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「どないする?」
横から小声で聞こえてきたのは主婦の声だった。
「どないもこないも……従うしかないんじゃないですか」
「あんた、あいつがほんまに人殺せるような奴やと思うか?ほんまの人殺しやったら、土下座しようが靴舐めようが殺すもんは殺すで。せやのにあいつは、恨みのある店長でさえ殺せてへん。いざとなったら何もできへん小物やっちゅう証拠や」
「でもあいつは先に一人殺してるんですよ?鴇宮を殴りもしたし、普通じゃない。キレさせたら本当に何をしでかすか分からないですよ」
「ママあ、嫌だよう。えみか裸になんかなりたくないよ、寒いし。ロリコンの変態野郎だったら襲われちゃうよ」
心配しなくてもお前みたいなガキは誰も襲わないから安心しろ。
「このまま調子づかせといたら、いつまで経ってもグダグダなままや。警察も人質取られた状態やから簡単に突入して来られへんし。そろそろうちらの手でけりつけたほうがええんとちがうか」
周囲に目を配っている様子、息遣いが伝わってくる。
「……何か急いでることでもあるんですか?」
俺が尋ねると、主婦はどや顔で、
「あと三十分でスーパーのタイムセールが始まるんや」
「タイムセールって……こんな生きるか死ぬかってときに、そんなこと気にしてる場合ですか?」
つーか、もし生きて出られたとしても警察にあれこれ聞かれるんじゃねえの?
「何を言うてんの!タイムセールはな、主婦にとっての戦争やねん。獲物を求め金と命を削り戦う聖戦なわけよ。ジハードよ。神聖な戦いを邪魔する奴は何人たりとも許せんわ」
主婦は拳を握りしめて力説している。
はいはい、分かりましたよ。
どいつもこいつも危機的状況だってのに、自分のことしか考えてやがらねえ。
犯人だけじゃなく客も頭のおかしい奴ばっかりか。




