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一話 世界は滅亡しました?




挿絵(By みてみん)




世界が滅亡しても引きこもりたいと思っていました


~ 元子供部屋おじさん、最強のロリ精霊と

異世界を生きる。


異世界でだって引きオタライフを送る

はずだったのに…… ~






 ミ゛―ン




     ミ゛―ン



          ミ゛―ン



              ミ゛―ン

                 ミ゛ィ―ン



 アブラゼミを主力とする数種類のセミが鳴いている。

陽炎で揺れる周囲の植栽から、容赦なく(こえ)を響かせて体感の暑さを増幅してくる。

 

 五十歳の夏。


 今年の最高気温を絶賛更新中のお盆の頃。

俺は我が家の墓に供えた線香から、立ち上る煙を黙って眺めている。


 今年の春、親父(おとん)が死んだ。


 死因は糖尿病の合併症による多臓器不全だった。

しかし、歳は八十を超えていたので、天寿を全うしたと言ってもいいだろう。

母親(おかん)も四年前に他界した。


【両親の葬式を出して、家の長男として両親を送り出してやる】


 何とか自分の中で設定した最低限の義務だけは果たすことができた。

ただ、最後まで心残りだと両親からは口うるさく言われたことは無理だったが……。


 結婚して孫の顔を見せてやる……。

これだけは結局できなかった。

でもそれは、妹が達成しているので勘弁してもらいたい。



 初盆の法要が終わり、ようやく一区切がついた。

俺はその報告のため、両親の眠るこの場所に足を運んでいた。


「成し遂げた……ってことにしてくれな」


 もちろん、墓標は何も返事をしてくれない。


「俺にとって向いてない人生を五十年生きたんだ」


 線香の先端から灰がポトリと落ちた。


「もう、いいだろ?」


 俺の本質はオタクだ。


 少年時にいじめを受けたせいなのか……。

それとも、いじめられっ子を脱却するきっかけになった、あの出来事のせいなのか……。


 人と接するのが苦手で、アニメやゲーム大好きマン。


 可能であるなら、ずっと引きこもってそれらにのめり込んで生きていられれば、どんなに幸せだろう。


 いつも真剣にそう思っている。


 俺はこれでも先祖代々続いてきた、地元の名士的な家系の長男だ。

無職だと周囲の目もある。

それに、両親に申し訳ないという思いもあった。


 ヒキニートをする勇気がなかった。


 だから本来の自分を押し殺し、大手携帯電話会社の下請け企業の社員として、技術系の仕事を続けた。

皆が使っているスマホや携帯などの通信インフラを構築する泥臭い仕事である。

 

