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「それに、あの場所へはキーコードの入力が必須だ。到底、お前らには解除できやしねえ。選ばれし者のみが接続できる電脳世界なんだよ……」
ただのインターネットじゃねえか。
どうせ掲示板やチャットだろ。そこで唆されて、犯行に至ったってわけか。
「先輩はそこで悪を極めたんですね」
「そうだ。厳しく険しい道だった。俺は導かれるようにして答えを得た。しかし、それを邪魔立てする奴がいたんだ。そいつは俺の世界をぶっ壊した。全てを灰燼に帰し、暗黒へと誘う力を使いやがったんだ」
鴇宮は拳を握り締め、
「それは許せません。一体そいつ……何者だったんです?」
包丁男はいかにも悩ましげに額に手を当て、自分に酔ったポーズで、
「俺の――母親さ」
隙だらけだし、そろそろ飛びかかってもいいですかね。
これ以上聞いてたら耳がむずがゆくて死にそうなんですが。
「あいつは俺から全てを奪った。電脳世界を断ち切り、三年に渡って蓄積したゲームデータを消去し、俺の希望を破壊しやがったんだ」
怒りに身を打ち震わせている包丁男、しらけた顔でそれを見つめる俺たち。
「あかん、聞いてるこっちまでアホになりそうや」
と主婦が言った。
「てゆうか、単なるキモオタじゃんー。現実見ろよって感じ」
えみかは辛辣に呟く。
「そのとき俺の中で何かがブチ切れた。限界を突破したっていうのかな。自分の中で勝手に作り上げていた檻を壊して、外に出たんだ。母親を倒すことに躊躇いはなかった。そうさ、俺の覚悟はもう決まっていたからな。悪へ突き進むためには、後ろを振り返ってなんかいられなかった。
あとは計画どおり、この店を乗っ取り悪の拠点とすることだけだった。幸い、俺の呼びかけに答えてくれる仲間もいたからな。思ったより簡単だったよ。こんなことなら、もっと早く実行しておけばよかった。昨日までの臆病だった自分は何だったんだろうな」
「はっ」
気がつけば、鼻先で笑い飛ばしていた。




