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五十一話 やった! ダンジョン! ダンジョンだよ!

 こんな人っ子一人いない異世界のジャングルで四年近く暮らしていると、スローライフと引きこもりオタクライフは決してイコールではないことを改めて実感する。

引きこもりオタクライフは人間社会の中でしか成立し得ない。

しかも、不労状態で成り立たせられるだけの経済力のある奴だけが、実現できうる生活なのだから、引きオタニートは見方によっては勝ち組職業と言えなくもない。


 とにかく、ラライエの文明社会がどんなものなのか一度は見てみたい。

引き込もり生活が成立しうる文明社会なのかは重要だ。

残念ながら、今の状況はサバイバルに寄りすぎて、スローライフですらないことは認めざるを得ない。


 いやね、ピリカから冒険者なる連中がいることは聞いている。

それにこの子が何の違和感もなく世界設定を受け入れて、地球のファンタジー系RPGを遊んでいるところを見ると、ラライエの文明社会のあり様はなんとなく察しは付いているけど……。


 多分、ひたすら東に30km進み続けて川に到達して、そこから川に沿って下流に進み続ければ、何らかの文明圏にたどり着ける可能性は高いとは思うが……。


 だが、下手すればアマゾン以上かもしれない密林を今の俺とピリカの二人だけで踏破するのは、やはりリスクが高い。

戦力と水の補給はピリカがいれば何とかなるだろうが、持ち運べる食料は数日分が限界だし、装備やその他消耗品だって携行できる物量には限度がある。


 輸送能力不足を補うのに、駐車場の自動車を使うのはそもそも論外である。

こんな密林を走破できる四輪車は地球のどこを探したってない。

自分の足で密林から脱出するしかない以上、補給の問題を解決するあてが絶対に必要だ。


 そんなことを考えながら密林を進む。


 現在地は家から4.3km東に踏み入ったあたりだ。

この辺りは少し標高が高い。

相変わらず全方位密林なので分かりにくいが、丘のようになっている。


「あっ、ハルトあれ!」


 ピリカが指さす方向に視線を移すと、丘の麓に横穴が開いているように見える。

40年以上前に一世を風靡した、探検隊番組で出てきそうな雰囲気を醸し出している。

いびつながら、高さ3mを少し超えるくらい大きさの穴が口を開けている。

深い緑のツタ植物が上部からデローンとたれさがっていて、内部は漆黒の闇で様子を伺うことはできない。


「ついに? やっと? なんかそれっぽいの出てきたよな」


「やった! ダンジョン! ダンジョンだよ! ハルト!」


「え? これってダンジョンなのか? ……ってかラライエにダンジョンの概念があるんだな。ダンジョンコアとかがあって、レアアイテムがザクザクとか? コアを支配下に置いてダンジョンマスターになれたりとか?」


「ん? ピリカが知る限りそんなの無いよ。テレビゲームにあったからそんな気分なだけだよ」



ぐはぁっ!



 まさか、ピリカに現実を突き付けられてバッサリ切り捨てられるとは……。

全く予想してなかった。


 つまるところ、これは何らかの理由で自然に丘に出来た横穴。

いわゆる洞窟であってそれ以上でもそれ以下でもないと……。

そういうことですか。


 まぁ、折角発見した洞窟だ。

様子くらい見て帰りたい。


「じゃぁ、ちょっと偵察してみようかね」


 俺はリュックから小型ドローンを取り出して、フル充電状態のバッテリーに交換する。


「この手の洞窟はカメラマンと照明さんの後に入るのがお約束なんだけど、ラライエにはどっちもいないからな。まずはドローンに見てきてもらおうかなっと」


「そうなんだ。さすがハルト! 物知りだね」


 ピリカさん、このネタ……絶対にわかってないだろ?

俺は洞窟に5mほど踏み込んで、ドローンを暗視モードで起動すると、脳内PCでドローンの遠隔操作を開始する。


 電波の届く範囲でしかコントロールできないが、魔物が住んでいたりしていきなり襲われたらたまったものじゃない。

たとえ数十メートルでも先行偵察できればそのアドバンテージは大きい。

ドローンは俺の手を離れて洞窟の奥へと進んでいく。


 ドローンに搭載された暗視カメラからの映像が脳内PCに送られてくる。

今のところ特に変わった様子はない。


「地球のお約束だと、何かで磨いたようなピカピカの白骨が転がっていたりするんだけどな」


「へぇ。誰が白骨なんかをピカピカになるまで磨くんだろうね……。おもしろいね」


 俺はピリカさんのリアクションの方がおもしろいがそれは言わない。

そんな会話をしていると洞窟の風景に目に見えて分かる変化が出てきた。

洞窟の壁面と天井に補強が施されている。

明らかに人工物だ。

崩落事故防止のためだろうか?


「これは予想外だ。この洞窟、人の手が入ってるぞ」


「えっ? 人間がいるの? なんかやだな」


ピリカはあからさまに嫌そうな表情をしている。

そんなに人間嫌いか?


「とにかくもう少し調べてみよう。……行くぞ」


このまま入口付近にいては電波が届かなくなってドローンが操作できなくなりそうだ。

さらに深いところまでドローンに偵察させるために、俺はピリカを伴って補強されている場所まで進んで、ドローンには更に先行させる。


 ピリカ自身がプラチナ色に光っているので、ピリカがいる限り明かりの心配は不要だ。

ドローンは更に奥に向かって進んでやがて広くくりぬかれた空間に出る。

俺の家の敷地くらいはありそうだから約200坪くらいか。

天井の高さは…… 5mは無いな。

ドローンの測量では約4.5mか。

相当広いな。

この空間が最深部のようだ。


 最深部の空間には壊れた椅子や机、棚、木箱などが散乱しており、かなり荒らされた様子で散らかっている。

そういった散乱物の中に人間の物だろうか?

相当数の白骨も散乱している。

くすんで劣化が進んでいてピカピカに磨かれてはいないが……。


 専門知識が無くてよくわからないが、部屋全体の劣化具合から数十年、下手したら百年以上この状況で放置されていたのではないだろうか?


 空間のほぼ中央に到達して内部の全周囲撮影を続けるドローンの映像に何か横切る物体が映り込んだ。

物が散乱し過ぎていてよくわからなかったが確かに何かが動いた。


「なんだ? 何かいるな」


 俺はポーチから呪紋を書いたカードを数枚取り出して、すぐに使えるように準備すると同時に【プチピリカシールド】を発動させる。

こんな状況で出し惜しみは一切しない。


「え? 人間がいるの? 気を付けてね?」


「いや、少なくとも人間じゃないな」


 ドローンのカメラをさっき何かが横切って行った方向に向ける。

そこに映ったのは。


「うわ…… マジかぁ……」


 最近、俺の中でトレンドの【マジかぁ】が出てしまった。

俺はポーチからスマホを取り出して、ドローンが送ってきている映像を脳内PC経由でスマホに転送する。

 異世界ではもちろん通話はできない。

スマホの用途はもっぱら脳内PCで出力した音声や映像を屋外でピリカと共有するために使われている。

スマホの画面に映し出されているのは、ワニである。

しかも数が半端ではない。

画面内で走り回っている分だけでも15匹はいる。


 但し、大きさは50cm程度のもので、大きいものでも1mを超えている個体はいない。

突然、侵入してきたドローンに驚いて混乱しているのだろうか?

あちこちワニだらけである。

 本日の投稿は以上です。

次回、五十二話の投下は明日、4月17日の21:30頃を見込んでいます。


 とりあえず、折れずにここまで投稿を続けることができました。

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 今後ともよろしくお願いいたします。

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