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百五十一話 あまり関わり合いにならないようにしよう

1月1日


 Happy new year to the earth!

理不尽に湧いてくる魔物と戦っている地球の皆さん、明けましておめでとうございます。

俺は異世界で野宿の年越しになりました!

雪こそ降らないみたいだけど、しっかり火を焚いていないと超寒いです。

これ以上気温が下がってくれば、野宿は凍死のリスクが出てきそう。

……って、誰に言ってるんだよ。


 今いる場所は前回、ペポゥの偵察に出た時に一晩過ごした場所だ。

実際問題、エーレに着いたら何か防寒手段を考えたい。

ただでさえ、野宿は起きた時に背中や首が痛くなったりするのに……。

この寒さの追い討ちは日本育ちの俺にはちっと厳しい環境だ。

常時高温多湿の緑の泥にいた時には無かった問題点が出てきたな。

【ピリカストレージ】で地球の冬服やダウンジャケットを召喚する手もあるにはある。

しかし、これ以上安易に荷物を増やすわけにはいかない。

これは最終手段だ。


 空が少し明るくなってきた。

いまさら二度寝はできそうにないので、起きることにしよう。


「おはようハルト!」


 目を開けるとピリカが俺にくっついていたが、残念ながら触れる事さえできないピリカさんでは、お互いの体温で温め合うようなおいしいシチュエーションは起こり得ない。

ヴィジュアル的にはピリカは密着状態だが、普通に寒い。


「ああ、おはよう」


俺が起き上がるのを見て、ピリカさんが魔法でお湯を出してくれる。

そのお湯を手で掬って顔を洗う。


「ふぃ~~っ! ありがとう。こう寒いとこのお湯が本当に気持ちいいな」


 アルドとヴィノンはまだブランケットにくるまって眠っている。

もはや先を急ぐ旅でもなくなったので、ゆっくり寝かしておいてやるか。

エーレに着いたらいよいよ中央大陸本土だ。

ここがピリカの元々いた大陸だというのならもしかして……。

ふと思い至ったことをピリカに確認してみることにした。


『ピリカはこの大陸が縄張りって言ってたな』


『そうだね』


 大丈夫とは思うけど、日本語で話をしておく。

俺が地球から来た人間だということは、絶対秘匿だ。

アルドとヴィノンが寝たふりしてるかもしれない。

何が命とりの結果になるか分からないからな。


『なら、ピリカが地球に飛ばされそうになった転移陣があった草原もこの大陸にあるのか?』


『そうだね。この地図には無いけどこの辺かな』


 ピリカは地図を右に大きくはみ出した場所を指し示す。

この国からさらにはるか東ということか……。


『地図で言えばフェメロン王国か…… いつかチャンスがあれば、転移陣があった場所を見ておきたい。その時は案内を頼む』


『もちろんいいよ!』


 もはやそこから俺が地球に戻ることが出来るとは思っていない。

……それでも何か地球に繋がる手がかりや痕跡が見つかってくれれば……。

そんな、藁を掴むような可能性に思いを馳せる。


「おや、ハルトきゅん。早起きだね」


 ヴィノンが起きて来たか。


「ああ、おはよう。こうも寒いと簡単に熟睡はできないからな」


「まぁ、確かに年中暑いミエント大陸に比べたら寒いだろうね。でも、このロテリア王国は中央大陸の中ではかなり暖かい方なんだよ」


 そんな気はしていた。

地図で見ると北側の国境にめちゃデカい山脈が走っている。

この山脈が冬の寒気を流入しにくくしているんじゃないかな。

これを越えてティラール帝国に入れば、ラライエの冬がどのくらい厳しいのか分かりそうな気がする。


「そうだとしても、俺にはこの寒さ…… 我慢の限界が近い。エーレに着いたら防寒対策は急務だな」


 ようやく、もぞもぞとアルドが起きてきた。

お前こそ生粋の南国育ちだろ? ……この寒さは平気なのか?

