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『あー、あー。テストテスト。マイクテスト』
外から無機質な機械音が響いてきたのは、その直後だった。
運動会じゃあるまいし、マイクテストしてる場合じゃねえだろう。
警察まで頭がおかしくなったのか。それともこれは全部夢なのか。
そうだよな、ありえなさすぎるもんな。
目が覚めたら教室か家のベッドってオチが欲しいぜ、本当に。
『えー、君たちはー完全に包囲されている。武器を捨ててー大人しく投降しなさい』
「うっせえ!学校なんか行くかよ!」
叫び返す包丁男。
登校じゃねえ、投降だ。俺は心の内で呟いた。
駄目だこいつ。絶対ニートかひきこもりだ。
俺は目線を動かし、窓の外を見た。テントのようなものが見える。
あれが対策本部だろうか。
黄色のビニールテープが周囲に張りめぐらされている。俺たちは危険物扱いか。
騒ぎを聞きつけた野次馬や報道陣が詰めかけているのを警察官が取り締まっていて、黒山の人だかりだ。ヘリを上空が飛んでいる音もする。
機動隊ってやつも来るのだろうか。さっさと突入してくれ、人質とか心配しなくて大丈夫だから。
『胸に手を当てて、よく考えてみろ。家族の顔を思い浮かべてみろ。今まで育ててくれたおふくろさん親父さんに、胸張って誇れるか?死んだばあちゃんも天国で泣いてるぞ。これ以上罪を重ねるな。今自首すれば、少しは罪も軽くなるぞ』
金八先生風の説教くさい文句がスピーカーから垂れ流しにされている。
対策練った結果がこれかい。
説得とか要らねえから。つーか無理だから。
包丁男は空いている手で携帯を取り出して、猛烈な勢いで警察に電話をかけ始めた。
「俺のばあちゃんは死んでねえ!」
文句言うところそこですか?
「今すぐ外で喋ってる奴を黙らせろ。人質殺すぞ」
扉に近づいて、包丁を押し当てた鴇宮を外に見せつける。
報道陣のカメラから目がつぶれそうな勢いで激しくフラッシュが焚かれる。
「うわあ、眩しいなあ。アイドルみたいですー」
鴇宮の脳みそお花畑な発言は止まらない。
もはや包丁男はツッコミもせず、
「これはなあ、復讐なんだよ。俺はこの店に恨みがあるんだ。
……っせえ黙れ!てめえに用はねえんだよ!糞が。
今すぐ五億と車用意しろ、三十分以内に用意してなきゃ人質殺す。
つーかお前らが死ね。死ね死ね死ね」
激しくボタンを押して携帯を切る。




