一国一城の主
「家を買ったんだけど」
『いきなりの爆弾発言だな』
のっけから失礼しました。皆様ごきげんよう、伯爵令嬢フレデリカ改め錬金術師サヤですよ。
あれから2年と数ヶ月、着実に実績を積み重ね早々にDランクになりましたよ。流石は実力主義のお国柄。
お蔭様で私が造るポーションも好評でまずまずの利益を上げていますよ。
「そろそろあの家から出る頃合いだからね。ちゃんとした拠点が欲しいなって思って」
『……確かにちと手狭になっておるしな』
シーフゥと一緒に周りを見渡す。4畳半程の部屋にはベッドと机。机の上や床にはポーション作成に必要な道具が散乱している。
ここはギルドに併設されている集合住宅の1室。宿屋に泊まるよりかは遥かに安いから新人には有難い施設。私もポーション作り用に借りているのだ。
「シーフゥだって本来の姿で思いっきり羽根を伸ばしたいでしょう?」
『あ~確かにな。ここでは人目が有りすぎる』
「でね、丁度いい物件を見つけたの。ちょっと街外れなんだけどね」
この間街の北西側に出掛けた時に見つけたのよね。しかも超格安で。思い立ったが吉日と速攻購入したって訳。
今からその家に引っ越すのでさっさと部屋にあった私物を全部『収納』していざ出発。
トーキットのダンジョンは街の東側と南側にあり、その方面が栄えている。昔は北側にあった小ダンジョンが数十年前に消えて無くなり、代わりに南に出来たそうだ。だから北西側は今はあまり人が住んでいない。
「貴族だか豪商だかが建てた別荘なんだけど、使われなくなって十数年のお荷物物件だったらしいわ」
『状態保存』の魔法を使ったとしても維持管理するのも大変だからねぇ。担当の人は物凄く喜んでたけど、最後まで本当に良いのか大丈夫かって何度も何度も何度~も確認してきたからやっぱり無しでって言われるのを懸念してたんだろう。相当重荷だったのね。
『支払いは大丈夫なのか?』
「ポーションの売り上げと今まで溜めてた魔獣の素材で何とかギリギリね。あとはポーション作りの実績が買われたみたいよ。あ、ココよ」
『本当に街外れだな……』
以前は他にも家が建ってたらしいけど、今じゃポツンと一軒家状態の2階建ての家を見上げる。
別荘と言うだけあってまあまあの大きさだが、やはり人が住まないからかあちこち荒れている。庭も草ぼうぼうだ。
中は2階に書斎付主寝室と来客用の寝室。1階は使用人用の部屋と客間、食堂、厨房。あ、猫足バスタブのお風呂もあるよ♪
「薬草を育てるのに充分な庭もあるし、ここならシーフゥも思いっきり走り回れるわね」
『フム……昼寝するにはなかなか良さげだな』
「中は色々リペアしなきゃだけどね。取り敢えず先ずは大掃除からだね」
全ての窓を開け放ってから風魔法で一気に埃を吐き出し、水を霧状にして『洗浄・浄化』最後にも一度風魔法で『乾燥』すればあっという間に完了。魔法超便利っ!
「今日は新しい家が出来た記念にご馳走にしようかね」
『肉!肉!肉祭り!宴だー!』
1人と1匹で住むには大きすぎるのはわかってるけど、気に入っちゃったし。ま、何とかなるでしょ。
錬金術師サヤ、一国一城の主になりました。
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