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五十四話 でも、やはりお約束はあったみたいだな。

「戦争したんだよ。……2000年くらい前に、ピリカたち精霊とね……。きっとここは前線基地の一つだったんじゃないかな? ピリカはこんな森で戦っていなかったから分からないけど」


「!!…… マジかぁ。だから、ピリカは人間が危ないって言ったのか」


「そうだね、今の人間や亜人たちは自分たちに従わない精霊は討伐対象……。魔物と同じ扱いをしてくるからね」


「それは確かに人間と会いたくなくなるわな」


 これは、俺もラライエの人間との接し方を考えないといけないかもな。

精霊であるピリカを家族として寄り添い、共存している俺はラライエの人間達から敵視されるかもしれない。


 全ての人骨をリヤカーに乗せ、洞窟の外に運び出すと俺はスコップでせっせと穴を掘る。

ピリカに頼めば一瞬だが、かつて命のやり取りをしたかもしれない相手の埋葬を手伝わせるのも何だか違う気がしたのだ。

子供一人での土木作業にはやはり限界がある。

【ブレイクスルー】を使えば、身体能力を大幅に向上させてもっと早くやれるのだが、あとでピリカに治癒術式を使ってもらわないと動けなくなってしまう。

間接的にピリカの手を借りることになる気がして、この人骨の埋葬は俺一人で全てやり切ることに決めた。


 全ての骨を埋めて瓦礫の中から1mほどの木板を切り出して墓標代わりに立てかける。

板の表面に、家にあったプラモデル用のアクリル塗料で【二千年前の戦士たちここに眠る】とラライエ第一共通語で書いておいてやった。


 ここまで終わった時にはもう夕方に差し掛かっていた。

今日はここまでのようだな。


 転移させた道具類は洞窟を少し入ったところに全て放り込んで、再びピリカに入口を岩塊で塞いでもらう。


「さて、今日はもう帰ろう。続きはまた明日だ」



 8月18日


 子ワニとの戦闘があった初日を含めると、洞窟の調査三日目だ。

今日は資材の準備もなく、朝食後すぐに出発できたため、昨日よりずっと早い時間に洞窟に到着した。


 さて、今日から本格調査だ。

役に立つようなものが見つかるといいんだけどな。


 洞窟の最深部の空間に散乱しているもので明らかに瓦礫・ゴミと判断できるものは端の方に一纏めにしてしまう。

俺の力で動かせそうにないような重量物は【ピリカキック】で強引に端っこに蹴り飛ばしてもらった。

最終的に残った木箱や棚、宝箱的なものなどを一つずつ確認していく。


「さてさて、何が出るかな……っと」


 俺は自分の背丈ほどの大きさの木箱の蓋をバールでこじあける。

トラップがあったりしたら嫌なので、気休めでも【プチピリカシールド】を発動させておく。

残念ながら俺に【罠解除】的なスキルは無い。

覚悟を決めてこじ開けるしかない。


 最初の箱の中身は、全て服だった。

昨日埋葬した白骨が身に着けていたのと同じもののようだ。

すでに二千年以上たっているので劣化していて、手に取ったただけで崩れてしまう。


「風化が酷いな……。とても使えそうにない」


「じゃ、これはゴミだね。えいっ!」


 ピリカが一つ目の箱を端に蹴り飛ばす。


「次、行ってみようか」


 二つ目の箱も同じようにバールでこじ開けて中を覗き込む。

中身は正方形の金属板が結構な数量で収まっていた。


「お、これって……」


「ミスリルだよ! やったね!」


 ピリカが魔法金属の発見に嬉しそうにしている。

結構な枚数があるな。

アニメやゲームのオタク視点で言えば、ほぼ全ての作品でそこそこのレア素材だ。

こいつは当然全て頂いていくが、ミスリルはまだ他にもあるはずだ。


 何せワニの腹の中から出てきたんだ。

この箱は未開封だし、ラライエワニがこの箱から一枚だけ取り出して飲み込んだ上、密閉しなおしたなんてことはあり得ないだろう。


 他にもワニが飲み込むきっかけになったミスリルがあるんじゃないかと思っている。

次に、見るからに宝箱的な見た目の木箱ががれきから出てきた。


「こういうのって、トラップがついていたりするのがお約束だったりするよな」


「地球ではそういうものかもだけど、ここは昔前線基地だった場所だよ。味方が使うための物資を保管する箱に罠仕掛けるようなマネ、普通はしないよね」


 ピリカがまさかのド正論を披露して、宝箱のような木箱の蓋に手をかけると


「よいしょっと」


 掛け声と共に箱を空ける。


 次の瞬間、ピュンッ!っと風を切る音がしたかと思うと、俺の喉笛の真正面で【プチピリカシールド】が発動して何かを弾き飛ばした。


「なっ!」


 カランと音を立てて地面に転がったのは鋭利な木製の矢だ。

宝箱を開けた瞬間に発射され、光で出来たピリカの体をすり抜けて、俺の喉笛へ一直線に飛んできたようだ。


「あ、あれ?」


 物理干渉を一切受け付けない精霊のピリカは当然、ノーダメージだ。


「今のは【プチピリカシールド】が無かったら、何が起こったかも理解できずに死んでたな」


「ハルト、大丈夫?ごめんね。ピリカのせいで……」


 ピリカは泣きそうな顔で俺のところに駆け寄ってくる。


「ああ、大丈夫だから気にしなくていい。でも、やはりお約束はあったみたいだな。」


 それにしても、全く手入れもされていない二千年前の仕込みが風化もせずにしっかりと発動するとはな。

そのことに驚くべきかもしれない。


「さて、ここまで厳重に守られていたって事は、中身も期待できるんじゃないか? ピリカ、何が入ってる?」


「えっとね、石ころが三つだよ」


 箱の中を覗き込んでいたピリカが興味なさげにそんなことを言う。


 本日の投稿は以上です。

次回、五十五話の投下は明日、4月19日の21:30頃を見込んでいます。


 このペースで投稿を続けるとストックがあと10日持ちません。

何とか月内はストックを持たせたいので、可能な限り書き足搔きます。

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