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五十七話 あっ、ちょっと魔力(マナ)が減ったかな?

 翌日からピリカは家の前の道路にペタっと座り込んで、指先からレーザー的な光線を出してミスリルに術式を刻み込んでいく。

空間に光で術式を出現させるときは一瞬なのに、ずいぶんとゆっくりかつ慎重に見える。

俺が脳内PCに手書きで術式を書かせているときのスピードと大差ない。


 このペースなら確かに十日くらいかかりそうな気がしてきた。

何だかとても集中しているように見える。

邪魔をするわけにもいかず、俺は家の中に引っ込むことにする。


 さて、俺もこの機会に腰を据えて新魔法の開発に取り組んでみるかな。

着想自体はいくつか候補がある。

実際にやれるのかはトライ&エラーを繰り返していくしかない。

その検証(シミュレーション)を脳内PCで実行できることはものすごく大きい。

現実で実験を繰り返していたら、紙も時間も全然足りないし、暴走して爆発でもしようものなら命だっていくつあっても足りない。


 ここまでのチートをもってしても、一年かけて四つしか魔法は作り出せなかったのだ。

水を出したり、穴を掘ったりなんて魔法なら短時間かつローリスクで作ることは出来るのだが、まず紙が勿体ない。

紙は有限の資源なので無駄遣いは出来ない。

ピリカにお願いしてできることは、ピリカにやってもらうことにしているのだ。


 数量が有限の紙が安定的に手に入るまでは、俺自身の身を護ることに主眼を置いた魔法に力を注がざるを得ないという訳だ。

まずは実現可能そうな攻撃魔法を一つ増やしにかかりたい。

多分十日では無理だろうから、気長にやって行こう。


 結局、ピリカは十日間不眠不休でミスリルの前に座り込んでいた。

(もともとピリカは睡眠を必要としないけど)


 まだ魔法陣は完成していないが、ほぼほぼ出来上がっている。

ミスリル25枚分をほぼ使い切るように直径1.95mの魔法円が描かれており、内側には術式がびっしりと刻まれている。

多分、今日中には終わりそうな気がする。


 ちょっと覗き込んでパッと術式を見た感じではまず消費する魔力(マナ)の量が尋常ではない。

魔力(マナ)を変換して引き出すエネルギー総量もえげつない。

俺が地球にいた頃に住んでいた隣の県にあった火力発電所の発電量並みだ。

こんな術式使ってピリカは大丈夫なのだろうか?


 ピリカが普段使っている空間に光で描かれている物とは違い、これは金属に刻み込まれているので消えたりしないから、あとでじっくり確認して勉強させてもらおう。


 俺の理解が及ぶようなものだったらいいのだけれど……。


 そんなことを考えながら、少し遠めにピリカの作業を見ていると、ピリカが立ち上がってこっちに駆け寄ってくる。


「お待たせ、ハルト。終わったよ」


「おつかれさん! 十日間もぶっ通しで大変だったろ?」


 俺はピリカを労うように頭を撫でてやる…… 形だけだが……。

精霊であるピリカを俺の方から物理的に触れることはできない。


 それでもピリカは俺の気持ち察してか、表情を溶かして


「うえへへへ~~」


 とか言って、普段見せないデロデロの表情で喜んでいる。


「このくらい何でもないよ! ピリカ、ハルトのためだったら何だって出来ちゃうから」


「ちょっと術式見せてもらっていいか?」


「もちろんだよ」


 ピリカはポータルの転移陣に向かって歩き出す俺の腕にしがみついて、笑顔を咲かせて答える。

これでピリカの側からは俺に触れているらしい。

俺には全く触れられている感触は無いが……。

この不思議満点の異世界でも精霊は突き抜けて不思議な存在である。

さて、転移陣の前に座り込んでじっくりと術式を観察する。


 うん、ざっくり見ただけでは95%以上分からん。

これは時間をかけて、ピリカ先生に解説してもらいながら検証しないと、太刀打ちできないな。


「ピリカ、これさ…… えげつない量の魔力(マナ)をエネルギーに変換することだけはなんとなくわかるけどさ。こんなの使ってお前、大丈夫なのか?」


「うん、全然平気だよ。さすがに『あっ、ちょっと魔力(マナ)が減ったかな?』って感覚は出るかもしれないけどね」


「マジかぁ……」


 地味にピリカさん、累計だと結構な【マジかぁ】ポイント稼いでそうだな。

火力発電所一基分相当のエネルギーを創出させるほどの魔力(マナ)を消費してやっと【ちょっと減ったかな】レベルって…… どうなのよ?


「これってさ、俺たちが【どこでもない世界】から転移してきた時よりも、比べ物にならない量の魔力(マナ)を使ってるよな?」


「うん、あの時は魔力(マナ)が全然足りてなかったから、術式も徹底して魔力(マナ)効率重視だったからね。幸い、エーテルの量だけは困らなかったから何とかなったんだよ」


「なら、今回は何でこんなに魔力(マナ)バカ食いの術式にしたんだ?」


「ミスリルがあるからだよ。前にも言ったけどこれがあるとね、結構強気の術式でも発動できるの。これってピリカたちがここに来る時に使った転移陣の3500倍くらいの魔力(マナ)をつぎ込んでるけど暴走もせずに発動するんだよ。凄いでしょ?」


「ああ、凄いのは分かってるよ」

「その3500倍の魔力(マナ)は何のために必要なんだ?」


「一瞬で発動させるためだね。短時間で術式を最大出力にして空間を入れ替えるには、たくさんエネルギーが必要なの。ハルトがピンチの時に使うときがあるかもしれないでしょ? 前みたいに、発動するまでに3分もかかってたら、死んじゃうかもしれないじゃない」


「なるほど、理解した。それで、これが発動するまでにどのくらいかかるんだ?」


「千分の一秒くらいだね」


「まじかぁ……」


はい、ピリカさん本日【2マジかぁ】です。


 本日の投稿は以上です。

今日ブックマークをつけてくださった方、どうもありがとうございます!

あまり見向きもされていない駄文にも関わらず、興味を持っていただけてとても嬉しいです。

おかげさまで、投稿文字数は15万字を越えました。


 次回、五十八話の投下はこちらの都合で少し時間をずらします。

4月20日の20:30ぐらいを見込んでいます。

 ただ、社畜モードのリアルの影響を受けてしまった場合は遅延の可能性ありです。

すいません……。いずれにしても三話投稿は死守するつもりでいますので

よろしくお願いいたします。

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