六十三話 うん! 餌食だね
次に目が覚めた時は、脳内PCの時計は3月14日午前4時20分だった。
ずいぶんと早く目が覚めてしまったが、その視界に飛び込んできた光景は、目を疑うようなものだ。
こんな事態になっていても、気付くことなく眠っていたとは……。
異世界初の野営による緊張のせいで、俺自身が思っているより疲れていたのだろうか?
それとも、俺の神経は俺自身が思っているより図太かったのだろうか?
「な、なんじゃこりゃぁ?」
「あ、おはよう、ハルト。今日は早起きさんだね」
ピリカはいつものプリティスマイルだ。
しかし、その背後の光景とのギャップが凄まじい。
ピリカの背後には魔物の死骸が多数転がっている。
トータルで20体ぐらいだろうか……。
半数は日中探索していても、たまに遭遇する熊や虎系統の大型の魔物だが……。
「えっと、ピリカさん。こいつは一体何なの? ここに転がっているってことは、魔物なのはわかるけどさ……」
俺は木の棒でその魔物をツンツンとつついてみる。
「う~ん なんだろうね。ピリカにもわからないや」
「魔物なんだろ?」
「魂が完全に穢れているから魔物だね。ピリカも初めて見たけどね」
数匹、初見の魔物の死体が転がっている。
若干個体差はあるが大きさは2m前後、見た目はほぼ肉食系の爬虫類。
うろこは無く筋肉は引き締まっていて運動能力は高そうだ。
後ろ足と尻尾が特に発達していて、短めの前足は鋭い爪。
口の中は鋭い牙がずらっと生えている。
これって、あれだ。
殆どヴェロキラプトルだよな。
某恐竜パニックアクション映画で主役級の……。
ラライエにはこんなのも出現するのか……。
こいつが例の有名映画通りのスペックを発揮するとすれば、かなりヤバいぞ。
ここに来て五年近く経つけど、初めての遭遇だ。
この場所にも頻繁に来ているのに、なぜ今の今まで全く遭遇しなかったのだろうか?
ピリカですら初見というのもすごいな。
今、俺の中で立っている仮説は多分正しい気がする。
このラプトルもどき、きっと完全夜行性だ。
あまり視覚に頼らずに活動できるのか、それとも異世界トンデモ能力で闇の中でもばっちり見えてるのかわからないが……。
いずれにしても、日中は徹底して潜伏しているのだろう。
あとこれはなんだ? この魔物も大概凄いな。
「こいつは…… 亀だよな?」
「亀だね」
「こんなのも出てくるのか。これも初めて見るやつか?」
「これはたまに見かけることあったよ」
「こいつらは全部【ピリカビーム】の餌食か?」
「うん! 餌食だね」
「そっか、ラライエワニみたいに、攻撃が効かないやつが出なくてよかったよ」
「どの魔物もバカばっかりでらくちんだったよ」
「そうなのか?」
「考える頭があったら普通さ……。これだけ仲間とか他の魔物の死体転がってたら、これ以上近づいたら自分も死ぬかもって思うよね?」
「まぁ、そうだな」
「ハルトが無防備で寝てるからって、食べようとして次々突撃してくるなんて……。ピリカに殺されに来てるのと同じだよ。ゴブリンとかデカネズミは空気読んで一匹も来てないもん」
そう言われればそうだな。
あいつらは、最低限の危険を察知するおつむがあるということなのか?
そんなことよりもこの状況だ。
これは不味いだろ。
夜の密林がここまで危険だとは思わなかった。
これほどの魔物の接近に気付かず、グースカ眠っていたということは……。
俺一人だと一晩で20回以上死んでることになる。
ピリカがいないとジャングルの踏破は絶対無理なのは分かった。
一晩でコンスタントに20回襲撃を受けるとして、十日で200回襲撃を受ける計算か。
ピリカのちょっとした隙をつかれたり、複数同時に襲われたりして睡眠中の無防備な状態でラプトルもどきに一噛みでもされようものなら、それだけで終了だ。
ちょっとリスクが高すぎるな。
このまま野営を続けるべきではないだろう。
俺に死に戻りスキルは無いのだから……。
「今日はもう帰ろう。なんか別の手を考えないとダメそうだ」
「はーい!」
「すまんな、あと、亀とこいつを一匹、持って帰りたい。転移陣を頼めるか?」
「いいよ」
亀とラプトルをワニと一緒に氷漬けにして、保存するために持って帰ることにする。
残りの死骸は全てこの場に埋めてもらうことにする。
ピリカの転移陣準備が完了したのを確認して、俺は【ポータル】を起動してピリカと共に家に戻る。
本日の投稿は以上です。三話通して短めですいません。
次回、六十四話の投下は明日、4月22日の21:30頃を見込んでいます。
こうやって投稿する直前になっても結構、誤字って出てきますね。
頑張って複数回見直しているつもりでも、次々出てくるし……。
数日たってから発覚すると凄く恥ずいですね。
見つけ次第、こっそり修正してます。
ブックマークと評価ポイントよろしくお願いします。
毎日ドキドキしながら確認しています。




