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十一話 だがマジで限界だ

 検証の手順はとてもシンプルだ。


 粘り強く逃げ続けながら、発光少女が自宅の門扉の前に来たタイミングを見計らい、玄関扉で姿をさらす。


 俺の姿を確認した発光少女は、少し小走り気味に接近してきた。


 そういえば、発光少女の真正面に立ったのはこれが初めてかも……。

やはり恐怖心と緊張が先だって見据えたりは出来ない。

顔はよくわからないが、口元は何だか笑っているようにも見えた。


 もう発光少女との距離は3mを切っている。

ここまで発行少女の接近を許したのは初めてだ。

これ以上は危険なので、玄関の扉を閉めて施錠する。


 すぐに廊下の一番奥まで下がって距離を取る。

いつまでも扉の前にいたら、可能性一の場合、扉をすり抜けた発光少女に捕まってしまう。


 さぁ、どうだ?


 玄関扉をすり抜けてくるか?


 俺と発光少女を隔てているものは玄関のドア一枚だけだ。


 ……。

 

 数秒の静寂の後「ガタガタッ」と、ドアノブを回したり、扉を押したり引いたりする音が響く。

扉をすり抜けてこない。

明らかに扉を自分の手で開けようとしている。


 20秒ほど扉と格闘した後、施錠されていることを理解したのか静かになった。


 やがて玄関扉のすぐ隣にある和室の障子越しに、黄緑色の光が差し込んできた。

障子のすぐ外側にはガラス窓があり、あらかじめ施錠してある。

二枚重ねの障害物が通過不可であるなら、発光少女はガラス窓とすぐ後ろの障子窓に阻まれるので、すり抜けは不可能だ。

まぁ、障子は紙なので、物理的に破壊するのは容易なのだが……。


 程なく、ガラス窓が閉じたままであるのにも関わらず、内側の障子がすっと開いた。

発光少女はガラス窓から、指先だけをすり抜けさせて障子を開いたのだ。


 これで確定だろう。


 窓ガラス越しに内側に障子があることを認識して、手前のガラスだけすり抜けて、内側の障子を開いた。

発光少女は壁の向こう側の様子がわからなければ、すり抜け能力は使えない。

つまり、すり抜けは透明のガラスや網戸など限定の能力だ。


 俺は、もはやパターン化しているダイニングから裏庭に抜ける逃走ルートで屋外に脱出する。


 結論……。


 やり方次第で一時的な籠城は可能。


 当面は鬼ごっこを続けながら、隙をみて少しずつ籠城可能な閉空間を作るべきだろう。

籠城場所の有力候補は一階、二階そして離れにあるトイレ。

浴室、あとは裏庭の倉庫の五か所だ。


 トイレと倉庫は容易、かつ短時間に仕込めそうだ。


ただ、トイレと倉庫は発光少女の侵入を許してしまうと逃げ場が全くない。

ジ・エンドである。

浴室は子供状態の今の俺なら出られそうな窓がある。


 いざとなったらそこから脱出できるチャンスがあるかもしれない。

ただし、倉庫は中に備蓄物資があるので数週間は籠っていられそうだ。

トイレは一番狭い分、籠城空間を最も短時間で仕込めることが出来る。

即座に籠城する場合はトイレ一択だ。


 難しい選択だな。


 やはり実際に籠るのは最終手段だ。

逃げ場が無くなってしまうリスクは、可能な限り取りたくない。


 発光少女から逃げ回りつつ、五か所どこでも籠城できるよう、トイレと風呂に少しずつテープやベニヤ板などを放り込んでいく。



 …………



 すでに逃走劇も三日を過ぎた。

脳内PCの時計は12月11日の明け方になっている。

すでに浴室とトイレ・倉庫はどこでも籠城可能だ。

そろそろ籠城を決め込まねばならなさそうだ。


 と、いうのも精神的・肉体的にほぼ限界である。

すぐ隣に死が迫っている極限状況下とは言え、小学生の体で三日貫徹はさすがに限界だ。

物陰に隠れる度に睡魔に意識を持っていかれそうになる。

当然ながら集中力も続かない。

社会人として仕事をしていた時でさえ、二日貫徹が最長だった。


 少々危険を冒してでも、籠城して睡眠をとることが必要だ。

まずは、籠城のタイミングを見極めるために、発光少女の位置を確認しなくては……。


 倉庫の陰からオペラグラスを発光少女の方に向けたその時、発光少女にまたしても変化が現れていた。

黄緑色に光っていたはずの発光少女の色が真っ赤になっていた。


 思わず「うわっ」って声が出そうになった。

赤って……この闇の世界では視覚的にすごいインパクトだ。


 このまま籠城作戦を実行しても大丈夫なのだろうか?


 このタイミングで、発光少女の変化はものすごく籠城作戦実行がためらわれる要素だ。

希望的推測もあるが、そんな仮説を検証している余裕はもはや無い。


 逆に怒りゲージ的な何かが高まっていて、狂暴性が増していたりとか……。

目からビームが発射できるようなエネルギーチャージ完了状態だったりしたら……。

このまま籠城するのは死亡直結の選択肢かもしれない。


 だがマジで限界だ。

こんな思考にすら睡魔によるノイズが割り込んでくる。


 状況は待ったなしだ。


 今時点で色以外に発光少女の行動に変化は見当たらない。

籠城&仮眠作戦……やるしかない。

 十二話の投下は1時間後、23:30頃の予定です。

どうか、ブックマークと一個だけでも★評価お願いします。

朝起きた時にこれが一個でも増えてると、マジでうれしくなります。

よろしくお願いしま。

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