人間】にわかれると……。

深いな…… ラライエの生態系。


「人間達もね……。ああいう生まれた時から魔物の人間は、魔物の扱いで討伐対象にしていたはずだよ。ああいう人間の魔物を確か【バーバリアン】って分類してたと思うけど」


「なるほどな。そうなると本当に人間か、そのバーバリアンなのかが区別できないとこの先きついんじゃないか? 俺は見ただけじゃ、魔物かそうでないかわからないことが多いからな」


「ハルトでもすぐわかるよ。だって人間の魔物は理性・知性が全然ないもん。本能だけで生きてるし、行動原理が殺す、食べるしかないからね。問答無用で襲ってくる人間は全部、魔物認定でおkだよ」


「マジかぁ」


 もう【3マジかぁ】だ。

バーバリアンはラライエワニ以来の高得点になりそうだ。


「でも、あの葉っぱだらけの魔物……。あれって確か…… 昔見たことがあるような……」


「どうした? 何か知っているのか? ピリーマン?」


「ん?」


 ピリカはこてんと首を傾けてこちらを見ている。

むぅ、このネタもピリカさんにはまだ早かったか……。

何に対して早かったのかは知らないが……。


 あれが魔物認定である以上、警戒は必要だ。

俺は【プチピリカシールド】の術式を取り出すと共に、サイをすぐに抜ける場所に装備しなおしながら問いかける。


「えっと…… それでピリカさんはあのバーバリアンについて、何か詳しいことを知っているのか?」


「そんなに詳しいことは知らないけど……。確かあいつらの事を人間達は【テゴ族】って呼んで、ほかのバーバリアン達と区別してたよ」


「【テゴ族】ねぇ…… それで、そのテゴ族は他の奴らとは何が違うんだ?」


「見たまんまだよ。全身に葉っぱ付ける習性があるの。それとテゴ族の生息地域はね、【緑の泥】限定だからね。この森が【緑の泥】だってことが確定したね」


「その【緑の泥】っていうのは地名か?」


「そうだよ。ラライエの人類はテゴ族が住むこの森を【緑の泥】って呼んでるね」


 おぉ、ついに俺が五年間暮らしていたジャングルの地名がわかったか!

しかし緑の泥って、何それ? 絶対に良い由来で付いた名前じゃない気がする。

おっと、テゴ族が移動を開始した。

いったいどこに向かうんだろうか?


「少し後をつけよう。もし見つかったらすまないけど頼む」


「また観察するの? バーバリアンはゴブリンやコボルトみたいに群れるから、気を付けてね」


「なら、ますます後をつけておかないと……。出来ればやつらの根城の場所は押さえておきたい。いきなりバーバリアンの集落に出てしまうような事態は避けたいからな」


 気付かれないように一定距離を保ちながら、慎重にバーバリアンの後をつける。


 15分程度後をつけたところで、テゴ族と呼ばれているらしいバーバリアンが立ち止まり姿勢を低くする。

俺とピリカも素早く木の裏に身を隠して、警戒を強める。


「どうしたんだ? 見つかったのか?」


「違うよ…… あれ」


 ピリカが指さす方向に、一匹のデカネズミがいる。

どうやらテゴ族はあれを狙っているようだ。


 これはラッキー!

このバーバリアンという人間の魔物がどの程度の物なのか、見ることが出来そうだ。

情報収集は大事だ。

しかし、大丈夫なのか? テゴ族は丸腰だ。


「おい、武器も無しで大丈夫なのか? 地球じゃ、人間が肉弾戦で勝てる相手じゃないぞ」


「多分、いい勝負になるんじゃないかな? 魔物同士の殺し合いだから、どっちが勝っても関係ないよ」


 ピリカは魔物に対しては徹底的にドライである。

精霊がここまで魔物を嫌うのは、魔力(マナ)(けが)れを忌避していることに起因しているのは、この五年でなんとなくわかってきた。


 デカネズミはテゴ族に狙われていることに気付いていないので、テゴ族の先制攻撃で戦闘が始まることになりそうだ。


「しゃがあぁっ!」


 意味不明の奇声を上げて、テゴ族がデカネズミの背後から襲い掛かる。

襲撃に気付いたデカネズミが迎え撃とうとして、体勢を変えようとするが、反応が間に合わない。

とびかかったテゴ族が背中に張り付いた。


「ギシャァー!」


「ふぁぎぃ!」


 何コレ?

ただの獣同士の争いを見ているというか……。

テゴ族が生物学上は人間である分、絵面としてはシュールに映るが、印象はまさにそんな感じだ。


 デカネズミは何とかして背中に張り付いているテゴ族を振り落とそうと暴れまわっている。

しかし、テゴ族はがっちりしがみついて離れる気配はない。

やがて、素手でデカネズミの皮膚を引きちぎったり、噛み破ったりし始める。


「うわぁ、マジかぁ……」


 ついにバーバリアン【4マジかぁ】ゲットだよ。

ラライエワニに並んでしまった。

素手でデカネズミを生きたまま解体開始って、どんだけ怪力なんだって話だ。


 あ、なんかこの光景見たことがある。

確か、人類の存亡をかけた謎の存在との戦いを描いたアニメで、暴走した人造人間が敵を食い散らかす感じだ。

テゴ族を引き剥がせない以上、もうデカネズミに勝ち筋は無いな。


 バーバリアンの身体能力と膂力には要注意だ。

【ブレイクスルー】使用状態なら身体能力は容易く負けないと思うが、パワーはそれでも負けているかもしれない。

【ブレイクスルー】使用状態の俺にデカネズミを素手でばらせるかと聞かれると、ちょっと無理な気がする。


 やがて、デカネズミは力尽きて倒れる。

終わってみれば、奇襲に成功したテゴ族のワンサイドバトルだった。

テゴ族は倒れて動かなくなったデカネズミの傍らにしゃがみ込んだ。

テゴ族がデカネズミの死骸にとった行動は……。


 おい、まさか……。


 本日の投稿は以上です。

 次回、七十話の投下は、明日4月24日の21:30頃を見込んでいます。

いよいよやばくなってきました。

 そろそろストックの底が見えてきました。土日は腰を据えて原稿書き足さないと

月内毎日三話投稿が厳しいです。


いいから書け!と、思ってくださる読者様いらっしゃれば、やる気ブーストの

ブックマークと評価ポイントよろしくお願いします!

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