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六十八話 もしかして人間…… なのか?

 左側に川から流れてくる湿った風を受けながら、密林を進む。

異世界ラノベやアニメだと、こんな川に来たなら魚でも釣って食料を調達と行くのが王道だけど……。


 とてもそんな気にはなれない。

こんな濁った水中にいる魚だと、臭味がすごい気がするし、あの向こうの水面で跳ねてる魚が釣れようものなら、エサになるのは絶対に俺の方だ。

あんなのと引き合ってもとても陸に引き上げられる気はしない。

むしろ、10秒以内に水中に引き込まれる自信がある。


 そもそも食って大丈夫なのか判断できない。

ラライエワニを食うのも実はちょっと勇気が必要だった。

食べてみたら結構いけたので結果オーライだったけど。


 ……というわけで、人間の都市に到着するまでは口にするのは食べて平気だと確信が持てる木の実・フルーツ・鳥などになってしまう。

当然だが、いよいよ現地調達が出来なくなって食料が尽きてきたら【ピリカストレージ】から保存食を召喚できるように仕込んである。


 ヘンなものを食べて中毒になってしまったら、そこで密林脱出計画は頓挫しかねない。

何も知らずに即死するような毒物を含むものを食べたりしたら、ピリカに助けてもらう間もなくすべてが終了してしまう。


 現実問題として、医療を受けられない異世界において飲食物でヘタは打てない。

味に飽きが来ようとも、人類の文明圏に到達するまでは異世界グルメはお預けにせざるを得ない。


 川から初見の魔物襲撃に警戒を続けながら、下流に向けてひたすら歩を進める。

もちろん、脳内PCで俺達が歩いているルートデータは、常時収集してマッピングは続けている。


 ラライエに来てからずっと、我が家を中心に円形に地図を広げてきていた。

なので、今のMAPを全景で見ると【 ●¬ 】こんな感じに円の右からひげが出ているみたいに見える。

 このまま川に沿って、ひたすら南下することになるのだろうか?



 川に並行して密林の中を進み続けて3日が経った。

人の手が入っていない自然の密林の中を進むのは本当に大変だ。

雑草を鉈で切り開き、足元だけでなく、魔物との突発的な遭遇を全周囲で警戒しながら少しずつ進むしかない。


 ピリカがいなかったら普通に無理ゲーである。

せっせと雑草を払いながら進む俺の少し上を、ピリカはふわふわと浮遊して何か歌を口ずさみながら追従している。


 これって何のアニメの主題歌っだったかな? まぁいいや。


 なんだか何も考えず、お気楽に鼻歌を歌っているだけに見えなくもないが、これでこの子は全周囲に神経をとがらせてくれている。

たまに遠方の茂みに向けて【ピリカビーム】を発射したりしているので、ピリカの索敵に引っかかった魔物がちらほらいるのだろう。


 一応、俺も警戒はしているが、ピリカの方が索敵能力は圧倒的に高い。

密林で俺が敵を知覚するような事態になったときは大体、敵の攻撃範囲内に入っていて、のっぴきならない状況になっている。


 この数年、色々試してはみているが索敵魔法に類するものはものになっていない。

周囲の動くものを感知しようとすると、風で揺れる木の枝や、葉っぱなんかも引っ掛かってきて収拾がつかない。


 温度や二酸化炭素の排出で対象を絞っても対象物が多すぎて、役に立たなかった。


 今はまだ遭遇したことがないけど、ゴースト系やゴーレム系の魔物だとこういった索敵に引っかかってこない可能性が高そうだ。


 たとえ、無理矢理実用化したとしても、索敵魔法に頼り切ってしまったら、索敵条件から漏れた魔物に一方的な奇襲を受けて瞬殺されてしまうかもしれない。


 ラノベの異世界チート主人公の索敵スキルが羨ましすぎる。


 ピリカは魔力(マナ)や魂を総合的に判断して索敵してるらしい。

しかし、地球人である俺には魔力(マナ)の存在自体、観測する手段がない。

おそらく、今時点では目視以外に索敵手段はないのだろうと結論付けたわけだ。


 だからと言って、さすがに常時【プチピリカシールド】を展開していられない。

接敵していないときは、ピリカの索敵は俺の命綱そのものだ。


 不意にピリカが鼻歌をやめて、俺の隣に降りてきた。


「ん? どうした?」


 ピリカは口の前に人差し指を立てて、静かにするように伝える。

俺も歩を止めて身を低くして身を隠す。

ピリカが向けている視線の先には二足歩行の何かが動いている。

あれってもしかして……。


 「あれは…… もしかして人間…… なのか?」


 大きさや体の運びは人間っぽい。

しかしよくわからない。

まず、服を着ていない。

しかし、真っ裸でもない。

全身に大小様々な葉っぱが、隙間なくくっ付いている。

人間ではなくトレントのような植物的な種族だって言われても、普通に納得するレベルで葉っぱまみれだ。

肩の下まで伸びている脂ぎって、お世辞にも清潔とは言えない茶髪以外に、露出している部分は一切ない。

顔さえも葉っぱで覆われていて、耳目鼻口の部分だけ、かろうじて葉っぱに穴をあけてくり抜いてある。

そのせいで性別さえ判断できない。


 おそらく、密林の中で周囲に溶け込むためなのだろうが、体一つ手ぶらでこんなところを徘徊しているなんて、普通ではない。


「まぁ、生物の分類としては人間だね」


 マジかぁ。

ラライエの人類、初見で【1マジかぁ】ゲットです!

おめでとう!


 人間はヤバい、危ないとピリカは言ってはいたが、俺の思っていたのとは全く違う方向でヤバかった。


 何あれ?

 次回、六十九話の投下は一時間後。

4月23日、23:30頃を見込んでいます。


 週末のこの時間って、投稿しても新着コーナーから一瞬で流れて行って

しまいますね。

 でも負けないぞぉ!えい えい むん!

どうか、ブックマークと評価ポイントよろしくお願いします。

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