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五十五話 これもゴミだね…… あっちにポーン!

「石ころ?」


 俺もピリカに続いて箱を覗き込んでみると、赤・青・緑の野球ボール大のガラス玉のような石が三つ収められている。

ただ、石が収まっている箱の中の繊細な(あつら)えや、二千年経っても劣化しないほどしっかりと作られたトラップの機構を考えると、この三つの石は宝石なんじゃないか?


 その組成は分からないけど、地球と同じ宝石だと仮定すればこれって【ルビー】【サファイア】【エメラルド】じゃないの?

宝石の鑑定なんてそれこそ素人だから分からんけど、この透明度で野球ボール大のデカさで三点セットって、地球に持ち込んだら値段つけられないほどの歴史的逸品だよな?


 まぁ、今の地球に市場経済原理が成立しているか怪しいので、これの価値は石ころと変わらん可能性もあるけどね。

こんな石ころよりも水・食料・武器弾薬の方がよっぽど価値があるかもしれない。


「これもゴミだね…… あっちにポーン!」


「!! 待ったぁ!」


 ピリカに昔に流行った、逆転弁護士並みの横槍を入れる。

危うく箱共々ピリカキックで瓦礫の山にドライブシュートされるところだった。

多分、石自体は砕けたりしないと思うが、この量の瓦礫に混ざるともう見つけられなくなるだろう。


「ん? ハルトはこの石ころ欲しいの?」


「正直わからないけど、ひょっとしたらゴミじゃないかもしれない。一応、持って帰るよ」


「これ、魔法金属でも魔石でもないから、ただの石ころだよ? ハルトが欲しいならいいけど」


 精霊のピリカにとっては、ルビーもエメラルドもサファイアも等しくただの石ころらしい。

何気に【魔石】とか異世界浪漫ワードが出てきたが、それはまた次の機会に聞こう。

俺はブルーシートを広げただけの【持って帰る物置き場】に積み上げられたミスリルの板に並べて宝箱ごと3つの【宝石かもしれない石】を置く。


 こんな調子で仕分けを続けること数時間……。


 ここが昔の精霊との戦争の前線基地跡らしく、まだ劣化していない剣やナイフが数本出てきた……が、それ以外はめぼしいものが出てこない。


 ピリカが言うにはまだ使えそうなやつは、全てミスリルを含む合金で作られているらしい。

人間や亜人が精霊相手に戦うには必須の武器ということだ。

魔法金属に魔力(マナ)を付与した武器でなければ精霊相手に武器攻撃は通じない。

俺自身、剣術はからっきしなのであまり必要としない武器だが、手入れさえすれば使える状態なので持って帰ることにする。


 いよいよ仕分けも大詰めとなり、最後は空間の一番奥の箱の一部が壊れたコンテナ大の大きな箱を残すのみ。

中をのぞいてみると殆どがゴミだが手前の方に数十枚のミスリルの板が転がっている。


「この前のワニ、これを(かじ)ったのか。」


「多分だけど、その辺にあった腐った魔物の死骸なんかに反応して(かじ)りついたんだよ」


「ピリカがそう言うんだったらそうなんだろうな」


 その真相はわからないが、ワニの胃袋から出てきたミスリルの出自がわかったので、少しスッキリした。

結局、ここでの戦利品はミスリルの板が124枚(+家にある1枚)、ミスリル合金の剣が三振り、同じくミスリル合金のナイフが12本、宝石かもしれない石セット、以上だった。

大漁なのか空振りなのか、これらの価値が不明なので判断が難しい。


 これで撤収にしよう。


 持ってきた資材も【持って帰る物置き場】にひとまとめにして、ピリカに転移陣を展開してもらう。


 ちなみにピリカが使っているこれ、生物は転移不可である。

植物は種類によっては、生きていてもいけるやつもあるそうだが……。

呼吸している、血液が循環している、臓器が常時動いている等の生命活動自体を行っているものは転移できないらしい。

強引に転移させると例外なく死ぬということで、この原理を応用した即死魔法なんてのもあるとピリカ先生が言っていた。


 恐るべしラライエの魔法。


 但し、この手の魔法は人間にとっては非常に大掛かりな儀式魔法になるらしいが……。

こんな魔法をさらっとこなしているあたり、ピリカのチートっぷりが凄まじかったりする。


 ちなみに俺が【どこでもない世界】からラライエに来た時に使われたものは全くの別物である。あれは今ピリカが使っている【物体転移】ではなく【空間転移】なのだ。


 この違いはものすごく大きい。

仕組みも違うが術式の規模もすごく差がある。

【空間転移】なら生きた人間も移動できるが、これはこれでかなりのリスクが付きまとう。


俺とピリカが【どこでもない世界】からラライエに来るのが命がけだったことが良い例である。


 これで撤収準備が整ったので、ピリカと二人帰路につく。

ちょっと長居しすぎたかな?

日が傾き始めている。


 家までは密林を徒歩でおよそ4.3kmだ。

これは日没までにたどり着けないかもな……。

ピリカと二人、帰路のジャングルに踏み入れる。


 我が家に着いた頃には、すっかり真っ暗になっていた。

幸いなことに、魔物の不意打ちを受けることも無く帰りついた。


 早速、家の前の道路に戦利品を転移してもらって、雨や夜露でやられると困るドローンなどの機械関連だけは倉庫に片付ける。


 かなり疲れていたので、あとの片づけは翌日に回すことにした。

今夜もピリカさんは音ゲーのようだ。

すでにテレビの前でコントローラを手にノリノリの謎ダンスモードに入っている。

見慣れてくると、あのダンスも何か洗練された素晴らしいダンスに見えてくるから不思議なものだ。

俺の代わりに充実したオタクライフを送れているようで、羨ましい限りである。

 次回、五十六話の投下は1時間後、4月19日の22:30頃を見込んでいます。

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