 本当は働きたくなかった。

 仕事に行きたくなかった。

 必要以上に人と接点を持ちたくなかった。


 だから……。


「俺の本質はオタクです! 矛盾してますが働かないと引きこもれません! だから【オタクであり続ける】そのためだけに働いています!」


 会社内外では常にそう豪語していた。

あとは猫をかぶり、無理して明るく振舞って社会の荒波を乗り越えてきた。

気が付いたら、取引先や関連工事会社から「ああ、あのオタクの人ね」って感じになっていた。

狙っていたわけではないが、そんなキャラが定着した。


 どんな仕事を任せても卒無くこなしてくれるオタクのおっさん。

決して飛びぬけて優秀ではないけれど……って立ち位置が出来上がっていた。

なので、人並みには仕事を任されはしたが、大した出世もしなかった。


 あと十年勤めれば定年ではあるが、最低限人生のノルマ達成できたと思ってしまったらもう無理だった。


 何か、ぷつんと張りつめていたものの一つが切れた。


 両親を送り出し、初盆の法要が終わったのを機に……。


 俺は会社を辞めた。


 大山 悠斗(おおやま はると) 五十歳。

遅まきながら、憧れの引きこもりオタク生活の始まりである。


 俺は大都市のベッドタウンとして程々に規模の大きい町にある自宅と、同じ町内にある先祖代々受け継いできた不動産を相続した。


 自宅の敷地は二百坪。

これ以外に文化住宅が四棟と百坪の貸家が一軒、貸倉庫が一棟。

晴れて社会的には無職となったわけだが、これだけの不動産が俺の名義となった。

相続税等を支払い、その上で残った預金関係は妹が受け取る。

不動産は俺が全て相続すると、生前の両親の意向で初めから決まっていた。

なので、遺産相続は全く揉めることなく話はついた。


 預金資産は全て妹のものになったが、俺には何もしなくても家賃などの不動産収入が安定して入ってくるようになった。

俺自身の蓄えと合わせれば【贅沢さえしなければ】という前提条件が付くが、別に働かなくても残りの人生は生きていける。



 さてさて、今日から楽しい引きこもりオタライフ。


 心が弾む。


 ああ、幸せだ。



 何しようかな。

仕事に押し込まれて全然出来ていない積みゲーを順番にやっつけようか。

いやいや、半休止状態だったMMOを廃人モードで追い上げるか。

見られていないアニメ円盤もコミックもラノベも、天井まで積み上がっている。


 年齢的に引きこもりでいられる時間は有限だ。


 うまく立ち回らないと、天寿を全うするまでにこれだけのアニメ・ゲーム・コミック・ラノベ等々消化しきれない。


 当然、今までのプライベートの時間も可能な限りオタライフに費やしていた。

だが、仕事に人生を浪費しすぎた。

 この遅れを取り返せるのか微妙である。


 よし、まずはこのゲームだ。

すでに2世代前となってしまったゲーム機に電源を入れて、未開封ゲームのパッケージを開きゲームのプレイを始める。



 そんな素晴らしきオタライフを始めて約二か月が経過した。



 あっという間の二ヶ月である。

こんなに時間の経つのが早く感じるのはいつ以来か。

世間一般の感覚では間違いなく人生の無駄遣いなのだろう。

だけど俺にとっては至高の時間だ。


 ゲーム一本終わらせるたびに……。

 あるいはアニメ一作品見終わるたびに……。


 次はどれやろうかと、天井まで積みあがったタイトルの数々を見上げて思案する。


 この時間さえも愛おしい。

 

 まぁ、完全に引きこもってしまうと程なく家がゴミ屋敷になる。

なので、最低限の掃除やメンテナンス等の家事は必要だが……。

なまじ家がデカいと維持は意外と手間がかかる。


 貸家や貸倉庫の維持は、管理会社に委託して丸投げなので気にしてない。

しかし、自宅の維持だけは自分でしないといけない。

一人でやると家事も含めて一週間中の丸二日~三日はどうしても持っていかれる。


 引きオタライフとはいっても、実質は週休五日の専業主夫のような生活だ。

でも、自宅の家事には納期も工期もないので自分のペースでオールオッケー。

まったり生活万歳!




 季節は秋になった。




 過ごしやすい日々から、少し肌寒い日がたまにあるような時勢になった朝。

寝落ちして、ゲーム機のコントローラを抱いたまま目が覚めた。

二階の自室から一階のリビングに移動して、朝ごパンをトースターに放り込んでスイッチを入れる。


 ちょうど、国営放送テレビ局による朝七時のニュースが始まるところだ。

いつもと同じように【今日の主なニュース】とテロップが現れる。

続いて、いつもの男性アナウンサーがいつもの表情で画面に映り込む。


 その日はそこからがいつもと違った。


 アナウンサーはぶっ飛んだ言葉を視聴者に向けて発する。


「おはようございます」


 一呼吸おいて、さわやかな朝の笑顔とは程遠い真剣な表情で……。


「世界は滅亡しました」


「皆さんさようなら」



 わけわからんまま初投稿です。

投稿の練習ぐらいやっておくんだった。

操作方法もままならんとは……。


二話は1時間後、4月1日 22:30ぐらいに投下します。

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