表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/255

三十二話 じゃぁ、俺はあれだな……

 覚悟を決めて、デカネズミステーキにかぶりついた。


 口の中に広がるその味に俺は……。



 ……。

    ……。



「ぶっふぁぁっ! うをおぉえぇっ!」


 盛大に吹いた後に、盛大に吐いた。


 な、なんだこれ?

あり得ない!

濃厚なドブの味がする……。

ドブの堆積物なんて食べたことないけど……。


 これは……。


 絶対に口にしてはいけないものだ!


 全身の細胞が、これを食べるのを拒絶する。


「ピリカ…… これはダメだ。これを食べたら…… 俺は間違いなく死ぬ」


 ひとしきり吐いた後、ペットボトルの水をラッパ飲みする。


「これは食べちゃダメなの?」


「ああ、少なくとも人間は食べちゃダメだな。外に捨てに行こう」


「うん、わかった……」


 ピリカは少し残念そうだ。

いや、そんな顔しても絶対にもう食べないからな。


 俺は、倉庫から折り畳み式のリヤカーを出してきて組み立てる。

この大きさの死骸になると、小型のリヤカーでは一回で運べそうにない。


 やむを得ず、解体して何回かに分けて運ぶことにする。

家から50mほど離れた昨日切り開いた場所に、デカネズミの死体をすべて捨てた。


 絶対に家の敷地内に放置はしておけない。


 こいつの血の匂いが、更に危険な魔物を引き寄せるかもしれないからだ。

とはいえ、焼却するのも燃料が勿体ない。

とりあえず、離れた場所に捨てておくことにする。


 ひとまずこれで落ち着いた。

もう、日が傾いてきたので家に入ってピリカに色々と話を聞くことにする。


「さて、ここがラライエなのは間違いないんだな?」


「うん、そうだね、ここはラライエ。ピリカのいた世界だよ」


「そうか、じゃあここはラライエのどの辺りだかわかるか?」


「さすがにそれは分からないよ。ピリカも起きたばかりだもん。こんな森、ラライエにはいくらでもあるからね」


「なるほど……。じゃぁ、俺が出くわしたデカネズミだけど……。ラライエにはあんなのはうじゃうじゃいるのか?」


「うじゃうじゃいるね」


「そうだと思ったよ……。じゃ、あれはラライエの人間にとってもかなり危険な生物だよな?」


「うーん、普通の人間にはそうかな? でも、人間や亜人の冒険者たちで、あれに負ける人はさすがにいないよ」


 ここでニューワード出現だ。

オタクの俺には馴染みのある言葉だが……。

【亜人】に【冒険者】か……。

きっと、お約束の聞いた通りの言葉だろう。


 それよりも気になるのは【冒険者であれに負ける人はさすがにいない】だ。

どうやってラライエの冒険者はあれを容易く倒すのだろうか?

ピリカのように魔法を駆使するのか?

気になるところではある。


 そして、俺はデカネズミに全く歯が立たなかった。

つまり、ラライエでは一般人レベルであることが確定してしまったか。


「じゃぁ、俺はあれだな……。ラライエでは最弱に近い立ち位置という訳だ。これでも古流拳法の有段者なのに…… ちょっとへこむな」


 最悪、俺の武器は脳内PCだけになるかもしれない。

魔物だらけかもしれないこのジャングルで?


 マジかぁ……。


「心配ないよ。ハルトはピリカが護るよ! ピリカはラライエじゃ、ほとんど最強だから!」


「え? マジで?」


「うん! マジで」


 ピリカは変わらず、ふわっとした雰囲気で微笑んでいる。


 確かに、デカネズミは瞬殺だったが……。

どこまで本当なのかはよくわからないな。

今は話半分くらいに聞いておこう。


「それは頼もしいな。なら、食料集めはピリカにも付いてきてもらうとして……」


「うん、任せてよ!」


「この家をどうやって守るか……だな。寝てる間とか、留守の間に魔物に壊されたりしたら防ぎようが無い」


「じゃぁ、このおうちは結界張っておこうよ! それで大丈夫だから」


 なんか対策があるらしい。

俺はこの世界のことは全くわからない。

ここはピリカにお任せで良いだろう。


「なら頼むよ。拠点確保は全ての基本だからな」


 ピリカは、俺に頼られるだけで嬉しいらしい。


「はーい! えっと…… 魔力障壁と認識阻害で充分かな」


 ピリカが空に大きな魔方陣を出現させる。

家とその周辺、元【ピリカの世界】だった領域が、薄い光の壁のようなもので覆われた。


「これでもう大丈夫だよ! ピリカとハルト以外は通り抜けられないから。バハムートの熱線ブレスでも破れないからね」


 ピリカの背後に【どやぁ!】ってエフェクトが見えそうだ。


 さすがに地球でもバハムートが出現した。……という話は聞かない。

どんなゲームやアニメでも、バハムート言えば、地形が変わるほどの攻撃力もってたりするぞ。

多分、ラライエでも相当なものなのだろう。


 ピリカ、俺が何も知らないと思って大きく出たな。


「それは頼もしい限りだ。これでもう安心だな」


 一応、ピリカに合わせておいてやろう。


「うん! これでずっとハルトと一緒だね」


 ピリカは嬉しそうに俺に抱き着いてくる。

相変わらず、俺には何の感触もない……。

そして俺からピリカに触れることはできない。


 本当に存在自体が不思議な子だ。


 とにかく、今日はゆっくり休もう。


 デカネズミと戦って疲れているし、大怪我した上に急速回復している。

さらには、あり得ない味のデカネズミステーキを食べる羽目になった。

変な副作用が出たり、体調に変調をきたしてもいけない。


 明日からはピリカ同伴で、食料と飲料水の確保を頑張らねば……。

そんなことを考えながら、俺は眠りに落ちていった。

 次回、三十三話の投下は今から1時時間後。4月11日の23:30頃を見込んでいます。

今日で10万字超えるかな?……と思っていましたが、ちょっと届きませんでした。


 明日で十万字突破ですね。


 なろうの都市伝説である十万字ブーストってホントにあるんでしょうか?

せっかく投稿しているので形はどうあれ、たくさんの人に見てもらえたら

嬉しいです。

 そのためにもブックマークと評価ポイントつけていただけると嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