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二百二十七話 どうするのが正解なんだ?

 ガル爺の埋葬を終わらせた後、皆それぞれの役目があるため、これにて一旦解散になった。

オルタンシアさん達と騎士団の面々は、シュルクの脅威が無くなったことを報告するために王都に戻る。


「それではアルエット様の事、よろしくお願いいたします。連盟のお役目が無ければ私がお(そば)について差し上げられるのですが……」


「安心して任せてくれて大丈夫だよ。後のことはガル爺にも頼まれているからね。僕にできる限りのことはさせてもらうよ」


「アルエット様、どうかお気を落とさずに……。 私も出来うる限りお力添えさせていただきますので」


「うん。ありがとうね」


 ぼそぼそと喉の奥で呟くようにアルが返事を返した。

オルタンシアさんは優しく微笑んでアルの両肩に数秒手を置いて、それから姿勢を正してこちらに向き直った。

そして、気持ち深い目に頭を下げてから馬車に乗り込んだ。

全員が乗った事を確認すると馬車はすぐに出発した。


 騎士達や他の連盟職員たちも次々と出発していく。

まぁ皆、一刻も早く自分たちの所属組織にここで知った事を報告しないといかんだろうし……。

それからシュルクを迎え撃つために掛けた動員も解除しなきゃだしな……。


 俺達もいつまでもここに居たって仕方がない。

一旦、エーレに戻るための支度に取り掛かることにする。


 アルはずっと沈みっぱなしだ。

俺のようなコミュ障にはアルに掛ける言葉が見つからない。

ギャルゲーのプレイヤーなんかだと、気の利いたセリフの選択肢が三つぐらい現れるのだろうが……。

今は余計な事はせずにそっとしておいてやるのが良いのだろうか?

こんな時、脳内PCは台詞の選択肢を表示してくれはしない。

当然だけどな。



……。


  ……。


「アル、準備が出来たぞ。とにかく、エーレに戻ろう」


 アルは静かに頷いてボル車の荷台に乗り込んだ。

やっぱり相当に参ってるよな。

俺だって両親が病気で余命宣告を受けた時は覚悟もしたが、それでも親がいなくなったときはかなり(こた)えたものだ。

突然、こんな形で唯一の肉親を失ったアルの心中はいかばかりのものだろうか。


 俺達の準備も完了した。

御者台のヴィノンがボル車を出発させる。



  ……。


   ……。



 8月16日


 異世界に来て七回目のお盆が過ぎた。

地球にある我が家の墓には俺の名前も刻まれちゃったりしてるのだろうな……。

それとも、まだ死んだことになってなかったりして……。

俺がいた頃でさえ、日本もかなり混沌としていたからな。

もはや、まともな行政手続きも出来ていないかもしれない。

今、そんなことを気にしてもどうにもならんのはわかっちゃいるけど、たまにそんなとりとめのないことで地球や日本の事を考えてしまう。


 出発したときから、人数が一人減ってエーレに戻ってきた。

俺達は足の遅いボル車だから、セントールの屋敷からエーレまで6日かかった。

騎士や連盟の早馬はとっくにシュルク討伐の報せを各地に届けているだろうから、ギルドや軍なんかはすでにこのことを知るところになっているだろう。

だが、ラライエの文明レベルだとすべての人々がこのことを知るには今しばらくの時間がかかるに違いない、

地球じゃこんな大ニュース、マスコミよりも早くSNSなんかを通じて全世界に拡散してもおかしくないんだけどな。


 さてさて、この事件の影響はどんな形で出てくるのやら……。

慎重に周囲の影響を見極めながら俺達の身の振り方を考える必要があるかも知れない。


  ……。


    ……。


 ボル車はガル爺の工房前までやってきた。

とりあえず、アルをここで降ろしてやらないとな。

色々と整理することがあるに違いない。

精神的にも物理的にもな……。

アルは目線を上げることなく、黙ってボル車から降りた。


 どうするのが正解なんだ?

今のアルに何をしてやればいい?

漫画やアニメだと【今はそっとしておいてやろう】とか【彼女の心の傷は時間が解決してくれるさ】とかアドバイスしてくれる親友キャラが居たりするものだけどな。

アニメの王道展開通り、ここはそっとしておいてやるべきなのか……。

それとも例え何もしてやれないとしても、誰か傍にいてやる方がいいのだろうか……。


「アル…… 一人で大丈夫かい? 何だったら……」


「ヴィノンさん、ありがとうね…… 大丈夫…… 平気だから…… それじゃ、今日はもう休ませてもらうから……」


「明日、様子を見にくるけど…… 何かあったら、いつでも来い」


 アルの痛々しい雰囲気のせいもあるが、かける言葉が見つからず、それだけ言うのが精一杯だった。

こんな時、コミュ障の俺は情けない限りだ……。

アルは乾いた表情で無理に笑顔を作って、そのまま工房の中に入っていった。


「俺達も戻ろう、きっと明日から色々と忙しくなる」


 アルドの言う通りだ。


「ああ、そうだな」


 アルを下ろしたボル車は、宿に向けて進み始める。



  ……。


    ……。


 日が沈み始めて空の色が朱く染まり始めて来ている。

脳内PCの時計はもうすぐ18:00になりそうだ。

ボル車は村の中をゆっくりと進む。

俺はボルロスの隣を黙って並んで歩いている。

そういえば、ガル爺がいなくなってアルを完全に一人するのはこれが初めてだな。

本当に大丈夫か?

