表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/255

二十八話 いや、おかしいでしょ!

5月4日


 今日から周辺の状況確認だ。

これには一つ有効な手立てがある。

倉庫から空撮用のドローンを一機取り出してきた。

仕事で空撮が出来ると便利な局面があったので、ドローンを購入したわけだ。

これが使っているうちに、なんだか楽しくなってきてしまった。

好きが高じていろいろ買い集めてしまって、気がついたら保有ドローンは七機になっていた。


 出してきたのは、その中でも比較的稼働時間が長い大型のものだ。


 こいつを日本で飛ばすにはいろいろ手続きが面倒な上、無線系の国家資格も必要(もちろん俺は持っている)だ。

だが、ここでは【そんなの関係ねぇ】である!


 異世界万歳!


 全周囲森に囲まれているので、実際のところはよくわからない…… が、今日は雲の動きも殆ど無さげだ。

上空の風はあまり吹いていないような気がする。


 ドローンはとにかく強風に弱い。


 少し賭けの要素もあるが、今ならいけそうだ。

俺はドローンを起動して目標高度を70mに設定する。


 脳内PCからコマンドを投入して、垂直に上昇を開始させる。

ドローンは駆動音と共に、命令通り垂直上昇を続ける。


 少しして、目標高度の70mに達したドローンは空撮を開始する。

その場で360度全周囲撮影を行い、そのままゆっくりと降下を開始。


 やがて、俺の足元に着陸してアイドリング状態となる。

俺はドローンを拾い上げた。

脳内PCのBluetoothでドローンが撮影した映像データを吸い上げ、ドローンの電源を落とす。

本体からバッテリーを取り出して充電、ドローン本体を片付けて映像データを再生する。


 ドローンが持ち帰った映像に俺は言葉を失った。

写っていたのは…… 眼下に広がるただただ緑の絨毯であった。


「……うわぁ。これぞ異世界」


 映し出されたのは、果てしなく広がる木々で覆われた緑一色の大地だ。

これが全部ジャングルだとすると相当なものである。

そして驚いたのが、所々に映り込んでくる巨木だ。


 ドローンの撮影高度は70mだ。

にもかかわらず、更にその上に向かって伸びている木がちらほらと存在している。


 比較的近いところにある木は、てっぺんが見えない。

なので実際どのくらいの高さがあるのか伺い知ることができない。

だが、遠方に見える木はその全体が映っている。


 見通し距離が地球と同じだと仮定して、脳内PCでざっくりと計算する。

すると、高さは200m~500mを少し超えるものまで様々である。


 つまり大きいものだと、東京スカイツリーに匹敵しそうな勢いだ。


 確か、地球で最も高い木で大体120mぐらいだったはず。

それを優に超える木が、見える範囲だけでもこれだけあるとは……。


「これは凄いな。よく自重で倒れたりしないもんだ」


 さらに、空撮の画像から判断できること……。

今いる場所から人工物らしきものは全く確認できないこと。

そして、飲料水を調達するための川や池、湖らしきものも徒歩で移動可能の範囲内には無さそうだということだ。

よく見ると東の視界の端の方に、川らしき物が見えなくもの無いのだが……。

(ラライエの太陽の動きが地球と同じとみなし、川のある方を東と暫定的に決めた。)


 この高度70mから地平線ギリギリに映っている川らしき物……。

これはここから約30km離れていることになる。

ラライエの大きさが地球と同一…… という仮定のものでだけどな。


 アスファルトでしっかりと整備された日本なら、頑張れば30kmは一日で歩ける距離だ。

……が、異世界、かつ人の手が全く入っていないジャングルを一人で30km進む。

これはただの自殺行為である。

無事にここまで戻ってこられる気が全くしない。


 最後に一つ、見落としそうになったものが映像に映り込んでいた。

いや…… あまりにも認めたくなくって脳や深層心理的な何かが、これをわざと見落とすように仕向けたのかもしれない。

しかし、この存在を気付かないふりをするのは、破滅フラグな気がする。


 数年前から地球に現れていた魔物のおかげで、常識の感覚が崩れているせいだろう。

ギリギリのところで、これの存在をなんとか肯定することができた。


 もう少し、異世界アニメや異世界ラノベ主人公寄りに頭がおめでたかったら

【まじで異世界だ! ひゃっほぅ!】

と、素直に喜べたのかもしれないが……。


 映像にほんの数秒だが、雲をバックに鳥の形をした影が飛んでいるのが映っていたのだ。

いやね、別にこんな密林なんだから鳥くらい飛んでるでしょう。

……とはいかなかった。


 意を決して、脳内PCの映像を一時停止。

拡大してその鳥を確認する。

何度確認しても、写っているのは間違いなく鳥であった。

鷹やトンビのような猛禽系だろうか……。


 問題はその大きさだ。


 脳内PCで色々前提条件を変えて、再計算しても結果は大きく変わらない。

計算条件を甘くして小さく見積もっても、両翼を広げた状態で30m以上はある。


 いや、おかしいでしょ!


 あんな大きさの鳥が翼の羽ばたきだけで200m以上の高度をさ!

時速、約250kmで飛行しているなんて……。

自衛隊の輸送ヘリとほとんど変わらないスペックだよ?


 あれが自然界の生物として成立していいの?


 この時、俺は一つ確信した。

証拠はまだないが、地球に現れている魔物の出所はきっとこの【ラライエ】だ。


 地球で暴れている魔物の中には、この手の生物としてあり得ない、トンデモ能力を持っているものが結構いた。


 例えば、日本で初めて現れたミノタウロス。

巨大な両手持ちの斧、あれが鉄製であったとすると、その重量は200kgを下回ることはない。

ミノタウロスの身長が3m強程あったはずだ。

その体格をもってしても、あれを軽々と振り回せるなんてありえない。

あの斧を振り回すときに発生する遠心力を考慮すれば、ミノタウロスの筋肉や関節が耐えられるはずが無いのだ。


 しかも、体当たりで警官数名を30m以上吹き飛ばす衝撃がどのくらいなのか……。

一度物理エンジンで計算してみてた。


 もう、牛乳吹くしかなかった……。


 あの鳥……。


 ひとまず、オタク的に思い当たる近い存在から【ガルーダ】と呼称しよう。

大きさと体格から見ても、ミノタウロスが問題にならないほどの、隔絶した強さであることは想像に難くない。


 あの体を維持するのに、一日にどのくらいの餌を必要とするのか……。

あれが生活できるだけの十分な餌が、この密林には存在しているということだろうな。


 多分、牛とかヒグマとかトラみたいなのが、一日に何頭もガルーダの胃袋に消えていくと思われ……。

となると、俺はガルーダが餌にしている生物にすら、歯が立たないことが予想される。


 某、ひと狩りするゲームだと単身で30m以上の鳥を相手に狩ったり、捕まえたりできちゃうわけだが……。


 俺の見解……。


 リアルでは絶対に無理である。


 見つかったら、5秒であれの餌になる自信が俺にはある。

多分、手元にマシンガンとかアサルトライフルなどの銃器があっても、どうにもならないだろうな。


 結論。


 俺の置かれている状況は予想以上に危険である。

ラライエに転移して4日経つが、よく、今まで無事だったと今になって改めて思う


 すいません、私的事情で投稿時間を一時間繰り上げています。

次回二十九話の投下は今から1時間後、4月10日の21:30頃を見込んでいます。

ホントにお願いいたします。ブックマークだけでもつけてくださるとうれしいです。

ここ数日、ブクマと評価がビクともしてないので、ちょっと不安になってきました。

ぜひともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