04
奥にはトイレと従業員部屋があるくらいで、出入り口は一つしかない。
ガラス張りの窓からは、この異様な状況が見てとれる人もいるだろうが、果たして何人が疑問に思ってくれるか。
大体、パトカーだって何か別の事件で走っていたかもしれないのに、早とちりするから逃げ出す機会を逸してしまうのだ。
店長と店員はレジの中、俺たちは通路に立ち往生になり、包丁男は出入り口の前、銃男はレジの前に立ちはだかる構図となった。
そこで交わされたのが冒頭の会話だ。
ああ、何で俺はコンビニなんか寄ったんだろう。
珍しく教室に残ってテスト勉強なんかするからだ。
人間、らしくないことをするとろくなことがない。これは教訓だな。
航平に誘われて魔がさしたというべきか、空腹が切なかったせいか、肉まんでも買おうかと思ってしまったが運の尽き。
「ねえ。俺たちさあ、いつまで手ぇ上げてたらいいの?もう痺れてきたんだけど」
間の抜けた声があがり、全員の目が反射的にそちらに注がれる。
航平は肉まんの入った棚を物欲しそうに見つめ、
「てか俺、ピザまん食いたいんだけど。犯人さーん、ちょっと食い終わるまで待ってくんない?」
のうのうとのたまった口を俺は両手でふさいで引っ張った。
もがもがとくぐもった声をあげて航平がばたつく。その頭を押さえつけて無理やり下げさせる。
「すいません、こいつ頭が弱くて。すぐに黙らせますから」
馬鹿かお前、死にたいのか。
目で航平を威嚇すると、だってさあと航平は目で言い返してきた。
何が『だってさあ』だ。