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「そういうこと。最初からおかしいなと思ってたんだよ。あんたさ、あの包丁男と肉まんが店に入ってきて『動くな』って言った瞬間から手ぇ上げてたろ?武器も取り出してない、ただのサングラスかけた客に、反応早すぎねえ?」
笹沢の顔色がにわかに白くなる。
「あんたは無意識のうちに強盗を予想していた。来ることが分かっていたんだよ。だから不自然なくらい早く反応した」
「違う!あれは、あの人たちの様子がおかしかったから」
たどたどしい言い訳をする店員に顔を近づけ、俺は人さし指を立てた。
「おかしな点ならもう一つあるぜ。あんたあの包丁男がキレて店長に恨みがあるとか言い出したとき、何て言った?『昔のことで俺は関係ない』って言ったよな、あいつが高校生のときとか語り出す前に。それ以前に、包丁男が何歳かも分かんないのにさ」
笹沢はどもりながら何か言おうとしたが、言葉にならないようだった。
「あんたは知ってたんだ。このコンビニに恨みがある奴とネット上で知り合い、意気投合して、ふざけ半分に犯行を唆した。まさか本当に実行されて、しかも自分が居合わせるとは思ってなかっただろうけどな」
鴇宮が隣で両手を組み合わせて、
「すごいです、榎本君。まるで刑事ドラマのようです」
「きゃーかっこいい―、ルカ様結婚してー」
ふざけて航平が黄色い声をあげる。
俺は咳払いをはさみ、
「で?どうなの笹沢さん。俺のこの推測、警察で喋っちゃってもいいのかな。誰のせいで無関係な俺らがさんざん迷惑したのか、この際とことん突きとめようか」
笹沢は金魚のように口をぱくぱくさせた。
「君たち。怪我はしていない?ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな」
振り向くと、スーツ姿の女性刑事がこちらを見つめていた。
俺が立ち上がると、
「待ってくれ!」
と笹沢は叫んだ。
食い入るような目が血走っている。
「どうすればいい?」
きょとんとした顔の女性刑事から見えないように、俺は指を三本立てて見せた。
笹沢は悟ったように、こくりと頷いた。




