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包丁男は店長がひるんだ隙に顔を殴りつけ、腹に痛烈な蹴りを一発食らわせ、さらに持ってきた手錠で両手を拘束して床に転がした。
女の子が甲高い悲鳴をあげて泣き出した。
鴇宮ではなく、主婦に連れられていた小学生くらいの女の子だ。
「こんなことをしてなあ、ただで済むと思うなよ!」
青紫色に唇を腫らした店長がなじる。
いや、店長、やめて。それ以上犯人刺激しないで。
金なんか適当に渡しときゃいいじゃん。なんで戦っちゃたりするわけ。どんだけ命知らずなんですか?
内心疑問に思っていると、遠くからパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
「てめえ、通報しやがったな!」
血相を変えて包丁男が怒鳴り散らす。
すぐに店員(若いほう)に血のついた包丁を突きつけて、
「鍵閉めろ!」
「ひっ」
「店の鍵だよ!」
と急き立てて観音開きのドアまで引っ立てていき、強引に鍵を閉めさせた。
何やってるんだよ。さっさと金盗って逃げればいいものを、立てこもりでもするつもりか?
包丁男は銃男から金を受け取ると、店にあった電子レンジやアイスの冷凍庫を扉の前に積み重ねてバリケードを築いた。
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
こうしてあまりにもあっけなく、店内は完全に支配され、表から隔離されることになった。
後から思い返してみれば、この間およそ三分たらずだった。




