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十話 絶対に命中する!

 逃走開始から、24時間が経過した。

すぐそこに死が迫っているという緊張感からか、疲労や眠気はそれ程ではない。


 神経をすり減らしながらの、いつ終わるとも知れない逃走劇が続く。


 そんな状況下で、少し前から発光少女に目で見てはっきりわかる変化が一つ出ている。


 発光少女の光の色が黄緑色に変わった。


 発光少女に何が起きているのかは不明だ。

行動パターンや、能力的なところに変化は見られない。


 一貫して俺を探し求めて、シャボン空間内を徘徊している。

この色の変化がなんなのかは分からない。

でも、俺に有利に傾く何かの兆候であると期待せずにはいられない。


 危険を伴うが、一番試したいことを実行に移すべきだろうか?


 多分、無理だろうな…… と、思いつつもやはり試さずにはいられない。


……何とかこの発光少女を倒せないだろうか?


 このままずっと逃亡を続けていては、遠からずこっちが先に参ってしまいそうだ。

……なら一度だけ、こちらから打って出よう。


 触れられただけで死ぬ可能性がある以上、遠距離攻撃一択だ。


 逃亡を続けつつ、押し入れからダンベルとロープを取り出す。

次に気付かれないように二階に上がる。


 二階は階段しか安全退路がない。

保険をかける意味でベランダからロープを垂らしておく。


 基本階段から逃げるつもりだが、階段を押さえられた場合はロープでベランダから地上へ逃げられるようにしておく。


 攻撃手段は極めてシンプルだ。

複雑なトラップを仕込める時間がそもそも無いし、失敗するリスクが増すだけだろう。

二階の自室の窓から地上にいる発光少女の頭上にダンベルを落とす。


 それだけだ。


 いつでもダンベルを投下できるように窓を全開にする。

今、発光少女は裏庭の倉庫の前あたりにいる。


チャンスだ。


 イモビライザーで車のウインカーを光らせて発光少女を誘導する。

リモコンのボタンを押すと俺の愛車のウインカーが二回点滅する。


 狙い通り、発光少女は即座に反応した。

俺の部屋の下を通って車を確認しようと歩き出す。


よし! いまだ!!


 丁度、窓の真下に到達したタイミングでダンベルを窓から投下する。

我ながら最高のタイミングだ。


絶対に命中する!


 手を放して一秒もしないうちに「ゴインッ!」と硬いものがぶつかった音がする。


 あっ、やっぱりだめだ。


 発光少女に攻撃は通じないな……。


 これはダンベルがコンクリートに衝突した感じの音だ。

発光少女に物理的に直撃したなら、もっと鈍い音がするだろう。

無情にもダンベルは発光少女の体を通過して、コンクリートの地面に落ちただけ。


 失敗となればすぐに逃げなければ……。


脱兎のごとく、部屋を出て階段を駆け下りる。

発光少女は落ちてきたダンベルによって、俺が二階の自室にいることに気付いた。


 浮遊モードに入って、窓から部屋に侵入してくる。

発光少女が室内に到達したときには、すでに俺は一階まで降りている。

すでに俺が階段から一階に降りたと察したのだろう。

発光少女は浮遊状態で追跡してくる。


 浮遊状態だと歩くよりかなり速い。


 二階の手すりを飛び越えて最短距離で一階まで降りてきた。


 さすがにダンベル落とされて怒ったのだろうか?


 とにかく発光少女に視認されるのは避けたい。

仏間から裏庭に抜けて視界を切りつつ、ブロック塀を乗り越えて裏手の家に逃げ込んだ。


 これで少しは時間を稼げるだろう。


 今のうちに逃走中に回収して、ポケットに突っ込んであったフルーツの缶詰を開けて食べる。

こんな閉空間内で逃亡しながらだと、食事もままならない。

食べられるうちに食べておく。


糖分と水分を補給して少し落ち着いた。


 隣の家のソファーの陰に隠れて20分近く経つ。

意外とここまではやってこない。


 このままずっと隠れていられるかな?


 なんていうのは甘い期待だった。


 お隣の家の雨戸がガラガラと音を立てて開かれ、内側の施錠された窓ガラスをすり抜けて発光少女が侵入してきた。


!? 今の発光少女の行動って……。


 ここに来て新発見だよ。


 考察に耽りたいところだが、ここに潜んでいられるのもここまでかな。

俺は玄関から外に回り込み、自宅の車庫に向かって静かに、かつ全力で移動する。




 なんだか逃走パターンが確立されてきた。

こちらから発光少女の位置が確実に把握できるから、見つからないように移動するのはそれ程難しくなくなってきた。


 自宅のダイニングテーブルの下に身を潜めて、さっきの発光少女の行動を思い出す。


 さっき、発光少女は外側の雨戸を自分の手で開き、その上でガラスの内窓をすり抜けて室内に入ってきた。

壁抜け可能なのだから、雨戸ごと抜けてくればいいだけなのに……。


 これは二つの可能性が考えられそうだ。


 可能性その一。二枚連続または2枚重ねの障害物のすり抜けは出来ない。

 可能性その二。向こう側の様子が目視確認できないと壁抜け出来ない。


 おそらく、このどちらかの条件で、壁抜けは能力的な縛りがありそうな感じがする。


 何とかしてどちらが正解なのか突き止めたい。

判明すれば、俺の生存率を引き上げられそうだ。


 可能性一の場合……。

障害物などを二枚重ねすることで、バリケードによる足止めなどの手段が有効となる。

発光少女の移動範囲に制限を加えることができれば、相手の行動を誘導もできる。

逃走の際の時間稼ぎにも役立つ。


 可能性二の場合……。

視認さえされなければ、いきなり壁抜けで襲われて終了することは無い。

また、施錠と視覚的な目張りができる閉空間を作ることさえできれば、籠城可能だ。


 可能性二で確定なら、逃げ場が無くなったときに一時的に安全地帯に籠ることができる。

そうなれば、この無理ゲーの難易度はぐっと低くなる……はずだ。


 何とかして、どちらの可能性が正解なのか確認しておきたい。


 この情報と引き換えならば、少々のリスクは覚悟すべきだ。

すぐに実行可能で、成功率が高い案をすでに思いついている。


 やらない理由はない。


 よし! 作戦開始だ。


 11話は1時間後、22:30ぐらいの投下見込みです。


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