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五十八話 【美利河 碑璃飛離拳】

「次は、【ポータル】の対の術式をどうするかだな? こっちは紙に書いたやつでも良いんだろ?」


「うん。それでも大丈夫だよ。ミスリルに描くんだったら、こっちは四分の一枚で大丈夫だよ」


「そんなにコンパクトでいいのか?」


「うん、重要な術式は全部こっちに担当させているからね。対の術式は発動の合図とこっちの術式との接続だけでいいから」


「なるほどね。術式のクラウド化…… みたいなものか。あとで仕組みを教えてくれ」


「いいよ! それで対の術式はどうするの? 紙に描いたら強気に描けないから、こっちと同じくらいの大きさになっちゃうけど……」


 2m四方の紙は持ち歩きたくない。

もし破れたり、濡れて文字が滲んだりしたらそれで使えなくなってしまう。

さらに使い捨てなので、使うたびに毎回書き直す必要がある。


 名刺くらいの大きさの紙に書き込んでいる【フルメタルジャケット】ですら、一枚描くのに30分以上かかるのに……。

2m四方の術式は勘弁してほしい。


「ミスリルに描き込んでもらってもいいか?」


「うん、いいよ。」


「四分の一枚で良いんだよな。でも、魔法金属って簡単に切れるのか?」


 これって強度はどうなんだろうか?

オタク知識的には【ミスリルアーマー】とか【ミスリルソード】とか普通にあったよな?

【ミスリルソード】的なやつはお隣の家に現物が三本転がっている。


 そんな地球では存在しない元素記号さえ不明な異世界魔法金属がだ。

倉庫にある金ノコギリごときでガリガリやっても、どうこうなる気がしないのだが……。

さすがにグラインダーとかサンダーとかは倉庫にも無いぞ。

あったとしても無理な気がものすごくするけど……。

とりあえず、ピリカに聞いてみよう。


「これって鉄よりも強いよな? やっぱり」


「鉄よりは丈夫だね」


 ですよね。


「人間はこれをどうやって加工しているか知ってたりするか?」


「えっとね…… 魔導技師とかいう連中がね…… 魔鉱炉とかいうところでやるらしいよ?」


 ……なんか詰んだぽい。


 勿体ないがこれを丸ごと一枚使って対の術式を書いてもらうか。

大きさ40㎝四方は持ち歩くには少しかさばるが仕方がない。


「ちょっとこれを切る方法が無さそうだ。勿体ないけどこれに対の転移陣を頼むよ」


「!! ふっふっふ~」


 ピリカが腕を組むタイプの仁王立ちだ。

口角を挙げてドヤ顔をこちらに向けている。

どうやらピリカには勝算がありそうだな。

何だかうれしそうにしているので、ちょっと乗ってやることにしよう。


「おおっ! さてはピリカさん、なんとかする当てがありそうだな?」


「まぁね~ ピリカ、ハルトのためなら何でもできるから! ちょっと見ててね!」


 ピリカはミスリル板をブロック塀に立てかけると、数歩下がってミスリル板に向き直る。


「ふぅぅ~っ、はあぁぁ~っ!」


 何やらどっかで見たことのある構えを見せている。


 あっ! あれだ!


 オタクならすぐにわかる。

某世紀末マンガ&アニメ&ゲームで出てくる、主人公のライバルキャラである黄金の将軍だ。

今のピリカは白金色に光っているから、シンパシーでもあるのだろうか?

多分、あれの無双ゲームをやっているときにでも見たのだろう。


 ピリカは両手を特に強く光らせながら、ご丁寧にその動きに残像の演出まで出している。

絶対、その振りは不要だろ!

……なんて野暮なツッコミはしない。

非常時でないなら、オタクにこの乗りは必要なのだ。

ピリカもだんだんわかってきたな。

何をわかってきたのかは知らないが……。


 巧妙に光の中に隠しているが多分、何らかの術式を展開している。


「とやぁっ!美利河 碑璃飛離拳(ピリカ ピリピリけん)!」


 おもむろにピリカが掛け声とともに両手から手刀を繰り出す。

すると、ミスリル板が縦横にパカッと割れて四等分になる。


 しっかりと白い光でピリカの前に【美利河 碑璃飛離拳】って漢字で文字のエフェクトまで出現させる念の入りようだ。

なんか世間一般的には残念な方向にピリカの感性が育っていってる気がするが、俺は全然OKである。


 なんかかわいいし……。


 それにしても、自分が使う魔法は言うに及ばず、自分自身に名前が無いことにすら頓着が無かった精霊のピリカが自分の振るう技に名前を付けるとは……。

ピリカの自我は、俺と出会ってしまったことで、何らかの変化が始まっているのだろうと感じた。


 しかし…… 美利河 碑璃飛離拳(ピリカ ピリピリけん)って……。


 ピリカのネーミングセンスは、俺に匹敵する残念さであることが露呈された。


 そして、その美利河 碑璃飛離拳(ピリカ ピリピリけん)の凄まじさが何よりも驚きだ。

ミスリルの板が日本刀で大根を切るレベルで四等分になっている。

(日本刀で大根切ったことないけどね)


 間違いないのは【プチピリカシールド】発動状態でも、俺には美利河 碑璃飛離拳(ピリカ ピリピリけん)を防ぐことはできないだろう。

厚さ20mmの水晶で出来た【プチピリカシールド】ですらこの拳法(魔法?)の前では紙切れと変わらないだろう。


 ラライエの人間がどれほどの強さなのかは知らないが、ここの人類バカじゃないの?


 ピリカは最強の精霊だと自称しているが、他の精霊だってピリカ程ではなくても隔絶した強さだろう。

数がどの位いるのかわからないが、こんな種族を相手に戦争って……正気を疑うよ。

ピリカは俺に認識してもらいたくて常時光っているが、通常状態の精霊は視認不可らしいからな。


 見方を変えれば敵に回せば圧倒的な強さを持ち、魔法攻撃か魔力(マナ)を付与した魔法金属による攻撃しか受け付けない暗殺者ともいえる。


 よく人類滅亡しなかったもんだ。

 次回、五十九話はの投下は一時間後、21:30頃を見込んでいます。

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右も左もわからないまま投稿を始めてみましたが、やってみてわかることって

やっぱりありますよね……。

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