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「しょうもな。結局、こいつら暴れて店長にやり返したいだけで、金とかはついでってことやん」
主婦があほらしいと吐き捨てる。
激しく同意だが、それが分かったところで現状打開のきっかけになんてなりやしねえ。
冷たい床に伏せているから腹も冷えて、指や肩も強張って痺れてきた。
いい加減助けてくれ。もう誰でもいいから。
うつむいていた鴇宮が顔を上げて、包丁男にくるりと向き直った。
「犯人さんも苦労なさったんですね。そんなことがあったなんて」
「ああ?」
「私は犯人さんの味方です。一緒にこの店、ぶっ潰してやろうじゃないですか!」
と、がっしり包丁男の手を握る。
彼は呆気にとられた顔をした。
おいおい、人質が犯人と結託してどうする。
「どうします?手始めに店長殺っちゃいますか?」
可愛らしい顔で甘い声で、とんでもない台詞を吐くもんだから始末に負えない。
「お前……」
らんらんと輝く瞳を見て、震える声で包丁男は言う。
「お前も、ぶっ壊れてるんだな。俺と一緒だ。思ってたんだ、同じものを感じるって」
「いやあ、それほどでも」
「クレイジーだ。最高にクレイジーだぜ」
照れ笑いして頭をかく鴇宮を見て、包丁男は初めて笑った。
何てイノセントな笑顔。思春期の少年のような――って言ってる場合じゃねえ。
完全にクレイジーって言いたいだけだろ。駄目だこいつ、早く何とかしないと。
俺は鴇宮の視線を捉えて、唇を動かした。
『やめろ。何考えてるんだ』
鴇宮は唇が読み取れないのか、きょとんとした顔をしている。
「お前最高だわ。いっちょ祭りといこうぜ。酒を用意しろ!」
「ヘイ大将!」
鴇宮は酒コーナーに走っていく。
一体何をどうやったら、こんな構図ができあがるんだ。
もはや店内は混沌と化している。
画鋲の散乱する床、はいつくばる俺たち、はしゃぐ包丁男と、それに便乗する頭のおかしい美少女。
錯乱状態に陥っているとしか思えない。こっちの頭までおかしくなりそうだ。