ラソルトに着いたばかりの時は、俺よりこいつの方が寒がっていたような気がするけど……。

きっと俺より環境順応力的なものが高いんだろうな。


「みんなもう起きているのか……」


「僕も少し前に目が覚めたばかりだけどね」


「起きたのなら、顔洗ってしまったらどうだ? ピリカ、二人にもお湯を」


 ピリカが魔法を発動させて、二人が顔を洗うためのお湯を出す。


「ああ、ありがとう」


 アルドはもう慣れたものでピリカに礼を言うと、出してくれるお湯で顔尾を洗い、寝ぐせを直して身支度を整える。

ヴィノンはそんなアルドを見てアルドに倣って顔を洗い始める。


 二人の身支度が終わったところで、保存食を取りだして朝食にありつく。

ラソルトを出てエーレまでの距離は約120km。

徒歩でも2~3日で到着できる距離だ。

なので今は気にしていないが、エーレの先に進むとなれば避けては通れない問題が一つある。

それは食料を始めとする補給の確保だ。

緑の泥と違って、中央大陸では食料の現地調達がどこまでできるのか分からない。

そのため、街や村で出来る限り食料を確保する必要がある。

だが、人間一人が持てる物量には限界がある。

これを解決する手段はいくつか考えられるけど、どれが実現可能かつ最適なのか……。

いずれにしてもエーレでやれること、やれないことを確認してからだな。


……。


  ……。


 ペポゥとの戦闘があった場所に到着した。

クリスマスの時にペポゥが陣取っていた丘は、泥が乾いて出来た深い茶色の土に覆われてカピカピになっていた。

以前の緑に包まれた丘の景色を取り戻すには、かなりの時間を要することになりそうな気がする。

ここにはもう、俺達を阻む泥団子は存在しない。

悠々と丘を越えてエーレへ至る道を進む。



 ……。


  ……。



 1月3日


 チラホラと畑が視界に入ってくるようになってきた。

これは人の集落が近いな。

モンテスともラソルトとも違うのんびりとした空気がここにはある気がする。

うん、嫌いじゃないかもしれない。

しかし……。


「なんか農耕地が少なくね?」


 率直な意見を言ってみる。


「エーレはすぐ北にモルス山脈の裾野になっている広大な森があるからね……。ここ200年程、森から出てくる魔獣や魔物の被害が後を絶たないんだよ。村の外の農耕地までなかなか防衛の手が回らないのが現状でね……。」


「と、いうことはペポゥもその魔獣被害の流れか?」


 アルドが俺の言おうとしたことを先に言ってくれた。


「まさか。 あれは神出鬼没の魔獣だから別枠だね。この国に出現したのも数十年ぶりだよ」


 ペポゥの事は気にし過ぎだったか……。

何となく見えてきたかもしれない。

立地的にはこのエーレという村、この国の人流・物流が交わる戦略的要衝に見える。

にもかかわらず今一つパッとしない村なのは、不定期に魔物や魔獣の被害に苛まれるからだろうな。

過度に資金・資源を投入して発展させすぎてしまうと、人類の力で抗えないような魔獣に襲われて、ここが滅亡したときの損失が大きくなりすぎる。

だから、物流中継点として最低限の機能を持たせる程度の規模にとどめて、リスクヘッジしていると見た。

けど、この予想は俺の心の中にとどめておく。

どや顔でうんちく垂れ流して、全然違う理由があったら超かっこ悪いからな……。

事情を何も知らない余所者はおとなしくしておくに限る。


 やがて村を囲む木製の柵が見えてきた。

隙間だらけで高さも2mぐらいしかない。

力の強いオーガクラスの魔物なら容易く打ち破れそうだ。

他の街に比べたらガバガバのセキュリティに見える。

俺とピリカだけなら門をくぐらなくても余裕で忍び込めそうだ。

そんなことはしないし、する理由もないけど……。


 村には入り口で冒険者ギルド証を提示するだけで、あっさりと中に通してもらえた。

この冒険者ギルド証……。

ラライエでの身分証明書としては相当に使えそうだ。


「ずいぶんあっさりと入れてもらえたな。初めてモンテスに入る時とはえらい違いだ」


「これを持っているということは、ギルドが身元を保証しているということだからだよ。最初に冒険者登録するときは一応審査も試験もあるし、最低一回はギルマスが直接面接することになってるからね」


「俺には何もなかったぞ。話して三分で無理矢理渡された気がするけどな」


「あの時は非常事態だったからね。同行者のアルドが日輪級だから、その時点でハルトきゅんの身元保証は大丈夫と判断したんだろうね。くれぐれも悪用しちゃだめだよ」


 悪用するつもりはないが、図らずも手にしてしまった冒険者資格だ。

精々有効利用はさせてもらおうかな。


「それにしても、ここの門番はアルドの日輪級のギルド証を見てもあまり驚かなかったな」


 モンテスやラソルトじゃ、もうちょっとリアクション大きかった気がするのに。


「まぁ、ここは田舎の村だけど立地柄、勇者もちょくちょく来たりするからね。日輪級がひとり来たぐらいで騒いだりはしないよ」


 なるほどな…… 魔物や魔獣が出る森があるとなれば、それを狩りに来る命知らずもそれなりということか。

俺のいた緑の泥程じゃないだろうけどな……。

ピリカもアルドもあそこは魔界と並ぶ世界屈指の魔境って言っていたからな。


「それに、エーレは【裂空剛拳】が住む村だからね」


 そう! それ!

前にもちょっと出てきていたよな。

地味に気になっていた。


「そのロマンワードが何なのか教えて欲しいな」


二つ名持ち勇者(ネームド)か」


 アルドには意味がわかるみたいだ。


「ハルトきゅんは秘境集落出身だから知らないかもだね。序列(カレッジ)が50より上になると、勇者はそれぞれ固有の称号が与えられるんだよ」


「それが上位クラスの勇者の証ということか……」


 そういえばピリカさんもなんか言ってたな。

序列(カレッジ)が50以上になってくればちょっとだけ手強くなってくるとかなんとか……。

ピリカさんがちょっとだけ手強いと評価するとか……。

二つ名持ち勇者(ネームド)ってもしかして、人間辞めてたりしないか?


「このエーレには一人、二つ名持ち勇者(ネームド)がいるんだよ」


 マジかぁ……。

あまり関わり合いにならないようにしよう。


序列(カレッジ)22番……【裂空剛拳】のガルバノがね」



 補足回込みで連投といたします。

明日はお出かけの用事があるので、投稿できないかもです。

可能な限り投稿したいとは思っていますが、土日で一話も上がらなかったら

ゴメンナサイです。


 前回からブクマが1増えました。

ありがとうございます。

そのブックマークが私のモチベを支えてくれています。

引き続きよろしくお願いいたします。

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