考え出したら気になって仕方がない。


「あのさ、ピリカ……」


「や」


 いつも通りボルロスの背に乗っているピリカがツーンとした表情でバッサリと俺の言葉を切り捨ててきた。

まだ何も言ってないのだが……。

俺が何を言おうとしたのか ……わかったんだろうな。

出会ってからずっと、それこそ四六時中一緒にいるからな。


「いや、まだ何も言ってな……」


「やぁだ!」


 うん、これは無理そうだな。

これはおとなしく引き下がるか……。

俺が気にしすぎているだけかもしれないからな。


「珍しいな…… ピリカがハルトの話を取りつく島もなく断るなんて…… ハルトは何を言おうとしたんだ?」


 今日は御者席に座っているアルドが問いかける。


「アルが心配だからって、ピリカにアルの傍で様子を見てろって言おうとしたんだよ」


「そうなのか?」


「え、まぁそうだな」


 ピリカさんよくわかったな。

正解だ。

さすがにガル爺や両親の後を追うようなバカな真似はしないとは思うが……。

かといって、俺が年頃の娘が一人だけの家に一緒にいるのもどうかと思えてくる。

そこでピリカについていてもらえたらな ……と考えたのだが……。

ダメだったか……。

そんな気も少しはしていたけどな。


 宿からガル爺の工房までの距離は6km弱程離れている。

ピリカの【MPタンク】の有効範囲は約3km。

だからピリカがアルの(そば)にいれば、俺との魂の繋がりは絶たれてしまう。

それに、それ程の距離を離れた事は出会ってこの七年半、一度もない。

ピリカが俺の頼みを拒否する理由はその一点につきることはわかっていた。

それでもアルの事は知らない仲でもないし、頼めばワンチャン引き受けてくれるかな?

……なんて思ったが、甘かったみたいだ。



 宿に戻ったころには日はすっかり沈んで暗くなっていた。

ボル車を返すのは明日にして、今日の所は宿の(うまや)を使わせてもらって荷物だけ降ろしてしまうことにする。


 宿で軽く夕食を済ませ、これからの事は明日改めて相談することにして、俺達も今夜はそのまま休むことにした。



……。


   ……。



「ハルト…… ハルト!」


 不意にピリカの声で起こされた。

脳内PCの時計はAM1:43と表示されている。

普通に眠いわけだが……。


「どうしたんだ? こんな夜中に……」


「アルがこっちに向かってきてるよ」


 どうやら、ピリカの索敵範囲に引っかかったみたいだな。

しかし、こんな夜中にか?


「わかった、よく知らせてくれたな。ありがとう」


 俺はピリカと共にアルを迎えに外に出る。

宿を出て道に出ると、すぐに視界に飛び込んできたアルの姿に驚いた。

丸腰のパジャマ姿でトボトボと無防備にこっちに向かってきているのが見えたからだ。

いくら比較的治安の良い村の中とは言え、外部から来る人間の方が多いような村だ。

中にはチンピラまがいの素行に問題のありそうな輩がいないわけじゃない。

武装も無しに、寝巻姿で年頃の娘が夜中に一人で歩いて良いような治安環境では決してない。

これだけの距離をよく無事にここまで来られたものだ。


 俺はアルの所まで駆け寄る。


「アル…… お前、そんな恰好でどうしたんだ? 大丈夫か? ヘンな奴に襲われたりしてないか?」


「…………」


 アルは黙ってうつむいたまま、何も答えない。

見た感じ着衣に乱れは無さそうだし、怪我をしている様子もない。

とりあえずは無事のようだ。


「ひぐっ…… お爺ちゃん…… 誰もいないよぉ…… 一人は…… やだ……」


 小刻みに肩を震わせて、アルはただ泣いている。


「そっか…… わかった。もう大丈夫だ……」


 俺はアルの手を引いて宿に連れていくことにした。


「ちょ…… アル、そんな恰好でどうしたんだい!?」


 驚く宿のおかみさんに軽く事情を説明して、今夜は俺の部屋でアルを休ませると伝え、アルの分の宿泊費を支払った。

本当はダメなのだろうが、おかみさんは何も言わずに代金を受け取ってアルを連れ込むことを黙認してくれた。


「今日はここで休むといい。俺とピリカがついてるから何も心配いらない」


 とりあえず、アルを俺の部屋のベッドで休ませることにする。

アルはベットに横になり、俺が隣に座っている事を確認すると、すぐに静かな寝息を立てて眠ってしまった。


 一人にすると情緒不安定になるのか……。

どうしたものかな。

荷物の中から野営用の寝袋を引っ張り出してきて俺は床に寝転がった。

とりあえず、早速問題が一つ増えたわけだが、これも明日考えることにしよう。

 ブックマークが1剥がれてしまいました。

残念ですが、腐らずに戻って来てもらえるように頑張ります!


 少しの間、三章完結に向けた日常? パートっぽい展開に

なりますが、引き続きよろしくお願いいたします。


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