こころ、こころを探しています
「こころ、こころを探しています」
かじかむ手を、こすってあたためながら、ひっしになってみちゆく人に声をかけます。
でも、こころがつめたい手を誰かにむけてのばしても、みちゆく人は誰一人、ふりむいてくれません。
ちっちゃい手、かわいい手、クリスマスの夜には、みんな誰かと手をつないで、たのしそうに笑っています。
だけど、こころの手は、誰にもとってもらえません。
そっと手をのばしても、あたたかい家にかえる人は誰も、手をとってくれません。
「こころ、こころを探しています」
冷たくなっていくこころのなかの、小さな小さなしんぞうが、こおりついて、つめたくなって、じめんにながれていくみたいに、こころのおめめから、ぽつりぽつりとなみだがあふれてきます。
一人ぼっちのこころは、ばっと誰かのむねにとびこもうと、みちゆく人にとびかかりました。
でも、こころの体は、スーッとかれらの体をすりぬけて、誰にもさわれず道のむこうまではしって、いってしまいます。
なんどもなんどもためしても、こころは誰にもさわれません。
かなしくなったこころは、一人ぼっちで、すわりこんで、しくしくとなきはじめました。
えーん、えーんとないていると、お母さんがこころを見つけて、ぎゅっとだきしめてくれました。
「こころ、こころを見つけましたよ」
やさしくお母さんがこころをだききしめてくれました。
さみしくて、ないていたら、お母さんがぎゅっとだきしめてくれました。
ゆらりゆらりと体がゆれて、こころはどんどん、ねむたくなってしまいました。
「おやすみなさい」
こころのたいせつなお母さんの声がきこえてきます。
こころ、やさしいお母さんでよかったね。おやすみなさい