百八話 さてさて、どっちが正しいセラス像なんだ?
「なんとなく予想はつくけどさ。セラスがどう変わっていったのか……」
「おっ? 察しが良いな。まず、受ける依頼の傾向が目に見えて変わった。報酬が高額なものを中心に受けるようにな。以前は人命や街の安全に関わってくるようなものは、金額に関わらず率先して受けていたんだけどな」
「でもそれって、ギルドや連盟のルール的に何かマズいのか?」
「別にマズくはないな。強制力のある連盟やギルドの指名依頼以外は何を受けようが自由さ。まぁ、他の勇者も受ける依頼は選り好みするからな。別にセラス達がどの依頼を受けようが周りがとやかくは言えないさ」
「そうか。なら、セラス達がパーティーの方針転換をしただけじゃないのか?」
「そうなんだけどな。なんていうかな……。貴族や金持ちの道楽目当ての素材集めとかな、いくら高額でも勇者が受ける依頼がそれでいいのか? ……と思えるようなのまで受けるようになってな」
「徹底して、経済効率重視の方針になったと」
「ああ、そのせいもあってセラス達の金回りは急に良くなった。序列が低くても勇者には違いないからな。その気になれば豪勢にやっていくだけの稼ぎを出すのも簡単だったんだろうさ」
プテラがセラスに金の使い方を教えたのか……。
悪い意味で……。
「次に、だんだん鍛錬しなくなっていった。元々、セラスは素人みたいな身のこなしなのに無敗だったし、プテラも魔法の才能だけでやってきたクチだからな。修行しているところなんて見たことないから、修行してもしなくても変わらんのかもだけどな……」
ということは…… 鍛錬しなくなって変わったのは……。
「ダリオはそうじゃなかった」
「その通りだ。子供のくせに頭の回転が速いな」
まぁ見た目は子供、頭脳はオッサンだからな。
名探偵ではなくてヒキオタニートだけど。
「ダリオは元々、日輪級になれるほどの才覚があったわけじゃなかった。必死に修練を続けて、どうにか勇者パーティーメンバーとしての体面を保っているような状態だったからな」
「セラス達に引っ張られるように遊び歩くようになって、日を追うごとにその腕が鈍っていったよ。 ……誰の目から見てもな」
俺も大学受験を機に古流拳法を辞めたが、練習しなくなった途端、ものすごい勢いで腕が鈍っていったからな。
二年もすれば体がなまりすぎて、白帯の初心者に敵うのかさえ怪しい有様になっていた。
「そしてとうとう、何でもない討伐依頼の中でダリオは死んだよ。セラスは孤児院の頃から一緒にやってきたダチを二人とも失ってしまったわけだ」
「……なるほど。でも、今のパーティーって六人だよな?」
「ああ、ダリオが死んで次にパーティーに加わったのが、ウィルとラッファの二人だ。プテラが他所のパーティーから強引に引っ張ってきたって噂だ」
「強引に? 力ずくって事か?」
「まさか、噂に過ぎないけどな。元々プテラの知り合いだった二人を金に物を言わせて引き抜いたらしい。奴らが元居たパーティーに移籍金を積んだって話だ。ダリオとモニカが死んだことで、ギルドから【遺族補償】・連盟から【英霊報償】が出るからな。そこから拠出したんじゃないか?」
「えっと、その遺族補償とか英霊報償って?」
「おっと、お前さんにはそこからか……。遺族補償はギルド所属冒険者が死んだ場合、ギルドから遺族に支払われる見舞金だ。普通はそこまでの大金にはならんけど、死んだ二人は日輪級だ。勇者パーティーのメンバーは別格だからな。それなりの金額になったはずだ」
一回払いの限定の遺族年金的なやつか……。
「でも、支払い先は遺族なんじゃ……」
「ダリオとモニカは二人共、孤児院出身だからな。支払先はもちろん孤児院だ。そして、孤児院の院長は……」
「勇者セラス ……か」
「そういうことだ」
「……で、英霊報償は?」
「こっちは連盟から出る金で、勇者やそのパーティーメンバーが死んだときに、死者を弔い、欠員を補充するために必要とされる金が出るらしい。日輪級に匹敵する人材を獲得するとなるとそれなりの金はかかるだろうからな。 ……相当な金額が連盟から出るらしいぞ。 ……噂だけどな」
「ならモニカの分も含めてこの金も当然……」
「ああ、リーダーであるセラスに渡る」
「その金を使ってそのウィルとラッファを?」
「……ほんとのところはわからんが、そんな噂が冒険者の中じゃ流れている」
「ウィル、ラッファ…… 二人共、前のパーティーにいたころからあまりいい噂は聞かなかったな。元パーティーメンバーにこんな言い方するのもアレだけどよ。あのプテラの伝手で引っ張ってこられるって時点で、人となりは推して知るべしだ。ただし、腕の方は間違いなく一級品だ」
なるほどな。
モニカが死んでプテラが加わってから、セラスを取り巻く環境は大きく変わっていったわけか……。
「あの二人が加わって、セラスのパーティー戦力は大きく底上げされたよ。実績が少ないせいで序列こそ低いけどな。戦力的にはかなりの物だ。もうモンテスじゃ、やりたい放題だ」
……少しアルドとリコから聞いていたセラスのイメージとずれが出てきたな。
さてさて、どっちが正しいセラス像なんだ?
「……で、そのウィルとラッファの二人はどんな人物なんだ?」
「ウィルは重戦士だ。魔法を含め、あらゆる攻撃を受け付けない黒隕鉄合金のフルプレートで身を固めている。あり得ない重量の装備を身に付けていながら、動きが全く鈍らない不思議な男だ。もっとも、元の動きが鈍重だからあれ以上遅くなったら、盾役として使い物にならんが……」
うわ……。
何故か、数十年前のシューティングゲームで絶対壊れない金属の板が、回りながら迫ってくるステージがあった事がふと脳裏に浮かんだ。
「腕っぷしも強くて、敵の攻撃お構いなしに突っ込んでハルバードで叩き潰す戦法を得意としているな」
「もう一人のラッファは?」
「どっかの貴族家の三男坊だったとかって話を聞いたことがある。見た目通りの軽薄な男だが、剣の腕は一流だ。流れるような動きで細剣を操り、間合いの外からでも伸びる必殺の突きを放ってくる。正確に一撃で敵の急所を捉えるし、魔力を帯びた突きはどんな硬い装甲も貫くって話だ」
これも、なんかいた気がするよ。
有名な漫画やアニメで……。
確か軽薄な奴じゃなかったけど……。
剣の突きだけで無双する、あり得ない化け物キャラが……。
今時点では、ラッファはあのキャラと同等かそれ以上の能力と評価しておこう。
「しばらくは、この四人で活動していたんだけどな。その後、更に二人メンバーを増員した」
「アルドとリコか……」
「いや、ラムトスとカティの二人だ」
え? 誰それ?
今回、ちょっと少ない目ですがご勘弁を……。
リアルの方が、公私ともに首が回らない時期なので出来るうちに
ちょっとでも更新しておこうと思いました。
え? もう真相わかったって?
すいません……何のひねりも無くて……。




