23
鴇宮は俺に訴えかけるような目を向けてくる。
早まるなと言っているのだろう。
でもな鴇宮。お前にばっか、体張らせるわけにいかねえし。
「何だよその目は。馬鹿にしてんのか?」
「そろそろ疲れたんだ。終わりにしようぜ」
俺は一歩、二歩と包丁男との距離を詰め、画鋲の海を迂回した。
包丁男は俺に包丁を構えて正対している。
張りつめた糸のような緊張感が店内に充満したそのとき、
「包丁を捨てな。さもないと撃っちゃうよん」
トイレのドアが開いて、肉まんの後ろから銃を構えた航平が出てきた。
肉まんはあわれ、顔中にトイレットペーパーを巻きつけられてミイラ男化している。
「てめえっ!」
包丁男が激昂したとき、
「うりゃっ」
鴇宮がすかさず側にあった棚を包丁男に向けて突き倒した。ばらばらと勢いよく商品が落ちる。
傾いた棚の下敷きになりそうになり、包丁男は慌てて飛びのき、たたらを踏んだ。
航平は肉まんを突き飛ばし、構えた銃の引き金を引いた。
炸裂音が響き、えみかが悲鳴をあげる。店長が思わず床に伏せる。
俺は一気に包丁男との距離を詰め、棚にあった雑誌を引き抜いて盾代わりにし、突っ込んだ。
包丁が肩をかすめ、かすかな痛みを覚えた。
雑誌を突き出すと、包丁はずぶりと突き刺さる。
振り払おうとする力と引き抜く力が拮抗し、取っ組み合いの喧嘩になった。
「なめた真似しやがって!死ね!てめえら全員皆殺しだ!!」
「榎本君!」
鴇宮が包丁男の右手にしがみついた。
「よせ鴇宮!」
全体重をかけてしがみついている鴇宮を振り払おうと、包丁男は空いている左手を振り上げた。
そこへもう一発、銃声が響いた。




