ある日森の中
♪ある日~森の中~クマさんに~♪
って脳内で歌ってる場合かっ!ってかクマさんじゃなくトラさんだしっ!いやいや突っ込むとこソコじゃないしっ!
『ヴゥゥ……っ』
あ、今私は魔法で『気配遮断』してるから気付かれないハズ。……だよね?
木の陰からそうっと白虎を伺い見ると何か様子がおかしい。左前足に怪我してる。そしてその怪我の周りを赤黒い靄が纏わりついている。
――毒だ。
苦しそうに身を捩った白虎の背中には虹色の羽根――えっ?精霊じゃない!しかも上位クラスの!
慌てて『収納』から傷薬と毒消しのポーションを取り出し白虎の元へ向かう。
『……グルゥ?!』
「驚かせてごめんね!これは毒消しだから大丈夫。じっとして」
先ずは毒消しのポーションを傷口に振りかける。よし、靄が消えた。次に傷薬も同じく振りかけてっと。
『……助かった。礼を言う』
見る見るうちに傷口が塞がり元気になった白虎が頭を下げてきた。ってか喋れるんだ!流石は上位クラス。アクアマリンの様な瞳がとても綺麗。
この世界には魔法と同じ火・水・土・風・光・闇の6属性の精霊がいる。下位の精霊は属性の色――赤・青・黄・緑・白・紫――をした光の珠で、中位クラスは小鳥やリスといった小動物、そして上位クラスはこの白虎の様な大型動物の姿をしている。中位と上位は属性の色は纏わなくなるけど虹色の羽根が精霊の証し。
話を聞くと魔獣のバジリスクに不覚を取ってしまい、毒のせいで精霊界に帰るに帰れなくなってたんだって。
魔獣――異世界ラノベで皆さんご存じの存在。魔素が多い所――主に深い森やダンジョン――に棲息する狂暴なモンスター。って、この森ってバジリスクが出るの?!え?別の森?しかもちゃんと始末した?……それならいいけど。
『そなた変わっとるの。子供とは思えん落ち着きっぷりだの……フム『星の贈り人』か』
「星の贈り人?」
『別の界の記憶を持っとる者の事よ。我等にしか見抜けんがな』
「へぇ~……そういう人って多いの?」
『そうそうは居らんと思うがの。というかそなたはどうしてこんな森に?しかも子供1人とは親はどうした?』
「あ~これには深い訳がありまして……」
記憶が戻ってからの事を前世含めて全てお話しましたよ。今世の毒親の仕打ちに我が事の様に怒る白虎と話している内に何だか泣きたくなってきた。
……あぁ私の中の小さな『フレデリカ』はやっぱり寂しかったし、悔しかったんだ。……私が居るからもう大丈夫だよ。ストンと腑に落ちる感覚と共に最後の一欠片が私の意識に完全に溶け込んだ。
『成る程の。愚かな人間は何処にでも居るのぅ』
「そうですね~嘆かわしい事です」
『………フム。そなた我に名を付けてくれんか?』
「はぁ?!」
『そなたの事が気にいったのでな!我はそなたの契約精霊になりたい!』
「いやいや待って!精霊、それも上位クラスと契約するって物凄い事なんだけど!」
『助けてもらった礼もあるが、そなたの魔力の質はとても心地よい……ダメか?』
「う……っっ」
そ、そんな潤んだ目で見られてもっ!困った……でも虎……大好きなんだよね………モフモフ………うぅ。
………陥落されるのも時間の問題でした。
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