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百四十話 ミカン箱とかに乗る方が映えるのだが……

 目的地はすぐそこのご近所だというのにわざわざ車を出す。

行き先は四丁目の峰岸さんの家だ。

お隣の宮本さんの勘違いが原因でやる羽目になったお見合いのためだ。

宮本さんの顔を立てるために、とりあえず【お見合いしてきました】という事実を積み上げるだけのイベント消化だ。

確かなんかの名言にあったよな……。

【面倒くさいことを面倒くさがる事こそ、一番面倒くさい事態を引き寄せる】……だっけ?

確かにその通りだと思う。

仕事でもプライベートでも。

そんなわけで、この面倒なミッションは面倒くさがらずにさっさと終わらせてしまおう。


 ……。


  ……。


 自宅から車でたったの二分足らず……。

まぁ、同じ町内だからな。

しかし峰岸さんのところに俺と近い年代の娘さんがいたなんてついぞ知らなかった。

ほんと、どれだけ他人に無頓着なんだって話だ。

確か俺より二つほど年上らしいから28歳か……。

俺の家もそこそこデカいと思っているが、ここはさらにデカいな。

敷地は500坪ぐらいあるんじゃないかな。

まぁ、この町内は先祖代々続いている家が多いから大きな邸宅は珍しくない。

とにかく用事をさっさと済ませてしまうか。

峰岸さん宅のインターホンを押す。


「はーい」


 声が聞こえて玄関から女性が一人出てくる。

長い髪の清楚なたたずまいの落ち着いた雰囲気のある女性だ。

ただ、身長が俺と大して変わらない。

俺の身長が171cmだから日本人女性としてはかなり大柄な気がする。


「どうも初めまして、大山 悠斗(おおやま はると)です」


峰岸 美沙(みねぎし みさ)です。よろしくお願いします」


 これがコミュ障の俺が付き合った二人目にして最後の彼女……【峰岸 美沙】との出会いだった。



 12月16日



 ……。


  ……。


 なんだかな……。

昔の記憶を鮮明に思い出すことが増えてきたな。

思い出したところでどうだって話なんだけど……。


「おはよう、ハルト君。どうしたんだい? なんか神妙な顔つきだけど……」


「え? あ、いやなんか昔の事を夢に見ただけだ。妙に生々しくてな…… 気にしないでくれ」


「なんだいそれ? 昔なんて言うほどの歳でもないだろ? 君ってホント面白いね」


 実は昔なんて言うほどの歳なんだけどな。


「起きたのなら朝食にしよう。すぐ出発すれば夕方にはラソルトに戻れそうだ」


「そうだな。確かに時間は惜しい」


 軽く朝食を済ませると、俺達は荷物をまとめてラソルトに向けて出発した。

とても平和な風景だが、本土に至るルートを押さえられているので、ラソルトは半孤立状態だ。

船を使えば海に逃れることはできるが、全ての住民が脱出するにはまだまだ時間がかかるだろうな。

平和に見えるラソルトに続く道を歩きながら、ペポゥ攻略作戦に必要な準備の可否をひとつずつ確認していく。


「ヴィノン、ラソルトにミスリル製武器の手入れが出来るところはあるか?」


「なんだい急に? まあ小さいながらも港湾都市だからね。輸入してきたそういった装備やアイテムの手入れが出来る工房はあった気がするよ」


「そうか。ありがとう」


『ピリカ、風の魔法は使えるか?』


『もちろん! ハルトのためならどんな魔法だって使っちゃう!』


『使ってほしいのは……』


俺は日本語でピリカに行使してほしい魔法の概要を説明する。

(ヴィノンに)聞かれてマズいことになるのか判断できなかったから、日本語を使うことにした。


『うん! 平気! 少し大きい術式になるけど、魔法自体は単純だから楽勝だよ』


『そっか、よろしく頼む。これは勝ったかもな……』


 あとはギルドや駐留軍の協力がどのくらい引き出せるか……。

そしてペポゥが作戦決行まであの場所にいてくれるのかだな。


 ……。


  ……。


 空の色が少し朱くなり始めてきた。

目の前にラソルトの入り口が見えてきた。

予定より気持ち早い時間で戻ってこられたな。

歩哨に立っていた衛兵が俺達の姿を見つけて入り口を開いてくれる。


「良く戻ってきたな。さすがは日輪級だ。偵察はうまくいったのか?」


「そうだね。よくわからないけどうまくいったみたいだよ」


 ヴィノンは衛兵になんか微妙な言い回しをしている。


「なんだかはっきりしない物言いだな。魔獣の様子は確認できたんだろ?」


「ああ、それは僕もこの目で見てきたよ。あとはこれからギルドに戻って説明するよ」


「そうか…… なら早く報告を済ませてくれ」


 俺達はそのまま冒険者ギルド・ラソルト支部に向かう。

ギルドに戻ると俺達はすぐに大会議室に通された。

室内の空いた席に座るとすぐにアマゾネスっぽいギルマスが入ってきた。


「お早いお戻りだね。首尾はどうだったんだい?」


 代表して俺が話したほうが良いよな。


「確認したいことは粗方見てこられたよ。できればギルドと冒険者の主要メンバーを集めてくれないか? 時間が惜しい。説明は一回で済ませたい」


「……そうかい、わかった。リエラ!」


「は、はいいぃ。すぐに声を掛けてきますぅ!」


 後ろに控えていた受付嬢はあわあわと駆けていった。

主要メンバーが集まるまでにはすこし時間がかかりそうだ。

ざっと室内を見まわしてみると、室内の壁に学生時代によく見かけた黒板がある。

一応、異世界にもこういうのはあるのか……。

机の隅の方にチョーク?

