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「肉まん食いたいなんて言い出したお前が悪いんだよ」
「肉まんじゃないよ、ピザまんだよ。てかあっちの人、体型肉まんぽくね?絶対小学校の頃とかあだ名肉まん星人だったよ」
「分かったからお前は肉まん星へ帰れ。二度と戻ってこなくていいから」
俺の名前は榎本ルカ(えのもとるか)、高校一年生。
寒風吹きすさぶ十二月のある日、同級生の花房航平とテスト勉強帰りにコンビニに立ち寄ったことから、何の変哲もない日常は、オセロの盤面が白から黒へ埋め尽くされるような鮮やかさで変転した。
「動くな!!」
心地よい温かさの店内に、凍てつく風とともに侵入してきた叫び声。
ピンポーン、と間の抜けたベルの音が、遅ればせながら来客を知らせた。
漫画雑誌をめくっていた俺は手を止めてそちらを見た。
目と鼻の先に、黒いジャージの上下にマスクをし、サングラスをかけた男が二人立っていた。
一人はデブで、一人はチビ。
ひっ、と息を呑んだ店員が両手を上げる。
客たちの視線が示し合わせたように注がれた。
真冬にサングラス。一体どういう趣味をしているのだろう。芸能人気取りか?
なんてのん気なことを考えていられたのは、男のうちの一人が包丁を、もう一人が黒光りする銃器を周囲に向けて店内を制圧する一瞬の間だった。
「全員手を上げろ。……上げろ!」
デブの方が銃を振り回しつつ、興奮に上ずった声で恫喝した。
おいおい。そんなに乱暴に扱って、暴発でもしたらどうするんだよ。
「やべー、何これ。超展開なんですけど」
航平は、金髪にピアスというチャラい見かけどおりの軽薄な反応を示した。
スマホを取り出して何やら打ち込もうとしている。
通報するのかと思いきや、画面はツイッターだった。
『強盗なう。』
いや、それどころじゃねーだろ。