四十八話 知られても平気だからいいの!
これはヤバい。ピリカさんにも【1マジかぁ】進呈だ。
もし地球でこれがお気軽にできるなら、俺は物流王として天下を取る自信がある。
いろいろなパワーバランスがひっくり返る禁断の果実だ。
やっぱり、ラライエと地球は絶対に接点を持ってはいけない。
特に魔法の力は地球人がお気軽に手にしていいものではない。
決して俺は地球に帰るわけにはいかないな。
地球のためにも、俺自身のためにも……。
「今の転移術式ってのは、ラライエの人間も良く使っていたりするのか?」
「よくは使ってないよ。人間が使うときは魔力が足りないから集団魔法になるし、補助の術式も必要になるからね。精霊か一握りのエルフか魔族なら一人でやれるかもだね」
「なるほど…… これはラライエでもチートだということはわかったよ。それはひとまず置いておいて、これを解体するか」
とはいうものの、これは途方に暮れるな。
10トン以上って…… 俺一人で何年分あるんだよ?
解体する前から心が折れそうだ。
「むぅ。とにかくとりかかろう」
さすがに脳内PCにもワニの解体方法のデータは無かった。
地球のネットにつながるのなら検索もできるのだろうが、俺が地球にいた時に収集していた物しかないので、こればかりはどうしようもない。
仕方が無いので、他のジビエ解体と同じようにやるか……。
とりあえず、腹を開いて食用に適さなさそうな臓器や、意味不明の器官は全て取り除くことにする。
これだけでもものすごい重労働だ。
すぐに廃棄する臓器類でリヤカーが満タンになる。
放置するのは衛生的に深刻な問題が発生しかねないので、結界の外まで捨てに行く。
結界を出て50mほど離れた場所にピリカの魔法で穴を掘ってもらって、次々に要らない部位を投棄していく。
さすがにあれだけデカいワニだと、捨てる部位ですら一回の運搬では運びきれないので、何往復もすることになる。
解体を進めていく中で、ワニの胃袋を開くとその中はゴミと骨だらけだ。
ヘドロのような堆積物にまみれて何の骨なのかも分からない。
「うえぇ、こんなのには耐性無いんだけどな」
たまに、ナイフや衣服の残骸のようなものも出てくる。
「なぁ、ピリカ。これって人間の物なのか?」
「う~ん、わかんない。でもこの森で一回も人間に会ってないから、ゴブリンのじゃない?」
「そっか、その割にはいいナイフに思えるけどな」
今まで遭遇してきた武器を携行している魔物が使っているものは、かなりお粗末な物が多かった。
しかし、このナイフは装飾などの仕上げは魔物が使っていた物より良いように見えた。
まぁ、刀身自体は胃液や水にさらされて、腐食や錆が酷く使い物になりそうにないのだが。
俺はナイフをリヤカーに放り込んで、胃袋の中身を掻き出す作業を再開するためにドロドロの中に手を突っ込んだ時、大きく硬いものが触れる感覚があった。
「んっ? なんだこれ?」
ドロドロの中から引っ張り出したのは一辺40㎝くらいの正方形の金属板だ。
ただ、金属にしては相当軽い。
確実にアルミ以上の軽さだ。
これがもし鉄なんかだと片手でこんなに軽々と持ち上がったりしない。
少し気になったので、ピリカに水を出してもらって洗ってみる。
外見的にはやはりアルミのような金属板だ。
正方形に整えられているし、精密な検査は出来ないが、目視では表面は凹凸も無い完全な平面だ。
さっきまでのナイフなんかと違って腐食や錆もなさそうだ。
明らかに高い技術で形成された人工物だと分かる。
「あっ! これってもしかして……」
「!! ピリ電、知っているのか?」
「ん?」
ピリカはいつものふわふわ表情でこてんと首を傾ける。
狙ってやっていないところが時折、凄まじい破壊力を生み出す。
確かにピリカにはこのネタはまだ早かったようだ。
何に対して早いのかは知らないが……。
「えっと、ピリカはこれが何か知っているということかな?」
「きっとこれ、精錬済みのミスリルだよ」
ミスリルと来たか。
オタクにとってはロマンあふれるワードだな。
確かに金属でこの軽さは地球じゃお目にかかれないかもしれない。
何も知らずに『金属のように見えるが実はこれ、アクリル板なんだぜ』なんて言われたら納得しそうだ。
「なんか前に、魔力の親和性が高いとか言ってたよな」
「そうだね、これに術式書き込んで使っても消失しないから繰り返し使えるよ。ミスリルで作られた武器に魔力を込めて攻撃されたらピリカでも死んじゃうかも……」
「そんな簡単に自分の弱点晒しちゃダメだろ」
ピリカの事だからどうせ【ハルトにならいいの!】的なことを言うのだろうけど一応、釘を刺しておくことにする。
「ハルトには知られても平気だからいいの!」
ほらね。
「それに、ラライエの冒険者が精霊と戦うときは、魔法と魔法金属の武器は絶対使ってくるから今更だよ」
「え? 精霊って人間と敵対しているのか? 前から【人間は危ない】みたいなことは言ってたけど……」
「あんまり仲良しとは言えないね。別にピリカたちは人間とケンカしたかったわけじゃないんだけど」
「そっか、俺も人間なのに大丈夫なのか?」
「ハルトは特別だもん! ずっと一緒!」
「まぁ、そうだよな。気がついたら三年以上、共同生活してるもんな……。家族同然どころか、俺にとってもピリカはもう家族だ」
「うえへへへ」
ピリカさん、顔の筋肉が緩みすぎだぞ。
精霊であるピリカが俺といることで一体何が満たされるのかは、言葉で聞いても人間である俺には完全に理解することはできないのだろう。
それでも、最近はピリカがそれで納得しているのなら別にいいか…… と思うようにしている。
俺にしてみれば、何の見返りもないのに、ここまでしてくれるピリカの事を悪く思う要素は微塵もない。
人間と精霊という壁がある以上、俺がピリカに抱いているものは、恋愛感情とは明らかに別種の家族愛と言っても差し支えの無いものだが、そういった愛であったとしても俺のピリカに対する好感度はとっくにMAXになっている。
ピリカがラライエの人間と敵対しているというのなら、俺も別にラライエでは人類の敵であっても構わないかな。
……と、思うくらいにはピリカを信頼している。
本日の投稿はここまでです。
次回、四十九話の投下は明日、4月17日の21:30ぐらいを見込んでいます。
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