薬草採取→人命救助
「シーフゥ!魔獣は任せたよ!」
『精霊使いが荒いのぅ!グルォォォォ!!』
集まってきた角熊に向け『威圧』を掛けるシーフゥ。流石は上位精霊。角熊達の動きがピタリと停止する。
その隙に『魔獣寄せの香』を素早く『収納』し、風の障壁を展開しつつ少女を抱き抱える。
「……うぅ…………」
おっ重い――っ!!
女性に対し失礼かもだけど!自分と同じ位の背丈でしかも気を失ってるから余計にっ!
『何をしとる!風の魔法か『身体強化』を使わんか!』
「あ!そうか!」
『早う我に乗せよ!』
慌てて『身体強化』を使い少女をシーフゥに担ぎ上げ、角熊達が『威圧』で動けない内に9階層へ階段を駆け上がる。
ダンジョンの魔獣は基本生息階層からは出られないから追ってくる心配はない。
兎に角一息つける場所で少女の治療をしなきゃね。
***
「………う……」
「あ、気がついた?」
「……天使……様……?」
9階層の少し開けた場所で『結界』を張り、ポーションで少女の怪我を治す。背中と両足の腱を斬られていて酷い状態だった。あのままだと角熊達の餌食になっていただろう。
「私は天使じゃないよ。しっかりして」
「……ワタシ……生きて……る?」
「ちゃんと怪我も治したからね。……何があったの?」
話を聞くと少女の名前はボニーといい、白兎族のDランク冒険者で仲間と一緒に此処へやって来たそうだ。
――が―――
***
side ボニー
ザシュッ!
「キャアァァッ!」
いきなり背中を斬りつけられた。
◇◇◇
2つ年上の恋人のノーグリと幼馴染みで親友のラクーナ。ワタシは同じ村出身の3人でパーティーを組んでいた。そう、過去形。ワタシは彼等に裏切られたの。
『アータダ』の10階層攻略なんてワタシ達にはまだ無理だと言ったのに2人は強引だった。今思えば2人の言動はおかしかった。……最初から計画してたんだね。
「……っ!……う……なん……で……?」
「悪ぃなボニー。お前さんとはここでお別れだ」
「……え…?……ノー……グリ………何を……」
「お前ぇとの関係を終わりにするって言ってんだよ!お前ぇみたいな色気のねぇガキよりラクーナの方がいいからな!」
「うふふ~ごぉめんねぇ~ボニー」
ラクーナが豊満な胸を揺らしてノーグリにしなだれかかる。嬉しそうに鼻の下を伸ばす『元』恋人。
……あぁ、そういうことか。妙に納得している自分がいたよ。
「だからって……なんで……!」
「逆恨みされちゃあ困るんでな~ここで名誉の戦死してくれや」
「逃げ出せない様に脚も斬っちゃえばぁ~」
「いやっ!……やめ……てぇっ……!!」
ちょっと強引だけど頼り甲斐があって大好きだったノーグリ。優しくしっかり者な所が憧れだったラクーナ。
信じられなかった。いつから変わってしまったんだろう。小さい時からずっと一緒でこれからもって思ってたのはワタシだけだったんだ。
2人はワタシの足の腱を斬ったうえ『魔獣寄せの香』まで焚いて笑いながら去っていったの―――。
***
犯 罪 じ ゃ な い !(怒)
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