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包丁男は腕から血を流してうめいている店長を見下ろすと、
「てめえのせいでな、俺は人生狂わされたんだよ。だから今度は俺がてめえの人生狂わせる番だ」
「まっ待ってください。違いますよね?昔のことで俺は関係ないですよね?」
店員が情けない声で言い、
「てめえは黙ってろ!」
蹴りつけられて「ひいっ」と声をあげた。
中二臭い台詞はおいといて、どうやら店長と包丁男は因縁があるらしい。
この強盗、突発的に行われたものではないようだ。
「ふむふむ。つまり犯人さんは、店長さんに恨みを晴らすために強盗に入ったってことですねっ」
明るい声で鴇宮はさえずる。何だか雲行きが怪しくなってきた。
包丁男はサングラスを外し、
「なあ、覚えてっか?俺が高校生の時、てめえが俺を万引きの犯人に仕立て上げたことをよお」
と言うと、靴先で店長の指を踏みつけた。
「うっ」と押し殺した悲鳴が上がる。
「濡れ衣を着せられたせいで俺は退学。そっから俺の人生は狂っちまったんだよ。進学も就職も無理、彼女もできねえ、何もかも上手くいかねえ、そんな糞ゲーみたいな人生に陥れられちまったんだよ」
店長は憎悪のこもった眼差しで包丁男を見上げている。
「何だよその面は」
包丁男は店長の顔を蹴り飛ばした。鼻血が点々と床に染みをつくる。
「ひい」と隣で店員がすくみあがっている。
「万引きの通報なんかいちいち覚えていられるか。俺は何も悪いことはしていない。お前らみたいなのは社会のゴミ、人間のクズなんだよ」
俺は顔を手でおおった。
何でそれ言っちゃうかな、おっさん。マジ殺されるよ?
「クズはてめえだろうがよ!」
案の定、包丁男は包丁を振りかぶった。
「ままま待ってください!」
いかにも気弱そうな声がした。店員のものらしい。
「店長。もう謝っちゃいましょうよ。このままじゃ俺たち、殺されちゃいますよ」
「店の物を盗まれたんだ、通報して何が悪い」
「でも、そのときこの人高校生だったんでしょ?それで退学って厳しすぎませんか」
「そんなことは俺には関係ない」
「店長ー……」
店員は今にもべそをかきそうに情けない顔をしている。
包丁男の形相といったらもう、鬼のようだった。