いや、これは白墨(はくぼく) ……と言った方がいいのかな?

持ってみた感じ、日本の学校にあるチョークよりずっと硬くカチコチの感触だ。

チョークも白墨(はくぼく)も同じものだが、硬さが俺の知っているチョークとは別物なので敢えてこの言葉で区別しようか。

白墨(はくぼく)を使って黒板に線を一本引いてみた。

一応ちゃんと書けるな。

書いた線を消すために手でこすってみた。

う…… 消えない。


「坊主何やってんだい?」


「え…… あ、いや……」


「まぁ、これだけ大きい黒板は珍しいから、いたずらしたいのは分かるけど程々にしなよ」


 ギルマスにいたずらと思われてしまった。


「ああ、すまない。この線が消えないんだが……」


「そりゃ水拭きしないと消えないよ。知らないのかい?」


 おっと、水拭きしないと消えないとは…… チョークより強く粒子が吸着するのか……。

ちょっと不便だな。


 そんなことをやっている間に、ぞろぞろとギルド職員や冒険者…… 駐留軍のメンバーも数人部屋に入ってきた。

駐留軍もペポゥの情報は欲しいだろうからな…… 当然と言えば当然か。

メンバーは出そろったみたいだな。


 こんな子供の呼びかけでこれだけの人間が集まるとは……。

それだけペポゥの存在が脅威なのか……。

日輪級のアルドがいる事の影響力なのか……。

多分両方かな。


「これで粗方揃ったよ。あんたらが見てきたことを話してくれていいかい?」


「わかった。始めさせてもらうよ」


俺は椅子をひとつ抱えて最前列の黒板の横に向かう。

子供の身長では今一つ身長が足りないからだ。

オタク的にはミカン箱とかに乗る方が映えるのだが……。

無いものは仕方がない。

アルドとヴィノン、あとピリカも俺に続いて最前列に立っている。


「これを使っても?」


 白墨(はくぼく)を手に取って俺はギルマスに尋ねる。


「ああ、構わない」


 ギルマスはぶっきらぼうにそう答える。


 さてと…… はじめようか。

コミュ障だからこの手のプレゼンめいたものは苦手なんだけどな。

まぁ、これでも元社畜…… プレゼン未経験ってわけじゃないし、何とかなるだろ。

椅子に登ってざっと集まった面々を見渡す。

それぞれに思うところはありそうだな。


「わざわざ集まってくれてありがとう。俺達の見てきた事と考えを一回で正確に聞いてもらうためにこの場に来てもらった。現状、船で脱出・ペポゥを突破して援軍を要請する。この二つの作戦が進んでいることと思う」


 まずは【イマココ】の状況を全員に再認識させる。


「四日前に集まっていた冒険者諸氏は、俺達がどちらでもない第三の選択をするって話をしていた事を覚えていると思う。この目でペポゥ見てきた結果を踏まえて、俺達の取るべき第三の選択を聞いてほしい」


「……」


 全員が黙って俺の次の言葉を待つ。

何となく俺が何を言うのか察してそうなやつも居そうだな……。


「ペポゥを討伐する。 ……俺達が取るべき選択はこれが最良だと思う」


 一瞬、室内が静まり返ったが、すぐに騒がしくなった。


「…… なんだと……」


「子供の世迷言か…… 時間を無駄にした」


「しかし ……日輪級のアルド ……だっけ? あいつも何も言わないぞ」


「一緒に偵察に行ったヴィノンもだんまりか。どういうつもりなんだ?」


 ちょっと収集つかなくなってきたな。

皆が続きを聞く気になるまで待つか。

そう思った矢先……。


  ダンッ!!


 ものすごい音が室内に響いて、一気に静かになった。

ギルマスが机に握りこぶし叩きつけていた。

そういうところがガキ大将属性だと思う。


「ありがとう、ギルマス」


 ギルマスは表情一つ変えずあごをクイっとしゃくりあげる。

いいから続きを話せって事ね……


「さて、何もいたずらにあれのエサになれって話じゃない。俺達が偵察してきた感じだと案外勝てるんじゃないかって思っている」


「…… 本気で言ってるのか?」


「アルドって奴とヴィノンも何も言わないってことはもしかするのか?」


 冒険者たちの中にひそひそ言ってる連中がいるけど、かまわず先を続ける。


「それじゃ、俺達が見てきたペポゥの正体を話していこう」


 うおぉっ! な、なんじゃこりゃぁ!

前回投稿以来、ブクマ・評価メッチャ伸びてます!

ブクマつけてくれた方・評価つけてくれた方、ありがとうございます。


 朝見たら、異世界転生・ファンタジー部門 日間ランキングに入ってました!

朝時点で203位・今時点で255位でした。

トップランカーから見れば一時間で出るような数字ではありますが……。

自分にとってはとても嬉しい結果です!


 一過性の事で下の方にちょこっと顔出しただけ……

すぐに圏外に落ちるかもですが、それでもメッチャ嬉しいです!


 一日中、テンション爆上がりでした。


 ほんと、何が起きたんでしょうね……。

 本来、投稿するつもりなかったのですがこのテンションに

身を任せて一話書きました。

もう無理ぃ……。燃え尽きました。

次話は土曜になります……。


 読んでくださり、ブクマ・評価入れてくださった

全ての方に最大限の感謝を!


 これからもよろしくお願いします。

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